手付金3

(質問)

手付金を業者に支払い契約したが、もっとよい物件がないかと探していたら
1時間後にもっとよい条件の物件が見つかった。
そこで、手付金を支払った業者に連絡して解約を申し入れたが、
「手付金は没収する」と言われた。たった1時間なので納得できないのだが‥。

(回答)

家主に直接手付金を納めた場合には、キャンセルするには手付金の放棄が必要ですが、
仲介業者の場合には、家主の代理権を得ていたかどうかが、
ひとつの判断ポイントになります。

家主からの代理権を得ずに(家主からの委任状を提示せずに)
手付金を支払っていたような場合であれば、
仲介業者には、手付金を受け取る権利はありませんから、
たとえ、業者が「手付金である」と呼んでいたとしても、
本来は、預かり金でしかありませんから、
キャンセルすれば返還されなければなりません。

従って、仲介業者に、「家主の代理権を証明する文書も見ていないので、
手付金を受領する代理権はないはずである。
つまり、本来、手付金としては受領できないはずなので、
支払ったお金は法的には単なる預かり金であるため、
キャンセルする場合には返還しなければならない」と主張できます。

手付金2

(質問)

高額の手付金を請求されたが従わざるを得ないのか?
(回答)

賃貸借契約の手付金としては、通常、家賃の1か月分が相場です。
それよりもはるかに高額な手付金を要求するような場合には、
何か、問題点を隠している場合が少なくないと思います。

つまり、発覚すればキャンセルしたくなるような問題点があり、
もし、借主が見つけた場合、キャンセルするには手付金の放棄が必要となるので、
高額な手付金を取っていたほうがキャンセルしにくくなるからです。

このようなケースでは、手付金を相場にしてもらうだけでなく、
手付金の支払い前に、問題点が隠されていないかどうか、
もっと調査しておいたほうがよいと思います。

1Rと1Kはほぼ同じ?DKとLDKは何が違う?

●1Rと1Kの違いは?

1Rと1Kの場合、「居室部分を分ける『扉』があるかないか」です。
部屋に居室を仕切る扉を付けたら1Kとなるのです。

●DKとLDKの違いは?

次に、2DKや2LDKなどの表記にある「DK」と「LDK」の違いは。

もちろん、「L」はリビング(居間)、「D」はダイニング(食堂)、
「K」はキッチン(台所)の略。すなわち、
「DK」はダイニングとキッチン(食堂兼台所)、
「LDK」はリビングダイニングとキッチン(居間兼食堂と台所)です。
なぜならば、2011年11月まで、DKとLDKを区分けする
明確な基準は決められていませんでした。

それまでは、ただ漠然と「広いとLDKで、狭いとDK」といった具合で、
公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会から
「DK(ダイニング・キッチン)及びLDK(リビング・ダイニング・キッチン)の
広さ(畳数)の目安となる指導基準」が発表され、
一定の基準が設けられました。

その基準によると、次のように定められています。

【居室が1つの場合】
・4.5畳以上8畳未満は「DK」と表示
・8畳以上で「LDK」と表示

【居室が2つ以上の場合】
・6畳以上10畳未満は「DK」と表示
・10畳以上は「LDK」と表示

※1畳=1.62平方メートル以上

なお、この基準には示されていませんが、居室が1つの場合で、
DKに当たる部分が4.5畳未満は「K」(つまり「1K」)表示になります。

同様に、居室が2つ以上の場合も、「DK」に当たる部分が
6畳未満であれば「K」(「2K」など)表示になります。

従って、2DKと2LDKを具体的に説明すると、
キッチンやトイレ、風呂などの水回りとは別に部屋が2つあり、
キッチンとダイニングを合わせて6畳以上10畳未満なら2DK、
同じく10畳以上なら2LDKとなります。

しかし、この基準はまだ不動産業界の隅々にまで行き届いているとはいえず、
不動産情報サイトなどでも正確に表記されていないこともありますので、
目安として覚えておいてください。

入居申込書2

(質問)

本人が高齢のため入居を拒否されたが、何とかならないか?

(回答)

平成13年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が制定され、
高齢者の入居を拒否しない賃貸住宅の登録・閲覧制度や
終身借家制度などが誕生し、高齢者に対する一定の保護が前進しましたが、
いまだに「高齢」を理由とした入居の拒否があとを絶ちません。

現状では、家主の「良心」に委ねるほかなく、
強制的に、入居を認めさせることはできません。
家主を説得したい場合には、行政の窓口で相談し、
家主への説得を行ってもらうという方法も考えられますが、
根本的には、上記の法律で登録された高齢者の入居を
拒否しない賃貸住宅を探すことだと思います。

入居申込書1

(質問)

入居申込書に書いた内容で入居を拒否されたが、何とかならないか?

(回答)

契約するためには、借主からの「申し込み」に対して、
家主による「承諾」が必要ですが、
家主が承諾しない場合には、契約が成立しません。

日本以外の先進国では、性別・人種・国籍の差別や
その他の合理的な理由がないのに、
入居を断るような場合、民間の家主であっても法律で罰せられる
というケースが少なくありませんが、
日本では、「契約自由の原則」が幅を利かせすぎているのです。

家主が承諾しない理由にはいろいろと考えられますが、
家主には、入居拒否の理由を説明する義務もありませんし、
家主が入居を認めない以上、何ともすることもできないのが現実なのです。

契約書5

(質問)

契約書の内容を見ていたら、「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」となっていた。
そういう契約内容は不当だと思うのだが、削除を求めるべきか、
それとも、法的に認められないと思うので無視して契約したほうがよいのか?

