建築のマンション、入居当時から続く雨漏りの責任は?

Q:私は東京都渋谷区の1998年に建てられた10階建てのマンションに住んでいます。
建設当時から9階の雨漏りがひどく、何回も修理しているのですが一向に直りません。

このマンションを分譲したデベロッパーは建設当時倒産寸前だったこともあって、
なんとなく心配です。どのようにしたら、関係当局に建物を調査していただいて
安全を確認できるのか、その方法をご教示いただけないでしょうか。

なお、建築確認申請図書とか構造計算書などはいっさい受け取っていません。
いまからでもデベロッパーに請求できるでしょうか。
A: 一般にマンションの漏水事故は次のような原因が考えられます。
(1) 屋根防水の不良による漏水。
(2) 外壁のひび割れや窓開口部まわりからの雨水の浸入による漏水。
(3) 上階の浴室の防水不良や排水不良による漏水。
(4) 上階の台所・洗面所・便所・洗濯排水パンやその給排水・給湯管配管の不良による漏水。
(5) 上階の洗濯排水のオーバーフローなどの生活上の不注意による漏水。

このお宅は10階建てマンションの8階の住戸であると思われますが、
その漏水原因は、以下のように推測されます。

(1) 屋根防水の不良による漏水は、屋根面(共用部分)を修理する
必要があります。10階建てのマンションの9階からの漏水は、
屋根防水の不良による漏水事故とは考えにくいものです。
しかし、時として屋根から浸水し、10階、9階の璧体内やパイプシャフトを通って
8階に至るケースもあります。

(2)上層階の外壁のひび割れや、打ち継ぎ目地やサッシまわりのシーリングの施工不良、
上階のバルコニーや共用廊下など片持ちスラブの垂れ下りによる、
スラブの付け根部からの雨水の浸入が考えられます。
この場合は外壁に足場を架設したり、上階のバルコニーや共用廊下など
雨水が浸入しやすそうな個所を調査したりで漏水原因を追究し、
適切な止水・補修工事が必要となります。これらは共用部分の修繕となりますので、
管理組合の了解や協力、同意が必要となります。

(3) 上階の浴室の防水不良や排水不良による漏水の場合は、
上階の居住者の協力を得て、入浴時と漏水時期の因果関係などを調査し、
原因が確定したら上階の浴室の修繕を行う必要があります。
この修繕工事は、上階が入浴できなくなる場合もありますので、
上階とのコミュニケーションが重要です。

(4) 上階の台所、洗面所、便所、洗濯排水パンやその配管(給排水・給湯管)の
不良による漏水の場合も、上階とのコミュニケーションが重要です。
上階の給排水や給湯配管を修繕する場合には、
床仕上げ材を剥がして修繕する必要があります。

(5) 上階の洗濯排水のオーバーフローなどの生活上の不注意による漏水対策も、
上階とのコミュニケーションが不可避です。
「建設時から何回も修理している」とのことですが、だれが、どのような修理をしているのか、
文面からは理解できません。本来は、マンションを販売したデベロッパーが、
雨漏れのない健全な住居を販売する責任があります。
通常、デベロッパーは元施工会社(ゼネコン)に対して修繕を命じます。
元施工会社(ゼネコン)が倒産した場合は、デベロッパーは
別の修繕会社やゼネコンに頼み、健全な住居にしなければなりません。
それでも直らないようであれば、買い取りを請求することもできます。

また、漏水の修繕工事は、共用部分や上階の所有者・居住者の専有部分からの
作業が必要となります。これは、当該住戸の区分所有者が単独で努力しても
解決できない問題です。管理組合が主体となって、デベロッパーや元施工会社(ゼネコン)、
上階居住者などと調整して問題解決に取り組むべき課題です。

最後に「なお、建築確認申請図書とか構造計算書などはいっさい受け取っていません。
いまからでもデベロッパーに請求できるでしょうか」という点についてですが、
通常、マンションを販売するデベロッパーは、管理組合に竣工引き渡し書類を引き渡します。

竣工引き渡し書類には、竣工図、工事期間中の記録、使用材料メーカー一覧、
機械設備等の取扱説明書などがあります。建築確認申請、開発行為、
一団地申請等の申請書類は原本を管理組合に引き渡す場合と、
写し(コピー)を引き渡す場合があります。姉歯事件以降は「構造計算書」も
竣工図書の一部として引き渡され、計算書に偽装がないかをチェックできるようになりました。

ただし、これらの竣工引き渡し図書は、各区分所有者には渡されず、管理組合に引き渡されます。
また、小さなマンションでは図面類を保管しておく場所がない場合もあり、
委託しているマンション管理会社が保管している場合もあります。

もし、管理組合に竣工図書が引き渡されていないとすれば、
直ちに管理組合の理事長がデベロッパーに引き渡しを請求してください。
もし、デベロッパーが引き渡さず、紛失している場合には、
竣工図や構造計算書を再度作り直すように要求してください。

また、建築確認審査機関である東京都や渋谷区が
建築確認申請図書を保管している場合もあります。
建築行政窓口に相談に行くことも場合によっては必要になるでしょう。

条件・イメージ違い1

内見した部屋は、実際に借りる部屋ではなく、別の部屋(モデルルーム)だった。
しかし、実際に入居した部屋とは間取りも異なっていた。
イメージがまったく違うので契約の解除を申し出たが、
「一切返金できない」と言われた。何とかならないのしょうか?

(回答)

問題となる点はいくつかあります。

まず、下見(内見)の時点で、下見した部屋がモデルルームであるということを
認知していたかどうかです。通常、このような場合には、仲介業者から
「実際の部屋は見学できないが、他の部屋が空いているので
モデルルームとして参考にしてください」というような説明を受けているはずですが、
そういう説明がまったくなかったのかどうかです。

ただし、「モデルルームである」という説明がまったくなかったとしても、
下見した部屋の番号と実際に借りる部屋の番号が異なることくらいは
誰でもわかることですので、「モデルルームという説明がなかった」ことだけで
責任追及することはできないでしょう。

つまり、モデルルームとして見学した部屋の間取りと
実際に借りる予定の部屋の間取りが
どのように異なるのかの説明があったのかどうかが重要だということです。

そして次に、「モデルルームとは間取りが異なる」ということですが、
問題は、「異なるレベル」です。
つまり、単に、浴室の位置が反転しただけの間取りの違いだったのか、
それとも、居室の広さや形もまったく違うような違いだったのかということです。

もし、居室の広さや形もまったく違っていたのに、平面図などで、
そういった説明をまったく受けていなかったとすれば、仲介業者の責任が重大です。
そのような場合には、重要事項説明書も間違っている可能性がありますので、
その確認が必要になります。説明も間違っており、
重要事項説明書の記載自体も事実と異なっているような場合(広さも違うなど)には、
仲介業者に対する損害賠償も追及できるでしょう。

しかし、単に、浴室の位置が反転しているだけの場合には、
「間取りが異なる」ということ自体、主張が難しいでしょう。
なぜなら、その違いによって、生活上の大きな問題が発生するとは考えにくいからです。