定期借家契約

定期借家契約の物件を契約することになったが、
ふつう、定期借家契約の場合には礼金はいらないと聞いていたが、
多額の礼金がいるという説明を受けた。物件自体は気に入っているので、
礼金の支払いなしに契約したいが可能か?

(回答)

「礼金」というのは、敷金などとは異なり、もともと、法的にはっきりした根拠のないお金です。

ふつうの賃貸借契約においては、「家賃の前払い」的なものであるとか、
「賃借権設定の対価」であるとか、立退き料支払いのための準備金的なものであるとか、
さまざまな解釈がされています。

ところで、定期借家契約の場合には、立退き料の支払いが不要であるため、
通常は、礼金が不要とされています。
しかし、定期借家契約では、礼金は取れないという制限はありませんので、
礼金が設定されている場合もあります。

家主との交渉で、礼金の支払いを免除してもらうか、
それが不可能なら、諦めて契約するか、
それとも、契約そのものをやめるかのいずれかになるでしょう。

契約の成立5

申込書を提出し、手付金も支払い、その後、契約金の残金も支払っていたが、
たまたま他に条件のよい物件が見つかったので、家主に、
「ある事情から解約したい。まだカギ渡ししていないので、法的には、
『契約の履行の着手』前であるので、手付金の放棄で解約する」という連絡を行った。

しかし、家主は、「契約金をすべて受け取っているので、手付金の放棄だけでは解約できず、
礼金も返せない」と言ってきた。このような場合、礼金の返還はしてもらえないのか?

(回答)

前回でも述べているように、借主が手付金の放棄で解約できるのは、
契約の相手側(家主)が「契約の履行に着手するまで」とされています。
そして、家主の「契約の履行に着手」することは、カギ渡しが代表例とされています。

今回のケースでは、借主としては、契約の履行への着手行為として、
契約金のすべてを支払っていますが、契約の相手側の家主は、
まだ契約の履行に着手しているとは言えないというのが一般的な解釈ですので、
手付金の放棄で解約できることになります。

しかし、契約金の残金まで支払っていながら、
「他に条件のよい物件を探していた」という行為自体は、
家主に対する裏切り行為ではないでしょうか?

つまり、判例などによれば、手付金の放棄だけで解約することはできることになりますが、
家主のリスク(次の入居者を急きょ探すことになるため、
すぐに入居者が見つからない可能性がある)を考慮すれば、
礼金の一部は支払ってもよいと思います。

契約の成立4

申込書を提出し、手付金も支払い、その後、契約金の残金も支払っていたのに、
入居予定日の直前になって、管理会社から、「ある事情から、入居不能になった。
しかし、まだカギ渡ししていないので、法的には、『契約の履行の着手』前であるので、
手付金の倍返しを行って解約する」という連絡を受けた。
現在住んでいる物件の退去通知も行ったため、
いまさら契約できないといわれても困るのだが、何とかならないか?

(回答)

手付金の支払い後、借主が手付金の放棄で、家主が手付金の倍返しで、
解約できるのは、「相手側が契約の履行に着手するまで」となっています。
借主から解約できるのは、家主からカギを受け取るまでとされているのに対し、
家主から解約できるのは、借主が契約の履行に着手する(=契約金の残金をすべて支払うなど)までです。
つまり、カギ渡し前だという理由で解約することができるのは、借主であって、家主ではないのです。

借主が契約金をすべて振込んでいたような場合には、家主は手付金の倍返しでは済まされず、
借主が負った損害についてすべてを弁償しなければなりません。
具体的には、入居できなくなったことで発生する費用(次の物件の契約のための費用や引越し代など)は、
家主が負担しなければなりません。

契約の成立3

申込書を提出し、手付金も支払っていたのに、後日、仲介業者から、
「家主の都合で入居できなくなったが、まだ、連帯保証人の保証書が提出されておらず
契約は正式には締結されていないので、預かった手付金を返金する」という連絡が入った。
現在住んでいる物件の退去通知も行ったため、
いまさら契約できないといわれても困るのだが、何とかならないか?

(回答)

ほとんどの賃貸借契約では、「(連帯)保証人の確保」という条件がついていますが、
これをどのように理解するかによって、契約が成立しているかどうかという判断が分かれてきます。
一部の都道府県によれば、「保証人の確保」は契約の「停止条件」として取り扱っています。
「停止条件」としてとらえると、保証人の保証書が提出されるという「条件」が満たされて初めて、
「契約の成立」とみなされることになります。

逆に言えば、それまでは、契約が成立していないとみなされるわけですので、
仲介業者の主張の通りということになりますので、他の物件を探さざるを得なくなります。
しかし、正確に言えば、「保証人の確保」は、「停止条件」ではなく、「解除条件」なのです。

「解除条件」としてとらえると、「万が一、保証人の確保ができなかった場合には、
成立していた契約を解除する」ということになります。
似ているようですが、法的な意味としてはまったく異なるのです。

なぜ、「解除条件」であるかと言えば、家主にとっては、万が一、
借主側が保証人を立てられないという事態に陥った場合でも、契約を解除する、
保証会社の利用をしてもらう、保証人なしでも契約する
(他の入居者を見つけるのが困難な場合など)などの選択肢があり、
その時点で、解除するかどうかを判断することができるからです。

いずれにしても、保証人の確保は、契約の解除条件ですので、
契約としてはそれ以前に成立していることになります。