騒音

隣室から、まるで壁がまったくないように、会話する声が「普通に」聞こえてくる。  
欠陥建築ではないかと思い、家主に思い切って苦情を申し出たら、
家主は、「そんなはずはない。大手のゼネコンの設計施工だし、
建築基準法もクリアーしている。
共同住宅では、お互い我慢する必要があるんだ」と、逆にお説教されてしまった。
建築基準法では、「音」の問題について、どのように規定しているのでえしょうか?

(回答)

建築基準法第30条では、共同住宅の各戸の界壁について、
「政令で定める技術的基準に適合するもの」としており、
その施行令(第22条の3)によると、
振動数125ヘルツで透過損失25デシベル、
同じく振動数500ヘルツで40デシベル、
2000ヘルツで50デシベル以上と定めています。

たとえば、隣室で大きな声(80デシベル)で話した場合、
透過損失が25デシベル以上であるので、55デシベル程度に聞こえたとしても、
建築基準法上は問題なしとされてしまうのです。

ちなみに、30~40デシベルは「ささやき(静か)」、
50~60デシベルは「普通の会話(日常の騒音)」、
70~80デシベルは「大きな咳払い、子供の泣き声など(うるさい)」状況を
表しています。

もともと、日本の在来建築は、「遮音構造」には無頓着であったことと、
建築基準法そのものが、「最低基準」を示したものであるため、
「建築基準法をクリアーした欠陥構造」があふれかえっているのです

家賃の滞納

契約書には「家賃を1ヶ月でも滞納すれば即刻退去させる」と書いていたが、うっかりして家賃を1か月分
滞納してしまったところ、家主から、「契約違反なので、違約金を支払って退去してもらう」という通告を
受けてしまった。契約書に明記されているのであれば、泣く泣く退去するしかないのか?

(回答)

日本には、「契約自由の原則」(私的自治の原則)というものがあります。つまり、誰と契約しようがしま
いが自由であり、契約内容も原則として自由、契約の方式も自由であるというものです。その前提には、
独立・対等・平等な市民間においての契約については、できるだけ当事者の自由に任せようという国の判断が
あります。

従って、原則としては、どのような契約も自由であり、契約する際に、署名捺印しているということは、契約
事項を承認しているということになりますから、従わざるを得ないということになります。

ところが、居住用の建物の賃貸借契約においては、家主が一方的に定めた契約事項を、借主が承諾するかどうか
だけの権利しかないため、もともと、対等・平等ではないのです。

そのような違いを放置して、当事者の自由に任せておくことは、家主が好き放題の契約を定めることを容認する
ことになり、良好な社会秩序にも悪影響を及ぼすことになります。そこで、いくつかの制限を設けて、好き勝手
な契約ができないようにしているのです。

まず、第一は、借地借家法上の「強行規定」に違反していないことです。
契約内容が、借地借家法上の「強行規定」に反している規定は無効であるとされていますので、それに違反して
いないかどうかが問題となりますが、家賃の滞納については触れられていませんので、この点からは、契約は有
効です。

二つ目に、契約内容が公序良俗に反していないかどうかです。
「公序良俗」の法律用語としての意味は、「現代社会の一般的秩序を維持するために要請される倫理的規範」と
されています。

殺人依頼の契約、愛人契約などの誰が考えても公序良俗に反している契約以外でも、男女によって定年年齢が異
なるようなケースでも、性別による不合理な差別として、公序良俗違反とされた場合もあります。

そこで、「1ヶ月の滞納による契約解除」が、社会の秩序を壊すほどの不合理な契約内容かどうかが問題となり
ますが、人によって判断が分かれるでしょう。
逆に言えば、誰が考えても、「公序良俗違反である」とも言えないレベルですので、「公序良俗違反により契約
は無効」とは言えないでしょう。

三つ目は、法律用語で言うところの「例文解釈」による契約内容の無効とはならないかという点です。

これは、少しややこしいのですが、不動産の賃貸借契約などで、文言どおりに解釈することで、結果があまりに
も不当なことになってしまう場合、契約内容そのものを「単なる例文である」として、その効力を否定するもの
です。

しかし、これまでのところ、短期間の家賃の滞納による契約解除を、
「例文解釈」によって無効であると判断されたケースはないようです。

四つ目は、2001年4月に施行された消費者契約法による「消費者の利益を一方的に害する規定は無効である」
という規定に違反していないかどうかという点です。

この点については、長期的な契約関係を前提とした建物の賃貸借契約において、わずか1ヶ月分だけの滞納によっ
て契約解除を行うことは、
「消費者の利益を一方的に害する」規定だという判断を行うことが可能かもしれません。

最終的には、これまでの判例で蓄積されてきた考え方によって、
契約内容を判断することになるでしょう。
判例での考え方は、「信頼関係破壊の理論」と呼ばれているものです。

つまり、居住を目的とした長期間にわたる賃貸借契約においては、
単に契約違反にあたる事実があるだけでは契約を解除して退去させることができず、「家主と借主との間の信頼
関係がなくなってしまった」というような状況になって初めて、家主からの契約解除を認めるようにして、借主
の居住権を守ろうとしているのです。

