連帯保証人

貸し店舗の連帯保証人になっていましたが、先日、賃借人が店舗を明け渡した際に、
家主から私に3年分の滞納家賃の請求が来ました。
それまで、一度も保証人である私に請求の連絡はありませんでした。
保証金は300万円で、契約時に私が出しています。
請求額は580万円で、差し引くと280万円の請求です。
支払う必要はあるのでしょうか?

(回答)

信義誠実を著しく欠いており、連帯保証人は全額保証をする必要はありません。
一般に、貸し店舗などの事業用賃貸借契約に連帯保証人を立てることは少ないと思われます。
賃借人の事業採算が悪化した場合に、負債額が巨額になる懸念があり、
保証人の負担が著しく膨らむことがあるからです。そのため、連帯保証人を立てるかわりに、
保証金の額が一般賃貸借契約の保証金や敷金に比べ、高額になっています。
その上で、今回のように連帯保証人を立てた場合の問題を考えてみましょう。

連帯保証人の保証債務の範囲は「主たる債務に関する利息・違約金・損害補償、
その他すべてその債務に従いたるものを包含する」(民法第447条)とされていて、
賃借人の債務と同等の責務を負うようになっています。また、通常の保証とは異なり、
「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」
(主たる債務者への督促や、財産に強制執行するように要求する権利)を有していません。
ですから、連帯保証人は非常に厳しい保証債務を負っているといえるでしょう。

また、保証契約は、賃貸人と保証人の直接の契約関係にあり、
両当事者は保証契約を誠実に遵守する責務を負っています。
このことから、賃貸人は連帯保証人に対し、
賃借人の経営状況や滞納状況を定期的に報告する義務を負っているといえるでしょう。

今回のケースでは、それを怠って一度も滞納状況を報告せず、
また、賃借人の契約解除などの対策を打たずに3年間も放置していたのです。
このように、いたずらに連帯保証人の保証債務を拡大した上で、
解約退去時に滞納金額(保証金を除いたもの)を請求することは、
著しく信義誠実を欠いています。

むしろ賃貸人は損害を拡大した責を負うべきであり、
連帯保証人は金額を保証する必要はないものと考えます。
その点を説明し、賃借人と話し合って納得の上で支払いに応ずべきで、
話し合いがつかなければ、裁判所へ訴えを起こすとよいと思います。

保証金と敷金は、どのような違いがあるのか?

保証金と敷金の違いとしては、実態としては、
ほとんど同じような意味で使われていることが多いのですが、
厳密に言えば、次のような違いがあるとされています。

1  保証金は、事務所、店舗やテナントなどの主に法人契約によく使われ、
敷金は、個人の住居の契約によく使われています。

2  保証金は、約定によって、
退去時に敷引き(解約引き、償却などと呼ぶ場合もあります)があることが多いのに対し、
敷金は、通常、敷引きがなく、実費精算です。

3  保証金は、法律上規定のないお金ですが、
敷金は、民法第316条,第619条などに規定のあるお金です。
ただし、判例では、敷引きのない保証金は「敷金」と同じ扱いとなっているようです。

4  保証金は、約定がないと権利の承継がありません(次の家主に引き継がれない)が、
敷金は原則として新しい家主にも引き継がれます。

5  保証金=敷金+礼金という解釈もあります。
つまり、保証金方式をとっている場合には、同時に、敷引きなどがある代わりに、
礼金を取ることがなく、敷金方式をとっている場合には、敷引きがない代わりに、
礼金を取る地域が多いということです。

礼金が高額なので支払いたくないのですが。

礼金というのは、法律上、特に規定のないお金です。
礼金のやり取りは、単なる慣習に過ぎません。
問題は、家主が礼金の支払いを求め、借主がそれを拒否した場合に、
家主が契約を拒否するだろうということです。
借主にも、物件を選ぶ自由があるのに対して、
家主は、誰と契約するかの自由があるのです。

従って、「礼金が高額なので支払いたくない」と言っても、
家主が認めてくれなければ、契約できないだけなのです。
契約そのものを強制することはできないからです。