重要事項説明書5



「重要事項」の内容とは?



(回答)



一定の形式的な事項が法律上規定されています。

宅地建物取引業法35条1項に記載されています。



<「重要事項」の内容>

・物件の表示

・当事者

・登記事項

・用途,利用制限

・ライフライン(水道・電気・ガスなど)

・不動産の形状・構造

・契約の種類と期間(賃貸の場合)

・更新に関連する情報(賃貸の場合)

・解約予告に関する情報(賃貸の場合)

・契約解除に関する情報(賃貸の場合)

・損害賠償,違約金

  ローン特約などが典型例

・敷金・保証金

・宅地建物取引業者の報酬額

  仲介手数料の金額など

・管理の委託先

 



<判例紹介>~建物の基本的な安全性~



○別府マンション事件

 建物の建築主から、当該建物を購入した買主等が、建物にはひび割れや

鉄筋の耐力低下等の瑕疵があると主張して、その設計・工事監理業者及び

建築工事施工業者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案において、

「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」には、建物の瑕疵が、居住者等の

生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず

放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化

することになる瑕疵も含まれるとされた事例

 (最高裁 平成21(受)1019 損害賠償請求事件  判決日:平成23年07月21日)



 全文→http://nichijuken.org/pdf/20131211.pdf

重要事項説明書4

不動産の売買や賃貸の契約では,契約書以外に

重要事項説明書が作られていますが,なぜ2つの書面が作られるのですか。



(回答)



仲介業者などが関与している場合,「重要事項説明」を

書面で行うというルールになっています。



<重要事項の説明が義務付けられる契約場面(いずれか)>

・宅地建物取引業者が不動産売買・賃貸契約の当事者となっている

・宅地建物取引業者が不動産売買・賃貸契約の仲介となっている



この場合は,一定の重要な事項について説明を書面で行うことが

義務付けられています(宅地建物取引業法35条)。

書面を交付して説明する,というルールです。

そこで,実際には「重要事項説明書」という書面が取引の際に作成されています。



【宅地建物取引業法35条1項(抜粋)】

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買交換若しくは

貸借の相手方若しくは代理を依頼した者

又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、

交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という)に対して、

その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、

その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、

取引主任者をして、少なくとも次に掲げる事項について、

これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を

交付して説明をさせなければならない。

重要事項説明書3

重要事項説明書の記載内容が実際とは異なっていたので、

業者に「契約を解除したい」と言ったが、

「申し訳ない」というだけで埒があかない。



(回答)



重要事項説明書の記載内容は、契約するかどうかを

判断する上で重要となる内容を説明したものですから、

記載内容自体が間違っているという場合は、

業者として、何らかの責任を負わなければなりません。



「記載自体が間違っている」場合の原因としては、

家主が業者に提供した情報自体が間違っていたケース、

業者が過失で記入間違いしたケース、

業者が故意に記載内容を変更したケースなどが考えられますが、

はっきりさせなければならないのは、

もし、「記載内容が間違っていなければ契約したかどうか?」です。



たとえば、遮音構造を物件選びの際に重視していた人が、

鉄筋コンクリート造だと説明されていたものが、

実際には鉄骨造だった場合などは、

業者は、単に「すみません」では責任をおったことにはならず、

契約解除する場合の損害をすべて負うべきでしょう。



しかし、建築年が1・2年事実と異なっていたというようなケースや

全体の部屋数が少し食い違っていたというようなケースでは、

契約するかしないかにほとんど影響はなかったはずですので、

損害賠償まで求めるのは無理でしょう。



従って、ご質問のケースでは、業者に対して物件探しの際に

重視するポイントとして説明していた事項が

間違っていたのかどうかがポイントとなり、

業者に対する責任追及の内容もおのずと異なってくるものと思います。

家主からの退去通告2

契約書には、「家主が必要になったときは物件を明け渡すこととする」
と記載されていたが、実際に、家主から「自分の息子夫婦が住むこととなったので、
契約どおり退去してほしい」と言ってきた。
契約書に記載されている以上、従わざるを得ないのでしょうか?

