契約名義人の変更4

賃借権のいわゆる「名義変更」については、

家主が快く承諾してくれたので問題ないと思われたが、

管理会社から、多額の「名義変更手数料」なるものを請求された。

支払いに応じなければならないか?

(回答)

管理会社が請求する根拠について、何か説明がありましたか?

「手数料」は、依頼主が要望したことに対して、具体的な作業を行ったことの

労務報酬と考えられますので、まず、借主として、管理会社に、何か、

手間をかけるようなことを依頼したのかどうか?まったく何も依頼していなければ、

おそらく契約書の書き換えの手間賃ということになりますが、

手間賃といっても、専門知識を要する作業ではなく、

時間的にもそれほどかかる作業ではありませんので、

せいぜい2~3千円程度までなら、支払いに応じても仕方ないかもしれません。

契約名義人の変更3

友人が退去する物件の条件がよかったので、「代わりに自分が住みたい」ので、

名義変更をしたいが、可能か?

(回答)

賃貸借契約は、借主と家主との間で結ばれるものであり、

個人と個人の信頼関係(借主は家主に対して家賃を支払うという約束を行い、

家主は借主に対して物件を使用させるという約束を行う)を前提にしています。

ここでいうところの「名義変更」というのは、借主が一方的に、

借主を変更してしまうということですが、それが認められれば、いつの間にか、

借主が勝手に代わっていたということになりかねず、

家主が不利益を被る可能性もあります。

したがって、借主が一方的に、「名義変更」を行うというようなことはできません。

いったん、借主と家主との間に結ばれた契約を合意解除し、

あらためて、家主との間で契約しなおすことになりますが、

家主が認めてくれなければ、契約しなおすことはできません。

契約名義人の変更2

このたび、結婚することになったので、

婚約者が会社に住宅手当を申請する関係から、

婚約者名義に変更したいと申し出たが、

家主から拒否された。何とかならないか?

(回答)

まず、物件自体の種類は、家族向けの物件でしょうか?

それとも一人用のタイプでしょうか?

もし、一人用のタイプの物件の場合には、

結婚後は退去しなければならないでしょう。

したがって、その場合には、名義変更以前の問題となります。

家族向けの物件の場合は、まず、家主に拒否する理由を聞いてみましょう。

家主がきちんと理解せずに拒否している可能性もあるからです。

家主が、事情をきちんと確認したうえで、

それでも家主が拒否するようであれば、いくつかの対策が考えられます。

一つは、会社の住宅手当の申請上、婚約者の方が「借主」となっていればよい

というのであれば、家主との関係では、あなたが借主ですが、

(できる限り家主の承諾を得て)あなたが「転貸人」=「家主」となり、

婚約者の方が、「転借人」=「借主」となる方法です。

家主が書類上の転貸借契約であっても認めないと思われる場合には、

家主の承諾を求めないほうがよいだろうということです。

二つ目は、家主に対して、「一定金額の名義変更料を支払う」

という条件を持ち出して、家主の承諾を得やすくするという方法です。

三つ目は、家主の承諾を得るための条件を家主自身から聞き出して、

何とか、家主の理解を求めるという方法です。

それらの対策を講じても、うまくいかないという場合には、

退去を検討しなければならないかもしれません

契約名義人の変更1

家賃補助の関係で、会社名義で賃貸マンションに入居していたが、

家賃補助制度の廃止により、個人名義に変更しなければならなくなった。

これに対し、不動産会社は、契約者変更になるため、

敷金・礼金、契約時手数料(1ヶ月分)を要求されました。

不動産業者の言うとおりに支払う義務はあるか?

(回答)