従って、「家賃を1ヶ月でも滞納すれば即刻退去させる」という契約条項は、「明らかに無効である」とまでは
言えませんが、かといって、それだけで適用されるわけではなく、借主に家賃の支払いの資力があるにもかかわ
らず家賃を滞納し、家主が納めるように何度も督促したのに、数ヶ月以上も滞納を続け、もはや、借主は、「家
賃を支払うという約束を守るつもりがない」と判断された場合、信頼関係破壊となり、契約解除の可能性があり
ます。

騒音

隣室から、まるで壁がまったくないように、会話する声が「普通に」聞こえてくる。  
欠陥建築ではないかと思い、家主に思い切って苦情を申し出たら、
家主は、「そんなはずはない。大手のゼネコンの設計施工だし、
建築基準法もクリアーしている。
共同住宅では、お互い我慢する必要があるんだ」と、逆にお説教されてしまった。
建築基準法では、「音」の問題について、どのように規定しているのでえしょうか?

(回答)

建築基準法第30条では、共同住宅の各戸の界壁について、
「政令で定める技術的基準に適合するもの」としており、
その施行令(第22条の3)によると、
振動数125ヘルツで透過損失25デシベル、
同じく振動数500ヘルツで40デシベル、
2000ヘルツで50デシベル以上と定めています。

たとえば、隣室で大きな声(80デシベル)で話した場合、
透過損失が25デシベル以上であるので、55デシベル程度に聞こえたとしても、
建築基準法上は問題なしとされてしまうのです。

ちなみに、30~40デシベルは「ささやき(静か)」、
50~60デシベルは「普通の会話(日常の騒音)」、
70~80デシベルは「大きな咳払い、子供の泣き声など(うるさい)」状況を
表しています。

もともと、日本の在来建築は、「遮音構造」には無頓着であったことと、
建築基準法そのものが、「最低基準」を示したものであるため、
「建築基準法をクリアーした欠陥構造」があふれかえっているのです

家賃の滞納

契約書には「家賃を1日でも滞納すれば、年利30%の滞納補償金および滞納手数料5000
円を支払うこととする」と書いていたが、うっかりして家賃を所定の期日に振り込まなかった
ところ、管理会社から、「契約違反なので、滞納補償金と手数料を請求する」と言われた。
契約書に明記されていたら、従わざるを得ないのか?

(回答)

「滞納補償金」というのは、「遅延損害金」のことです。家賃のような金銭債務については、
通常は、利息制限法の制限利息の1.46倍までであれば、その約定が認められていますが、
元本10万円未満であれば年20%、同じく10万円以上100万円までなら年18%が制限
利息ですので、約定としては、10万円までの利息は、20%×1.46=29.2%、100
万円までの利息は、18%×1.46%=26.28%以下でなければなりません。

ところが、契約書では、「年利30%+手数料5000円」ということになっていますので、
法律で認められた上限を超えていることになります。従って、法律の上限を超えた部分については、
支払う義務はないということになります。さらに、その契約が2001年4月1日以降に契約され
たものであれば、消費者契約法が適用されますので、消費者契約法第9条によって、年14.6%
を越える部分については、支払う必要がないとされています。いずれにしても、契約書の内容どお
りにする必要はないということです。

共用部分の問題(1)

家主から、「共用部分の清掃を入居者に手分けしてやってもらう」という通告を受けた。
契約書にそういうことは明記されていないが、家主からの通告には従わざるを得ないのか?

(回答)

共用部分の清掃や維持管理のために、「共益費」や「管理費」などの名目で、家主が徴収
していると思います。「共益費は無料」という場合には、家賃に共益費部分も含んでいると
解釈されます。家主は、家賃や共益費を徴収している以上、入居者に使用収益させる義務が
ありますので、共用部分の清掃は、家主が行わなければなりません。まして、契約書に記載
されていないのに、入居者に清掃を求めるとすれば、

家賃や共益費の支払いとの二重負担を求めることになります。従って、家主の言い分は無茶
苦茶な要求ですので、従う必要は一切ありません。しかし、そんな無茶な要求であっても、
家主の要求を受け入れてしまい、共用部分の清掃を行う入居者が出てくると、かえって、入
居者間に不協和音を与えてしまうことになり、結果的に、他の入居者も清掃をやる羽目にな
るかもしれません。そこで、家主の要求が無茶苦茶であり、家主に従う必要もないので、入
居者全員で拒否するように、他の入居者に働きかけたほうがよいでしょう。そして、入居者
の連名によって、家主に対して、「家賃や共益費の負担と合わせて、清掃を求めるのは二重
負担になるため、一切拒否する」という通告を行ったほうがよいでしょう。

保証金と敷金は、どのような違いがあるのか?

保証金と敷金は、どのような違いがあるのか?

