原状回復期間2

「原状回復義務」というものが、いつ発生するのかを考えれば、

家主の主張が間違っていることは明らかです。

 

時系列から言えば、

「契約期間終了」→「物件明け渡し義務発生」=「原状回復義務発生」

となるのです。

つまり、原状回復義務は、契約期間が終了しなければ、

そもそも発生しない義務なのです。

 

また、借主は、契約期間中、使用収益する権利を持っています。

(家主から見れば、使用収益させる義務)が、

契約期間中に原状回復期間を含めるとすれば、

契約期間中にもかかわらず、使用収益することができなくなりますので、

使用収益することができない期間については、

家賃を支払う義務が免除されます。

 

いずれの見方からしても、契約期間に、

原状回復期間を含めるのは不当だということがお分かりでしょう。

 

従って、「契約期間に原状回復期間を含める」こと自体が不当ですので、

このような契約内容自体、不当な契約内容であり、公序良俗に反する規定

(使用できないのに家賃を支払うことになるため)であり、

無効といえるでしょう。

 

2001年4月以降に契約した場合には、消費者契約法によって、

「消費者の利益を一方的に害する条項」としても無効となります。

そこで、契約期間中は退去する義務がありませんし、

家主の主張に従って退去したとしても、

その期間中の家賃は支払う必要はありません。

契約期間中の途中退去

解約ヲ為ス権利ヲ留保シタルトキハ前条ノ規定ヲ準用ス」

という規定が適用され、「契約期間中の途中解約の特約」がある場合にのみ、

途中解約が認められています。

この点については、常識的な判断とは非常に異なっています。

 

つまり、契約書に、「途中解約条項」がなければ、

途中解約そのものが認められないからです。

 

しかしながら、契約書に「途中解約条項」がないと、いかなる理由があっても、

契約期間が終わるまで家賃を支払わなければならないということになりますので、

2001年4月以降の契約については、消費者契約法の

「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」に該当すると考えられますので、

「途中解約条項」がない場合でも、必ずしも、

契約期間終了までの家賃支払いを行う必要はないでしょう。

 

判例も、社会通念上、常識的な範囲を越える金額の支払いについては

免除する傾向にあるようです。

なお、契約期間を定めない契約(法定更新した契約も含みます)の場合には、

民法第617条の規定により、通知後3ヵ月後に解約することができます。

仲介手数料

仲介手数料として10万円(税別)を請求されたが、高すぎるような気がするが、

支払い義務があるのか?

 

(回答)

 

宅建業法第46条および建設省告示1552第3によれば、

賃貸借契約の媒介においては、借賃(通常は家賃のことです)の

1か月分プラス消費税が限度とされています。

 

そして、告示の後段で、「居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して

依頼者の一方から受けることのできる金額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって

当該依頼者の承諾を得ている場合を除き

借賃の1か月分の2分の1に相当する金額以内とする」としています。

 

つまり、業者は、借主に対して事前に「1か月分支払うこと」を承諾させていなければ、

家賃の半額プラス消費税以上の報酬を請求してはいけないとされているのです。

しかし、実態としては、ほとんどの業者がこのルールを守らず、事前の承諾なしに、

「家賃の1か月分プラス消費税」を請求しています。

 

そこで、相談内容を見ると、「10万円の手数料を請求」ということですので、

まず、家賃がいくらなのかをご確認ください。

手数料金額が家賃の1か月分プラス消費税よりも高額であれば、

明らかに宅建業法違反ですし、「事前の承諾をしていない」ということであれば、

家賃の半額プラス消費税分を超える部分については、支払い義務がありません。

原状回復のための承諾書

入居時に、「原状回復のための承諾書」というものにサインを求められ、

仕方なくサインしたが、退去時に、借主に不利なことがたくさん書いてあったので

撤回しようと思うのだが、撤回は可能か?