もともと、賃貸借契約に、「名義変更」というものは存在しません。

賃貸借契約は、家主と借主との間で結ばれるものであり、

「名義変更」と呼ばれているものは、実際には、当初の借主と家主との

契約を解除し、新たに別の借主と家主が契約を結ぶことを指しています。

別の借主との間で契約を結ぶかどうかは、家主の意思次第ですが、

入居者が変わらず、家主が契約変更を同意しているのであれば、

敷金精算も不要でしょう。

最初の契約時点で、礼金・敷金を誰が負担したかが一つのポイントとなります。

企業名義で契約していたとしても、実際に、礼金・敷金を負担したのが、

入居者自身であった場合、あらためて、礼金・敷金を支払うのは不合理です。

もともと、「礼金」は、家賃の前払いや入居の権利を保障する権利金などの

性格をもつとされていますが、家主に、書類の作成以外に、

何ら実質的な負担が増えるわけではないので、一度支払った礼金を

再度徴収するというのは、二重払いということになります。

一方、最初の契約時点で、企業が、礼金・敷金を負担していた場合には、

少し事情が異なります。企業としては、敷金の精算が必要となりますので、

あらためて、敷金を差し入れなければなりません。

礼金については、家主との交渉次第ということになります。

いずれにしても、契約相手は、家主さんですので、家主と直接交渉し、

書類書き換えを行ってもらうようにしてください。

家主は、「すべて管理会社に任せているので…」という場合にも、

家賃1か月分も請求される理不尽さを告げて、

直接手続きできるように交渉したほうがよいでしょう。

それでも、どうしても、「管理会社を通せ」という場合にも、

書類作成費用として、判例などでも、実質的に認められるのは、

1万円程度。仮に、それらの交渉がすべてうまくいかない場合でも、

入居者が同一である以上、そのまま居住し続けていれば、

家主側に退去させられるほどの「正当事由」は認められず、

したがって、借主の居住権が認められると思いますので、

退去させられることはないでしょう。

契約期間中の途中解約5

家主との間で、契約期間を特に定めずに、口頭だけで契約していたのだが、

事情により、途中で退去することになり、家主に「2ヵ月後に退去する」と言ったところ、

「解約する場合には家主の承諾が必要と言っていたはずだ。

勝手な解約は承知できない。」と言ってきた。

「勝手な解約」と言われても困るのだが、文書で契約書を交わしていないため、

解約することはできないのか?

(回答)

契約期間を定めていない契約です(口頭かどうかは無関係です)ので、

民法第617条の規定が適用されます。

617条では、「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、

いつでも解約の申入れをすることができる。」として、

建物の賃貸借の場合には3ヶ月前の予告期間が必要とされています。

したがって、「2ヵ月後に退去する」というのでは、1か月分が満たないので、

1か月分は違約金として支払う義務がありますが、解約すること自体は可能です。

家主には、民法の規定を説明し、できるだけ納得してもらうようにしてください。

それでも、家主が承諾しない場合には、家主の意向に関係なく、

1か月分の違約金を支払って退去することができます。

契約期間中の途中解約4

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、

家主に「2ヵ月後に退去する」と言ったところ、「2ヶ月に1日足りないので、

実際には1ヶ月前の通知となるので、1か月分の違約金を支払ってもらう」と言ってきた。

たった1日だけ遅かったが、わずか1日の遅れで1か月分の違約金はおかしいと思うが、

支払う義務はあるのか?

(回答)

契約期間を定めた契約で、特約として、契約期間中の途中解約権を認めた場合には、

その条件に縛られます。したがって、たった1日といえども、条件に満たない場合には、

違約金の支払いが生じるのは仕方ありません。支払うべきでしょう。

契約期間中の途中解約3

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、

家主に「2ヵ月後に退去する」と言ったところ、「契約書には確かに2ヶ月前までと

なっているが、これは、特別な事情がある場合であって、

借主の勝手な都合での解約を認めるものではない。それでも、

どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってほしい」と言ってきた。

支払う義務はあるのか?

(回答)

契約期間を定めた契約で、契約期間中の途中解約を特約として認めた場合には、

その認めるための条件がどうなっているかがポイントです。

通常は、解約の通知時期のみ条件として定めていることが多く、

今回のように2ヶ月前としているだけであれば、

家主の「特別な事情がある場合」という主張は認められません。

したがって、家主の支払い要求に応じる義務はありません。

契約期間中の途中解約3

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、

家主に「来月退去する」と言ったところ、

「途中解約するには、退去予定月の6ヶ月前までに連絡することになっている。

どうしても来月退去するなら、5か月分の違約金を支払ってもらう」と言ってきた。

びっくりして契約内容を確認したところ、確かに、

「6ヶ月前までに通知すること」となっていた。

次の物件への引越し代も必要なので違約金まで支払いたくないが、支払う義務はあるのか?