(回答)

まず、契約内容が、「契約期間の定めがある通常の賃貸借契約」
であるかどうかを確認してください。

以下は、そういう場合の対処策です。そうでない場合には、前項を参照してください。

契約書の中に、「家主が必要になったときは物件を明け渡すこととする」
というような規定があったとしても、このような規定は、
借地借家法上の強行規定に反するため、一切無効です。

借地借家法では、家主から退去を求めるためには、
契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に通告することと、
家主の「正当事由」が必要とされています。

この「正当事由」は、借主保護のために、家主が物件を必要とする事情と
借主のそれとを比較して、家主が必要とする事情のほうに正当性がある場合のみ
認められることになっており、通常は、借主の事情のほうが優先されます。

しかも、家主自身ではなく、家主の家族が住むということになれば、
「息子夫婦がその物件に住まざるを得ない」というような特殊な事情がなければ、
家主としての正当性は認められないでしょう。

このような場合には、家主は、通常、財産上の給付、
すなわち、立退き料を支払うことで、「正当事由の補完」を行うことが必要です。

そこで、家主は、相当額の立退き料、近隣の同等物件に引越するための諸費用
(礼金、仲介手数料、保険料などの契約に必要な諸費用、引越代、
それまで住んでいた物件との間に家賃の差額があれば、
最初の契約更新までの家賃の差額分など)を支払うべきでしょう。

入居者としては、「家主としての正当事由がないため、立退きを拒否する。
どうしても、退去せよというのであれば、
相当額の立退き料を支払え」という要求を行うことができます。

家主からの退去通告1

家主が「自分が住むことになったので退去してほしい」と言ってきたが、
従わざるを得ないのでしょうか?

(回答)

いくつかのケースによって、対処の仕方が異なってきます。

まず、「契約期間が定まっている通常の賃貸借契約」の場合です。
この場合、家主側から入居者の退去を求めるには、
借地借家法の第26条により、契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に
「契約更新しない」という通告をすることと、
退去を求める「正当事由」が必要とされています。

そこで、まず、家主がいつ退去を求める通知をしてきたかが問題となります。
もし、家主からの通告が、「契約終了の1年前から6ヶ月前までの間」でなければ、
「正当事由」をうんぬんする前に、そもそも、家主の主張自体が認められなくなります。

なぜなら、「契約終了の1年前から6ヶ月前までの間」というのは、
借地借家法上の強行規定であり、これに反するものは無効だからです。
通告時期が適法に行われた場合は、「正当事由」の有無が問題となります。

借地借家法の第28条によれば、「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。
以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、
建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の
現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として
又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して
財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、
正当の事由があると認められる場合で
なければ、することができない」としています。

もう少しわかりやすく言えば、家主が「自分で住む」と言っても、
それだけで正当事由とはならず、借主が建物を必要とする事情との比較によって、
家主の事情のほうに正当性があると判断される場合に限って、
家主の主張が認められる場合とか、借主が建物をどのように使っているのか
(別荘のようにしか使っていなければ、家主の正当事由が認められるでしょう)、
家主が、財産上の給付、すなわち、立退き料をいくら支払うと言っているのかなどを、
総合的に判断して、家主に正当事由があるかどうかを
判定することになっているということです。

そして、通常は、入居者保護のために、家主が必要とする事情よりも
借主が必要とする事情のほうが認められやすいため、
相当額の立退き料を支払って「正当事由を補完する」ことによって、
立退きを認めるというのが一般的です。
従って、単に、家主が「自分で住むから」というだけでは、
立退き義務はないのです。

次に、「契約期間を決めない通常の契約」の場合です。

一般的には、契約の最初の時点から、契約期間を決めないという場合は少なく、
当初、契約期間を決めていたのに、契約終了時に合意更新せず、結果的に、
「法定更新」となった場合には、「契約期間を定めない契約」となってしまいますので、
「契約期間を決めない通常の契約」というのは、
「法定更新した場合の通常の契約の場合」も同じことです。

このような場合には、家主から契約解除を求める場合には、
6ヶ月間の猶予が必要になり、
さらに、家主としての「正当事由」が求められるのです。

三つ目は、「定期借家契約」(1年以上の契約期間)の場合です。
定期借家契約の場合には、原則として、「正当事由」の有無は関係なく、
家主から契約解除することができます。

しかし、定期借家契約の場合でも、契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に、
「期間満了によって契約が終了する」という通知を行わないと、
借主が住み続けることを拒否できないとされており、
実際の通知を行ってから6ヵ月後に契約を終了させることができます。

なお、1年未満の「定期借家契約」の場合には、
家主からの通知そのものは必要ありませんが、
家主からの契約期間中の途中解約は認められていません。

更新手数料4

家主に支払う更新料以外に、仲介業者から更新手数料の請求が来た。

契約書をみると、確かに「更新手数料が必要」という記載があった。

このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?



(回答)



前回で、契約書に更新手数料の記載があっても、

ほとんど認められないことを述べました。

更新手数料を仲介業者に支払うということになれば、

仲介業者は、宅地建物取引業法違反に問われる可能性があります。



つまり、宅地建物取引業法によれば、

業法に定められた報酬規定以外に報酬を受け取ることは禁止されており、

更新手数料は、仲介業務に無関係ですから、当然のことながら報酬規定にないからです。



従って、万が一、更新手数料を、仲介業者(管理会社兼任ではない)が

受け取るということになれば、宅地建物取引業法に

違反すると判断される可能性があります。

更新手数料3

家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。

契約書をみると、確かに「更新手数料が必要」という記載があった。

このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?