(回答)



承諾書そのものを一方的に撤回することはできません。

しかし、承諾書には、通常の原状回復義務を越えた特約事項が書かれていると

思いますので、このような承諾書の有効性が問題となります。



判例によれば、このような承諾書(特約)が有効となるのは、

 「特約の必要性があること」、

 「借主が特約の意味を理解していること」、

 「契約段階で特約を結ぶことについて承諾していること」

などの事情がある場合に限られています。



まず、通常の原状回復義務を越えるような特約事項を結ぶための合理的な理由がなければ、

「特約の必要性がある」とは言えませんので、例えば、家賃や礼金などの費用が、

通常よりもはるかに安いような場合とか、通常の原状回復義務以上の責任がある代わりに、

借主に特別に有利な規定が他にあるとかの事情がなければ、特約の必要性があるとはいえません。



その上、借主が入居時、「法律上の考え方からすれば、本当は家主が負担すべき費用だけど、

借主に負担してもらうことになっているんです」というような説明を受けているようなケースも

ほとんどないでしょうし、「特約の意味を理解している」とは言えないでしょう。

結局、「署名捺印した」というだけの消極的な承諾のみ残っているわけです。



従って、入居時に、無理やり提出させられた「承諾書」そのものの有効性は

認めがたいということになるのです。その上、2001年4月以降に

交わした契約(承諾書)であれば、消費者契約法により、

「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定に反する可能性が高いので、

消費者契約法に違反する可能性があります。



そこで、承諾書の撤回は無理ですが、承諾書の効力については、

「認められない」として争うことが可能ですし、

争えば、承諾書の効力が否定される判断が行われる可能性が高いでしょう。

原状回復期間1

契約が終了し、家主立会いの上、原状回復のための修繕負担については同意した。

しかし、家主から、「修繕を行う期間については、他の人に貸し出せないので、

家賃の支払いが必要と言われた。」家主に従う必要があるのか?



(回答)



家賃の支払いが必要なのは、契約期間中に限られています。

契約が終了すれば、当然のことながら、家賃の支払いは不要です。



「修繕を行う期間については、他の人に貸し出せない」のは確かに事実でしょうが、

 法律上の考え方として、 家主としても、内装の修繕を行わなければならないという

負担割合がありますので、 借主だけが100%修繕義務を負うということはあり得ません。



従って、家主としても、修繕する義務を負っているわけですから、

修繕期間中は、第三者に貸し出しできないというのは、

前の借主の責任とはいえないのです。



つまり、家主の主張には合理性がありませんので、

「家賃を支払え」という家主の主張は認められませんし、

 敷金からその分を差し引くことも許されないのです。

仲介手数料

仲介手数料として10万円(税別)を請求されたが、高すぎるような気がするが、

支払い義務があるのか?



(回答)



宅建業法第46条および建設省告示1552第3によれば、

賃貸借契約の媒介においては、借賃(通常は家賃のことです)の

1か月分プラス消費税が限度とされています。



そして、告示の後段で、「居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して

依頼者の一方から受けることのできる金額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって

当該依頼者の承諾を得ている場合を除き

借賃の1か月分の2分の1に相当する金額以内とする」としています。



つまり、業者は、借主に対して事前に「1か月分支払うこと」を承諾させていなければ、

家賃の半額プラス消費税以上の報酬を請求してはいけないとされているのです。

しかし、実態としては、ほとんどの業者がこのルールを守らず、事前の承諾なしに、

「家賃の1か月分プラス消費税」を請求しています。



そこで、相談内容を見ると、「10万円の手数料を請求」ということですので、

まず、家賃がいくらなのかをご確認ください。

手数料金額が家賃の1か月分プラス消費税よりも高額であれば、

明らかに宅建業法違反ですし、「事前の承諾をしていない」ということであれば、

家賃の半額プラス消費税分を超える部分については、支払い義務がありません。

契約書1

契約書の内容が借主に一方的に不利なので拒否したいのだが‥

 

(回答)

 

契約というのは、本来、対等平等な2者の間において、

一方からの「申し込み」と他方の「承諾」によって成立します。

これは、「諾成契約」と呼ばれており、口頭だけで成立します。

 

たとえば、何かを買いにお店に行った場合を想定して考えればよくわかると思います。

「これをください(申し込み)」、お店「ありがとうございます(承諾)」。

 

日本の社会自体も、対等平等を前提としていますから、契約に関しても、

「契約自由の原則」(私的自治の原則)というものがあり、

人身売買や殺人依頼など、公序良俗に反するような契約は無効ですが、

それ以外は、原則として、自由に契約することができるのです。

(なお、建物の賃貸借契約では借地借家法の強行規定に反する契約は無効であり、

例文解釈と言って、契約書、契約約款中の定型的文言の解釈で、

文言通りに適用すると不当な結果となる場合に、その不当性を回避するために、

その文言を「単なる例文である」として、その有効性を否定する

契約解釈の手法などが適用されるときも無効となります)