(回答)

前項とほとんど同じ内容に見えますが、違うのは、「6ヶ月前までに連絡する」というところです。

契約期間を定めた契約において、借主の途中解約権という特約を定めた場合には、

その特約が有効となります。

したがって、「6ヶ月前までの連絡」も有効と考えられるのですが、

一方で、民法第617条では、契約期間を定めない契約の場合には、

「3ヶ月前までの通告」でよしとしていますので、3ヶ月を超える部分については、

消費者契約法に言うところの、

「消費者の利益を一方的に害する条項」と判断される可能性が大きいと思われます。

しかし、「消費者契約法違反として特約は無効である」と判断されてしまうと、

今度は、契約期間終了までの家賃支払い義務が出てきてしまうという可能性もなくはないのです。

そこで、借主としては、下手に法的手段を講じるのではなく、

家主との妥協点を探るように交渉しながら、「一般的には3ヶ月前までの通告なら有効なので、

違約金は2か月分に抑えてもらえないか」というような妥協案を出したほうがよいと思います。

契約期間中の途中解約2

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、

家主に「来月退去する」と言ったところ、

「途中解約するには、退去予定月の3ヶ月前までに連絡することになっている。

どうしても来月退去するなら、2か月分の違約金を支払ってもらう」と言ってきた。

びっくりして契約内容を確認したところ、確かに、「3ヶ月前までに通知すること」となっていた。

次の物件への引越し代も必要なので違約金まで支払いたくないが、支払う義務はあるのか?

(回答)

契約期間を定めた契約で、かつ、契約期間中の途中解約権を特約として認めた契約ですが、

解約通知時期については、特約として自由に定めることができます。

そこで、解約通知時期を見ると、「3ヶ月前までに通知する」となっており、

この規定は、契約期間を定めない場合における通知時期と同じですので、

法的にも何ら問題ないものとみなされます。

したがって、この特約は有効となりますので、

家主の言うとおりの違約金を支払わなければならないのです。

造作買取請求権

エアコン取付時100Wを200Wに変更、取付時は説明もなく変更に貸主合意。

退去前になって100Wに戻すように言われた。

取付時は説明なく合意したのに退去前になっての消費者負担請求は

消費者の義務を加重し、その利益を一方的に害するものに当たらないのでしょうか?

賃借人がもっぱら自分の都合で自己使用の都合上、有益な改良として

物件自体の増加した限度でその改良に応じた有益費の支払いとして請求できないでしょうか?

(回答)

これは造作買取請求権についての問題です。

賃貸借契約書に造作買取請求権を行使しないとの特約の有無の確認が必要です。

設備増強で、かえって利便性を高めており、それをわざわざ元に戻すことの合理性はないとの考えもあります。

例としてですが、UR都市機構では入居者が電気容量を増設した場合、原状回復は免除しています。

電気容量の増設は、造作としての概念で、有益費には該当しません。

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一般的な説明ですが。

1.造作

まず、問題となるのは、借地借家法にいう造作の意味・範囲です。

造作とは、「貸主の同意を得て(賃借人が)建物に付加した畳、建具その他の造作」のことをいいますが、

講学的には建物に付加され、建物の使用に客観的便益を与えるものと解されています。

したがって、家具は建物に付加されているわけではありませんので、造作には含まれません。

具体的には、畳、建具(障子、ふすま、雨戸)のほか、作りつけの戸棚、

エアコンなどの電気設備、ガス設備、水道設備、物干し台、商店の陳列棚などがあります。

ただし、トイレを水洗式にした(あるいは和式を様式にした)場合などのように建物に付加したものが

建物の一部となってしまった場合には、造作には含まれず、有益費の問題となります。

2.家主の同意があること

造作は家主の同意を得て造作を取り付けたことが必要です。

3.賃貸借契約が期間の満了、また解約の申し入れによって終了したこと

借家人に家賃の不払いその他の契約違反があるために、賃貸借契約が解除された場合には、

造作買取請求権は認められません。

造作買取請求権はあくまで「善良な借家人の保護」を目的としているからです。

4.賃貸借契約書に造作買取請求権排除の特約がないこと

造作買取請求権に関する規定は任意規定(当事者間の契約の方が優先される)です。

したがって、特約で排除(家主が造作を買い取らなくてもよい)されている場合には、

造作買取請求権を行使することはできません。

なお、市販の賃貸借契約書などでは、「造作買取請求権は行使しない」という

特約が入っていることが多いようです。

★UR都市機構の例

入居者が電気容量を増設した場合、原状回復は免除しています。

http://www.ur-net.go.jp/kyojyusha/report/moyougae-koumoku.html