退去の費用 損をしないために知っておきたい事

2月3月は引越しの一番多いシーズンです。
そろそろ部屋探しの準備を、と考えている人も多いのではないでしょうか>

ここで心配になるのが「退去時の費用」と「敷金の返金」。

トラブルも多いようで、相談もよく受けます。
このブログを執筆中にも、知人より「退去費用が納得いかない」ということで相談受けました。

今回は不動産屋だから分かる「退去の費用」について解説していきたいと思います。

前半は、不必要な退去費用を取られないために、知っておきたいポイントを。
後半は、実際の退去費用事例をいくつか解説していきます。

1.敷金は戻ってくる

敷金は戻ってきます。

普通に生活して何事もなければ、戻ってきます。 わざと壊してしまった場所がなければ通常は戻ります。

生活上、普通に過ごしていての小さな傷、消耗する箇所などは、ペナルティにならないのが賃貸の基本ルール。
あとで詳しく説明しますが、国土交通省でこの辺りをきちんとルール決めをしています。

うちのwebを開発してくれてる、外部担当者は「敷金なんて一度も帰ってきたことがない・・・」と嘆いてました。
そんな物件もありますが、基本的には戻ってきます。

2.気になる退去費用の相場は?

敷金からハウスクリーニング費用と故意で壊してしまった箇所を引いた金額。

これが相場です。
これが黄金式となればいいなと思ってます。東京の賃貸物件は「退去時のハウスクリーニング代は入居者の負担」という契約がほとんどです。
9割ほどの物件が、「ハウスクリーニング代は、入居者負担」という特約が付けられています。

「ハウスクリーニング代は払いたくない」という人も多いと思いますが、契約で結んでいる以上払わなければなりません。
これについては「ハウスクリーニングの費用について」というのを作って詳しく解説しようと思ってます。

日常生活での小さな傷、汚れは負担しなくて良いのが賃貸の基本ルールです。

しかし「ここが汚れている」「キズが・・・」などと立合いの人に責められて、敷金が戻ってこないケースもあるようです。
汚れ、傷など、すべてが入居者の責任になる訳ではありません。この黄金式が崩れないためにも!
実際の立合いの流れと、適切な対応方法を、正しいルールと共に紹介していきたいと思います。

3.納得してからサインを!

退去の立ち会いには注意しましょう!

引越しの荷物が出し終わったタイミングで退去立合いが行われます。
ここで、まずは担当者を確認。
大家さんでない場合もあります。 大家さんでない場合は、必ず名刺をもらいましょう。そして立合いの担当が、不動産仲介業などの場合は要注意。

リフォーム代から発生する「仲介マージン」を狙ってくる悪質な業者も多数存在します。(そんな悪い業者ばかりでもないですが、用心は必要です!)

本当に必要な原状回復リフォームなのか、大家さんの了承は得ているのか、しっかり見極めましょう。立合いチェックが終わると、その場でサインを求められます。
「変だな・・・」と、納得のいかない場合はサインはする必要ありません。「サインしないと解約出来ないことになり、家賃が発生する」と脅しまがいのことを言ってくると思いますが、それは別問題です。
きちんと荷物を持って、部屋を明け渡せば、退去になります。「明け渡し」と「退去時の費用負担」は別に考えましょう。

4.負担割合は数値化されてます

「どこまでを、どのくらい負担すればよいのか?」
一番むずかしいラインです。 交通事故などでも揉めますよね。
実は賃貸住宅、これを決めるルールが存在します。退去する時は、「入居前と同じ元の通りにして返す」というのが基本的な賃貸のルール。

これを原状回復といいます。この原状回復の範囲や箇所、負担割合を決めたルールがあります。

国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という名前でルール決めをしています。

「汚れていて新品に戻すから、全額払え!」このようなことは、ありません。
自然消耗、経年劣化をしっかり入れて計算するように、国土交通省が定めています。
経年劣化は数字もきちんと決められています。「長く住んでいると退去費用が高くなる」ということはありません。

トラブルが多かったということで、平成10年に国土交通省が発表しています。
立会いの時、担当者が費用負担の線引を決めようとしますが、負担割合を決めるのはこのガイドラインです。
「原状回復のガイドラインの沿って行っています」と言ってくる場合もありますが、それが本当に正しいとは限りません。
本来の基準を乗り越え、入居者に負担を迫ってくる悪い業者も数多く存在します。
注意しましょう。

5.どっちの負担?