 

「自由に契約する」というのは、契約内容も自由ですし、誰と契約しようが、

逆に契約を拒否すること自体も自由なのです。

さらに、契約の形式も自由なので、文書でも口頭でもかまわないのです。

 

民法自体も、「契約自由の原則」を前提としつつ、

契約内容を取り決めなかった場合のルールを規定しているのです。

賃貸借契約も、本来は、対等平等な私人間で契約すべきです。

 

しかし、実際には、対等平等どころではなく、

立場の強い家主が一方的に定めた契約内容を、

立場の弱い借主が承諾するかどうかにかかっているわけです。

 

ということは、単純に考えれば、借主に一方的に不利な規定を拒否したくても、

家主が認めてくれなければ、結局は契約そのものが成立しないのです。

つまり、家主には、「あなたとは契約しない」という権利があるわけで、

家主に「契約せよ」と請求すること自体できないわけです。

 

そういう状況を背景として、民法だけでは

立場の弱い借主が一方的に不利であるとして、

借地借家法(旧借地法、旧借家法)が誕生しました。

そのため、借地借家法では、「強行規定」というものを設け、

一部の規定については、「契約書にどのような記載があっても、

借地借家法の強行規定に反するもので、

借主に一方的に不利な条項は無効である」としているのです。

 

また、2001年4月には、消費者契約法というものもできました。

この法律では、「消費者の利益を一方的に奪う契約条項は無効である」

としており、賃貸借契約書にどのように記載されていても、

消費者契約法に違反するとされた場合には、

借主は従う必要がなく、裁判しても勝訴する可能性が非常に高くなってきています。

 

相談内容を見ると、「借主に一方的に不利‥」ということですが、

具体的な記載条項を確認する必要があります。

 

その条項が、借地借家法の強行規定や消費者契約法に違反すると

認められる場合には、そのまま契約しても、条項としては認められませんが、

できれば、トラブル予防のために、家主に「法律上認められないと思うので、

削除してもらえないか?」申し出ることもできます。

ただし、言い方には気をつけないと、

家主が契約そのものを拒否してくる可能性があります。

 

一方、上記の規定・法律に違反していない条項については、

借主としては、認めなければ、契約できない可能性が強くなります。

 

一般的な傾向として、空室が出てもすぐに借主が見つかるような

条件のよい物件の家主は強気ですので、

借主から「不利な条項を削除してくれ」と申し出ても、

「無理に契約してもらわなくて結構。

他にいくらでも借りたいという人がいるから」という

答えが帰ってくるのがオチでしょう。

 

従って、「借主に一方的に不利な条項がある」場合、

「不利を承知でも契約したい」のか、

「納得できなければ契約しない」のかをはっきりさせた上で、

家主(仲介業者)との交渉に臨まなければなりません。

重要事項説明書7

重要事項説明書の記載内容が実際とは異なっていたので、

業者に「契約を解除したい」と言ったが、

「申し訳ない」というだけで埒があかない。

 

(回答)

 

重要事項説明書の記載内容は、

契約するかどうかを判断する上で重要となる内容を説明したものですから、

記載内容自体が間違っているという場合は、

業者として、何らかの責任を負わなければなりません。

 

「記載自体が間違っている」場合の原因としては、

家主が業者に提供した情報自体が間違っていたケース、

業者が過失で記入間違いしたケース、

業者が故意に記載内容を変更したケースなどが考えられますが、

はっきりさせなければならないのは、

もし、「記載内容が間違っていなければ契約したかどうか?」です。

 

たとえば、遮音構造を物件選びの際に重視していた人が、

鉄筋コンクリート造だと説明されていたものが、

実際には鉄骨造だった場合などは、

業者は、単に「すみません」では責任をおったことにはならず、

契約解除する場合の損害をすべて負うべきでしょう。

 

しかし、建築年が1・2年事実と異なっていたというようなケースや

全体の部屋数が少し食い違っていたというようなケースでは、

契約するかしないかにほとんど影響はなかったはずですので、

損害賠償まで求めるのは無理でしょう。

 

従って、ご質問のケースでは、業者に対して物件探しの際に

重視するポイントとして説明していた事項が

間違っていたのかどうかがポイントとなり、

業者に対する責任追及の内容もおのずと異なってくるものと思います。

重要事項説明6

近くに迷惑施設があったのに説明がなかったが、

不動産業者は、「重要事項として説明する項目ではない」と言うが納得できない

 