(回答)



前回までに述べているように、原則として、更新手数料は支払う必要はありません。



しかし、契約書の中に、「更新手数料が必要」と記載されている場合には、

「通常、家主が支払うべき更新手数料を借主が代わりに負担することを認めた」と

いうことになるわけですから、一般論としては、

支払い拒否をすることはできないように見えます。



ところが、常識的には支払う必要がない費用を、「特約」として、

借主に支払いをさせるようにするためには、判例によれば、

「特約の必要性があること」、

「借主が特約の意味を理解していること」、

「契約段階で特約を結ぶことについて承諾していること」

などの事情がなければならないとされているのです。



そうすると、まず、「特約の必要性がある」というような

合理的理由がありませんし、借主が、特約の意味、すなわち、

「本来、家主が支払うべきものを借主が代わりに支払うのだ」と

いうことを認識していなければならないのですが、

そのような理解をしていることはまれでしょうし、

契約段階で、そういう説明を受けて承諾していることも滅多にないでしょう。



従って、契約書に「更新手数料の記載がある」としても、

特約として認められるような事情がなければ、

特約として認められないということになります。



消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項」に当たりますので、

このような規定は一切認められません。

更新手数料2

家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。

契約書をはじめ、どこにも「更新手数料が必要」という記載がないので拒否することにし、

家主に対し、「家主との間で直接更新手続きしたい」と言ったが、

家主は「管理会社に任せているので管理会社を通してほしい」と言って譲らない。

このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?



(回答)



まず、一般的にも、借主が更新手数料を負担する義務はありませんし、

まして、契約書のどこにも、「更新手数料が必要」と書かれていなければ、

更新手数料を支払う必要は一切ありません。



家主は、家主の本来業務として更新手続きを行うべきですが、

それを管理会社に代行させること自体は問題ではありません。



しかし、家主が管理会社に代行させることに問題がなくても、

更新手数料を借主から徴収するということはまったく別問題です。



つまり、家主が、管理会社が借主に請求する更新手数料を

負担すれば、何ら問題が発生しないのです。



従って、借主は、家主や管理会社に対して、

「家主の希望にもとづいて、管理会社を通して更新手続きすることは

かまわないが、更新手数料は家主が負担すべきである」と主張してください。



それでも、家主や管理会社が、

「更新手数料を支払わなければ更新手続きは行わない」

という脅しをかけてくるかもしれませんが、

そのような場合には、家主との間で、

「合意更新」ができないだけで、そのまま住み続けることで、

法定更新状態に移行するだけです。



法定更新状態になれば、従来の契約内容はそのままで、

契約期間を定めない契約となるだけです。



特に、生活上、問題となることはありませんし、法定更新すれば、

合意更新に必要な更新料も支払う必要はなくなります。



借主から、更新料の支払いを拒否して、

法定更新に持ち込むというのは許されない行為といえますが、

家主側の事情により、やむなく法定更新状態となった場合には、

更新料の支払い義務は免除されると考えるべきでしょう。

更新手数料1

家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。

契約書のどこにも記載がないので拒否したいのだが、

業者は「更新手数料を支払わなければ更新しない」と言っている。

どうすればよいか?



(回答)



手数料は、本来、業務の依頼をした人が、依頼を受けた人に対して、

その業務量に応じて支払うべきものです。



もともと、契約の更新は、家主と借主との間で行うものですが、

家主が自ら更新手続きを行うことをわずらわしく思い、

家主の代理人として管理会社に業務を委託することがよくあります

従って、家主は、管理会社に、契約更新の手数料を支払うことになります。



借主の立場から言えば、契約更新の手続きに関しては、

誰にも委託したわけでなく、本来、家主との間で行うべき作業を、

家主の代理人である管理会社と行っているわけですから、

管理会社に、更新手数料を支払う理由は一切ないはずです。



管理会社は、更新手数料を家主から受け取ればよいのですが、

中には、家主から得る更新手数料以外に、借主からも何の合理的な

理由もなく、更新手数料を請求している業者もあるのです。



本来、支払うべき理由もないのに、手数料を徴収するというのは、

不当利得に当たりますので、支払う必要もありませんし、

支払った手数料の返還も請求できると思います。



なお、契約書に、更新手数料を支払う旨の記載がある場合は

どうなるかということですが、賃貸借契約書は、

家主と借主との間の取り決めですから、

そこに記載された第三者への手数料の支払いは

契約内容として有効かどうかという問題があります。



契約書に、更新手数料が明記されている場合についても、

ほとんどの場合、特約としては認められないでしょう。