普通に生活していて、自然についた傷、汚れ、そして自然消耗などは負担しなくて良い。
これが「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で定められている基本ルールです。「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を分かりやすくまとめました。
これらの汚れ、キズは負担する必要なありません。一般的に、貸主と借主と表記され区別されますが、漢字が似ていて分かりづらいので、ここでは表記を変えます。貸主=オーナー
借主=入居者それでは紹介していきます。

5-1.鍵

破損、紛失がない場合は、オーナー負担が基本です。但し、契約書に「退去時負担にする」という特約があれば、入居者負担になります。

5-2.設備 エアコン、お風呂、トイレなど

普通に使ってての故障などは、オーナー負担。手入れ不足(エアコン掃除など)による故障などは、入居者負担になります。

5-3.水回り

お風呂、トイレ、洗面台のカビ、水あか等は、手入れ不足ということで、入居者負担になります。

カビ除去・防止.comというのもあるくらい、カビ汚れは厄介です。
手遅れになる前に、こまめな掃除を心がけましょう!

5-4.壁 壁紙・クロス

  • オーナ負担  日焼けなどの自然消耗、画鋲・ピンの穴、冷蔵庫の後ろの黒ずみ汚れ
  • 入居者負担  タバコのヤニ・汚れ、釘穴、ネジ穴、台所の油汚れ(度合いにもよります)

壁紙でよくあるのが、冷蔵庫焼け。

引っ越すタイミングで、冷蔵庫を出してから「あ!!」っというケースも多いようです。
基本的には、この「冷蔵庫焼け」による汚れは負担なしで大丈夫です。

もちろん程度にもよります。
明らかに置き方が悪い場合、壊れかけの冷蔵庫を使っていて熱の排出が明らかにオカシイという場合には変わってきます。例えば、サンプル写真の黒ずみ。 「少し焼け過ぎかな」という印象です。
100%入居者負担にはなりませんが、置き方、壁との距離などで費用負担を計算するケースが多いと思います。立合いをする立場としての判断は、「ハウスクリーニングで落ちるか」というラインをみます。
ハウスクリーニングの清掃業は、漂白剤のスプレータイプでクロスの黒ずみに対応します。
これで落ちるラインであれば費用を請求しないのが普通です。
壁紙交換の費用については心配な人は、後にある「クロス・壁紙の補修」を参考にしてみて下さい。

5-5.床 フローリング

大きなヘコミ、キズは入居者です。

このくらい深い傷の場合は、負担してもらうケースが多いです。傷の深さ、壊れ具合によって、補修か交換を決めます。
交換の場合は、きちんとした計算式で費用負担を割り出します。今回のこの傷くらいだと、補修する場合がほとんどでしょう。
その他よくあるケースは、引越し時の冷蔵庫設置による傷。
結構重いのと脚が小さいので、比重が一点にかかり深い傷になりやすいです。
引越しの時は、前後で大きな傷がないか確認しましょう。
引越し業者負担、もしくは賃貸の保険で保証される場合もあります。
日焼け、通常の使用でついてしまう細かい傷などは、オーナー負担になります。

5-6.畳

わざと汚してしまったりした場合は、入居者負担。
しかし表替え、交換などをする場合は、1枚単位が原則です。「周りとバランスが合わないから全部変える。それも負担してね」というケースは、ルール違反です。
周りの畳全部となった場合は、汚した畳以外はオーナー負担です。