(回答)

保証金と敷金の違いとしては、実態としては、
ほとんど同じような意味で使われていることが多いのですが、
厳密に言えば、次のような違いがあるとされています。

1 保証金は、事務所、店舗やテナントなどの主に法人契約によく使われ、
敷金は、個人の住居の契約によく使われています。

2 保証金は、約定によって、
退去時に敷引き(解約引き、償却などと呼ぶ場合もあります)があることが多いのに対し、敷金は、
通常、敷引きがなく、実費精算です。

3 保証金は、法律上規定のないお金ですが、
敷金は、民法第316条,第619条などに規定のあるお金です。
ただし、判例では、敷引きのない保証金は「敷金」と同じ扱いとなっているようです。

4 保証金は、約定がないと権利の承継がありません(次の家主に引き継がれない)が、
敷金は原則として新しい家主にも引き継がれます。

5 保証金=敷金+礼金という解釈もあります。
つまり、保証金方式をとっている場合には、同時に、敷引きなどがある代わりに、
礼金を取ることがなく、敷金方式をとっている場合には、敷引きがない代わりに、
礼金を取る地域が多いということです。

礼金が高額なので支払いたくないのですが。

礼金が高額なので支払いたくないのですが。

(回答)

礼金というのは、法律上、特に規定のないお金です。
礼金のやり取りは、単なる慣習に過ぎません。
問題は、家主が礼金の支払いを求め、借主がそれを拒否した場合に、
家主が契約を拒否するだろうということです。
借主にも、物件を選ぶ自由があるのに対して、
家主は、誰と契約するかの自由があるのです。

従って、「礼金が高額なので支払いたくない」と言っても、
家主が認めてくれなければ、契約できないだけなのです。
契約そのものを強制することはできないからです。

契約書5

契約書の内容を見ていたら、「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」となっていた。
そういう契約内容は不当だと思うのだが、削除を求めるべきか、
それとも、法的に認められないと思うので無視して契約したほうがよいのか?

(回答)

「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」という合理的な根拠はあるのでしょうか?
 万が一、そういう根拠があれば、「不当な契約」とは言えません。
しかし、ふつうは、「更新ごとの自動値上げ」を行うような合理的な根拠はないと思います。

そういう場合には、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」
に該当しますので、契約内容そのものが無効となります。

できれば、最初から削除してもらうほうがよいと思いますが、あまり強い交渉を行うと、
契約そのものができなくなる(家主が契約を拒否する)可能性もあります。

入居を優先したいのであれば、あまりに強い要求は避けたほうがよいでしょうが、
その代わり、契約更新時には交渉を行う必要があります。
どちらがよいとは一概に言えませんが、最終的には、借主の判断次第となります。

契約書4

仲介業者で受け取った契約書内容と管理会社から送られてきた契約書の
内容が異なるのだが、どちらが正しいのか?

(回答)

仲介業者が、本来、管理会社が指定する契約書を使用すべきところを、
自社で使用している契約書を間違って使用したことが原因だと思います。
そうだとすれば、正しい契約書は、管理会社が用意したものとなります。

そこで、万一、管理会社が用意した契約書の内容と
仲介業者で受け取った契約書の内容が大幅に異なり、
仲介業者で受け取った契約内容だったから契約したという場合には、
仲介業者に対して、損害賠償を行うことが可能となるでしょう。

手付金

仲介業者に手付金として支払ったが、キャンセルしても返金されない。

(回答)

本来、手付金として受け取ることができるのは、契約の当事者である家主だけです。

仲介業者が便宜的に受け取る場合には、家主からの代理権が必要であり、
家主から、手付金の受領を認めるという委任状等を提示する必要があるとされています。

業者が、家主の代理権を証明するものを提示すれば、仲介業者でも、
手付金として受領することができるので、手付金支払い後にキャンセルする場合には、
解約手付金扱いとなり、手付金の返金は不可能になっても仕方がないでしょう。

ところが、よくあるケースとしては、実際には、代理権そのものを得ずに、
仲介業者が受け取っているケースです。
以前は、仲介業者が、代理権なしに便宜的に手付金を受け取ることも慣習として
黙認されるケースが多かったのですが、最近は、厳密に解釈するようになってきています。

一方、賃貸借契約そのものは、手付金の授受によって成立する
という考え方が多いですので、仲介業者が預かった手付金が家主の元に届けられ、
家主が契約書を発送した(契約の着手と考えられます)あとは、
手付金は、解約手付金として扱われてもおかしくないと思います。

つまり、仲介業者が預かってから一定の期間が経過すれば、
解約手付金として処理されても仕方がないと思います。
 「一定の期間」は、通常、1週間もあれば十分でしょう。

逆に言えば、仲介業者に手付金として支払った場合でも、
正式の代理権がなかったとき(支払い時に代理権を証明するものを提示されなかったとき)は、
支払い直後であれば、キャンセルした場合には、
返金に応じるべきであると解釈されるようになってきたのです。

なお、いずれにしても、手付金として支払う場合には、
「キャンセルする場合には返金されない」ということを覚悟して支払うべきだと思います。
なぜなら、手付金を支払えば、借主だけでなく、家主に対しても強い拘束力があるからです。
安易に、「仮押さえ」するつもりで手付金を支払うべきではありません。