原状回復義務とは何か

原状回復義務条項

建物賃貸借契約では、賃貸借契約終了後には、賃借人は物件を「現状に回復して」明け渡さならければならない旨が規定されているのが通常です。 賃貸人がこの原状回復義務条項に基いて、畳替え・クロス張替え・鍵の交換費用等の原状回復費用として敷金から控除する精算を行おうとしたところ、原状回復費用の対象となる範囲や金額をめぐって賃借人が争う・・・これが原状回復をめぐる紛争の典型的な形です。

裁判所等の考え方

裁判所は、「原状回復とは」①建物の通常損耗分をもとの状態に回復することではなく②賃借人の故意・過失等による劣化の回復を意味するとの判断を示してきました。
これは賃貸借契約の対象となる建物の価値は、そもそも時間の経過により現状するものであり、賃借人が物件を定められた使用方法に従って、社会通念上通常に使用していれば、賃貸借契約終了時に当初の状態よりも建物の価値が減価していたとしても、そのまま賃貸人に返還すればよい、という考え方に基づいています。
建物の通常損耗分は、賃貸人としては、建物の減価が進行する過程で減価償却費や修繕費用の必要経費分を賃料に含めて支払いを受けて回収してきているので、原状回復の対象となるのは、賃借人の故意・過失等による劣化分ということです。

ガイドラインの考え方

ガイドラインは、裁判所の考え方を取り入れて、原状回復は賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失。善管注意義務違反、その他通常の私用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。