6.退去費用の事例

退去費用は不動産会社、大家さんによってまちまちです。
ルールを都合良く解釈して、無知な入居者に多額の退去費用を請求するところも・・・。インターネット上でも、あまり情報がないの状況なのでここ思い切って公開したいと思います。
(もちろんプライバシーに係るようなところは載せていません。)

6-1.クロス・壁紙補修 / 退去費用負担の事例

クロスはちょっとした不注意で大きな傷、剥がれたりしてしまうものです。
例えばこんな傷。
(実際に弊社が管理する物件であった部屋の写真です)

折りたたみのベッドが当たってしまったのこと。
「リフォーム費用がどれくらいかかるのか・・・」と少し不安そうな入居者さんでした。
「あー、同じような傷がウチにも!」という人もいるかと思います。 追記(2014.4.12)
後日退去立会い後の精算で、この傷は「経年劣化の計算式」に基づき、入居人の負担は無しとなりました。
このような対応が基本ルールに沿った正しい対応です。

6-2.壁紙・クロスの負担割合/補修の範囲

まずは負担する範囲。
負担費用は全部張替えでなくて、これのキズがある一面です。
下の図を参考にして下さい。

壁が3面のクロスではられていた場合、その一面のみの負担です。
この1面が2㎡だと仮定すると、2㎡分の負担です。ちなみに一般的なクロス工事の単価は1平米 800円〜1,000円が目安です。(材料費込み)

6-3.経年劣化も計算に入れます!

経年劣化も計算に入れます。
「元から古いのに、新品と同じ計算ではおかしいでしょ!」という意見を反映してくれています。
壁紙・クロスは、耐用年数6年となっています

この経年劣化も入れて計算するのが、本当のやり方です。

6-4. 負担費用の計算式

今回の傷、入居前にクロスを新品に張り替えていたと仮定します。
退去時期が3年目だとすると、負担割合は50%。クロス工事が850円で発注できたとして計算します。
(クロス単価 850円 × 広さ 2㎡ )× 経年劣化50% = 850円

壁紙・クロスの破損はこんな費用で済むのが一般的です。
傷に怖がらずのびのびと暮らしましょう!

6-5. タバコはNGです!

タバコなどの、ヤニ・汚れは、入居者負担でのクリーニングか張替えです。退去時の費用が気になる人は、部屋の中で吸うのはやめておきましょう。

7.耐用年数の例 一覧

壁紙の事例でお分かり頂けたと思いますが、耐用年数というのが必ず計算式に入ります。「フローリングを傷つけちゃった・・・」というあなたのために、耐用年数の一覧表をまとめました。ちなみにフローリングは先程のクロスと同じ計算方法です。

7-1.耐用年数 5年

流し台

7-2.耐用年数 6年

畳床、カーペット、クッションフロア、壁(クロス)、冷暖房機器(エアコン、ルームクーラー、ストーブ等)、電気冷蔵庫、ガス機器(ガスレンジ)、インターフォン

7-3.耐用年数 8年

主として金属製機器以外の家具(書棚、たんす、戸棚、茶ダンス)

7-4.耐用年数 15年

便器、洗面台等の給排水・衛生設備・主として金属製の器具・備品

7-5.その他

ユニットバス、浴槽、下駄箱など建物に付いているものは、建物の耐用年数を使う。

8.困ったら相談しましょう!

敷金のトラブルは非常に多いようで、無料の相談が用意されています。
(電話する場合は、電話代はかかりますよ!)

まとめ

人生で生きていく上で、不動産の取引(賃貸、売買)はあまり経験するものでもありません。
分からないことが多くて当然です。
最近はインターネットが普及して、いろいろな情報が取れる時代です。 しかし、それでも不動産の情報はまだまだ少ない。
何事でもそうだと思いますが、少しでも知識持っておくこと何かと役に立ちます。「そんなもんか・・・」と泣き寝入りすることのないように。
少しでも役に立てればと思い、今回ブログに残してみました。

退去するということは、新しい生活がスタートするタイミングでもあります。
少しでも楽しく、豊かな新生活がスタート出来るように。
この知識が役に立てばと思います。