(回答)

「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」という合理的な根拠はあるのでしょうか?
万が一、そういう根拠があれば、「不当な契約」とは言えません。
しかし、ふつうは、「更新ごとの自動値上げ」を行うような合理的な根拠はないと思います。

そういう場合には、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」
に該当しますので、契約内容そのものが無効となります。

できれば、最初から削除してもらうほうがよいと思いますが、あまり強い交渉を行うと、
契約そのものができなくなる(家主が契約を拒否する)可能性もあります。

入居を優先したいのであれば、あまりに強い要求は避けたほうがよいでしょうが、
その代わり、契約更新時には交渉を行う必要があります。
どちらがよいとは一概に言えませんが、最終的には、借主の判断次第となります。

契約書4

(質問)

仲介業者で受け取った契約書内容と管理会社から送られてきた契約書の
内容が異なるのだが、どちらが正しいのか?

(回答)

仲介業者が、本来、管理会社が指定する契約書を使用すべきところを、
自社で使用している契約書を間違って使用したことが原因だと思います。
そうだとすれば、正しい契約書は、管理会社が用意したものとなります。

そこで、万一、管理会社が用意した契約書の内容と
仲介業者で受け取った契約書の内容が大幅に異なり、
仲介業者で受け取った契約内容だったから契約したという場合には、
仲介業者に対して、損害賠償を行うことが可能となるでしょう。

契約書7

(質問)

契約書の内容を見ていたら、「家主が物件を必要とする場合には、
即刻退去するものとする」となっていた。そういう契約内容は不当だと思うのだが、
削除を求めるべきか、それとも、法的に認められないと思うので
無視して契約したほうがよいのか?

(回答)

家主からの退去が認められるケースは、非常に限定されています。
家主が、単に、「物件を必要とする」だけで、退去が認められることはありませんので、
このような規定は、借地借家法の強行規定に違反するものであり、無効となります。

契約時に削除を求めてもよいですが、あまりに強く要求すると、
家主から契約そのものを拒否されてしまう可能性もあります。
そこで、あまり神経質にならずに、そのまま契約してもよいと思います。

そして、万が一、家主から退去を求められた場合に、
「契約内容の無効」を主張すればよいでしょう。

契約書6

(質問)

契約書の内容を見ていたら、「家賃の支払いを1日でも遅延した場合には、
即刻退去するものとする」となっていた。そういう契約内容は不当だと思うのだが、
削除を求めるべきか、それとも、法的に認められないと思うので
無視して契約したほうがよいのか?

(回答)

このような規定は、単なる脅しに過ぎません。
法的にも認められていません。家主としては、家賃の滞納を恐れるあまり、
このような規定を設けているのでしょうが、認められません。
家主として契約を解除するには、借主との間で信頼関係が
なくなるような事態が前提となります。

家賃の滞納で言えば、判例では、6ヶ月程度以上の滞納があれば、
「信頼関係がなくなった」とみなされているようです。

賃料減額しない旨の特約があっても借主の減額請求権が認められた事例

<賃料減額しない旨の特約があっても借主の減額請求権が認められた事例>

建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、
賃料を減額しない旨の特約があっても、
賃借人から借地借家法第11条の規定に基づく賃料減額請求権の行使が
認められた事例 (最高裁平成16年6月29日判決、判例時報1868号52頁)

(事案の概要)

本件土地賃貸借契約は、「3年ごとに賃料の改定を行うものとし、
改定後の賃料は従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ、
公租公課の増減額を加除した額とするが、
消費者物価指数が降下しても賃料を減額することはない」旨の特約が付されていた。

これまで、本件土地の賃料は、本件特約に従って3年ごとに改定されてきたが、
賃借人は、「その後土地の価格が4分の1程度に下落したことなどに照らして
現在の賃料額は高すぎる」と主張して、賃貸人に対して賃料の減額を請求し、
減額後の賃料額の確認を求めて本件訴訟を提起した。

これに対し、原審の大阪高等裁判所は、「本件のような賃料の改定特約は、
賃料の改定をめぐって当事者間に生じがちな紛争を事前に回避するために、
改定の時期、賃料額の決定方法を定めておくものであり、本件特約は、
消費者物価指数という客観的な数値であって賃料に影響を与えやすい要素を
決定基準とするものであるから有効である。

したがって、本件特約に基づかない賃借人らの賃料減額請求の
意思表示の効力を認めることはできない」として賃借人の請求を棄却した。

そこで、賃借人は、原判決を不服として、最高裁に上告受理の申立てを行った。

(判決)

最高裁は、上告受理の申立てを受理し、『本件土地賃貸借契約においては、
消費者物価指数が降下したとしても賃料を減額しない旨の特約が存する。
しかし、しかし、借地借家法第11条1項の規定は、強行法規であって、
本件特約によってその適用を排除することができないものである。

したがって、賃貸借契約の当事者は、本件特約が存することにより
借地借家法第11条1項の規定に基づく賃料減額請求権の行使を
妨げられるものではないと解すべきである。』と判示した。

(短評)

本件は、賃料改定特約がある場合に、
特約に基づく請求ではなく(本件では「減額することはないとの定め」が
あるためその余地はないが)、借地借家法第11条に基づく賃料減額請求が
できるかがあらそわれた事案であるが、特約によっても減額請求を制限することは
できないとのこれまでの最高裁判例を確認したものである。

本判決は、賃料の減額をしない特約が明らかに存する場合においても、
賃借人からの賃料減額請求が認められた点において事例的な意義がある。