(回答)

 

宅建業法第35条1項によれば、重要事項として説明すべき事項として、

登記簿上の権利関係、法律に基づく制限、水道ガス電気などの整備状況、

賃料のほかかかる費用についてなど、さまざまな事項について、

法律で「必ず説明すべき事項」として定められています。

 

不動産業者は、法律上明記された項目の中に、

「迷惑施設うんぬんという言葉がない」ということで、

説明しなくてもよいと考えているのかもしれませんが、法律をよく見ると、

第47条1項に「重要な事項の告知義務」を定めているのです。

 

これは、35条の法律上、具体的に明記されている事項以外でも、

契約するかどうかを判断するときに大きな材料となる事項については、

「重要な事項」として、必ず説明しなければならないとされているのです。

 

たとえば、過去に、自殺や火災などがあった物件については、

35条の「重要事項」ではありませんが、47条の「重要な事項」にあたるため、

必ず説明する必要があるのです。

 

そこで、「迷惑施設」といってもいろいろなものが考えられますが、

その中身と距離がどの程度であったかによって、

「契約するかどうかの判断材料として重要なポイントになるかどうか」が問題となります。

 

この点で、業者の言い分が正しかったかどうかを見極める必要があるでしょう。

「契約の履行に着手」とは

解約手付は、家主にも借主にも契約を解除する権利を保障していますが、

いつまでも、契約解除が可能だとすると

大きなトラブルが発生する可能性があります。

そこで、解約手付で解約することができる期限を

「契約の履行に着手するまで」としているのです。



この「契約の履行に着手」というのは、判例で、

「客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、

または履行の提供をするために不可欠の前提行為をなすこと。

 ただし、自らが履行に着手したに過ぎない場合は

相手方が履行に着手しない限り解除できる。」としています。

そして、契約の相手方が契約の履行に着手するまでは、

解約手付で契約の解除が可能とされています。



さらに、「契約の履行に着手」することと

「契約の履行の準備」とは異なるとされており、

「契約の履行に着手」は、厳密に考えられています。



具体的な例で考えましょう。



家主にとっての「契約の履行に着手」は、借主へのカギ渡しがわかりやすい例です。

借主にとっての「契約の履行に着手」は、契約金の残金をすべて振りこむなど、

もはや後戻りができない状態になったような場合です。



家主が、借主に貸すために、物件のクリーニングを行ったり、

内装の張替えなどを行ったりすることは、「契約の履行の着手」ではなく、

「契約の履行の準備」行為と考えられています。



というのは、クリーニングや内装の張替えそのものは、

借主との契約がなかったとしても、前の入居者の退去後に行うことが多く、

借主との契約の履行とは直接結びついているとはいえないからです



家主は、借主が契約金のすべてを振り込んだ後は、

手付金の倍返しでは契約解除ができず、

借主は、家主からカギを受け取った後は、

手付金の放棄での契約解除はできないということです。



しかし、これらだけが、「契約の履行に着手」として考えると、

家主に非常に不利になる可能性があります。

つまり、借主が契約金をすべて支払えば、

家主は手付金での解約はできないのに対して、

家主からカギを受け取る直前まで、

借主は手付金の放棄だけで契約を解除することができるからです。



そうすると、家主は、1年間、空室のまま残しておくリスクが非常に大きくなるのです。

これでは、法的な公平性があるとは言えません。

そこで、家主・借主の双方とも、もはや後戻りができない状態になったときには、

「契約の履行に着手」したと考えるべきだと思います。



具体的に言えば、借主が契約金の残金をすべて支払った後は、

家主も借主も、手付金での解約はできず、

自己都合で解約する場合には、相手に対する

損害賠償の責任が生じると考えるのです。



家主については、判例などから、手付け解約できないのは明らかですが、

借主の場合にも、「契約の相手方」ではなく、

「当事者の一方」が契約の履行に着手したということで、

手付け解約ができないと判断し、万が一、

借主が契約を解除する場合には、敷金等は別として、

礼金等は違約金として没収されても仕方ないと考えるべきでしょう



なお、いずれにしても、この点については、判例等で

明確な判断がなされていないため、現場レベルで、どのような解釈を行うのが

合理的で公平性を持つものなのかを考えて判断することになります