契約期間中の途中解約1

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「来月退去する」と言ったところ、
「途中解約するには、退去予定月の6ヶ月前までに連絡することになっている。
どうしても来月退去するなら、5か月分の違約金を支払ってもらう」と言ってきた。
びっくりして契約内容を確認したところ、確かに、
「6ヶ月前までに通知すること」となっていた。
次の物件への引越し代も必要なので違約金まで支払いたくないが、支払う義務はあるのか?

(回答)

前項とほとんど同じ内容に見えますが、違うのは、「6ヶ月前までに連絡する」というところです。
契約期間を定めた契約において、借主の途中解約権という特約を定めた場合には、
その特約が有効となります。

したがって、「6ヶ月前までの連絡」も有効と考えられるのですが、
一方で、民法第617条では、契約期間を定めない契約の場合には、
「3ヶ月前までの通告」でよしとしていますので、3ヶ月を超える部分については、
消費者契約法に言うところの、
「消費者の利益を一方的に害する条項」と判断される可能性が大きいと思われます。

しかし、「消費者契約法違反として特約は無効である」と判断されてしまうと、
今度は、契約期間終了までの家賃支払い義務が出てきてしまうという可能性もなくはないのです。

そこで、借主としては、下手に法的手段を講じるのではなく、
家主との妥協点を探るように交渉しながら、「一般的には3ヶ月前までの通告なら有効なので、
違約金は2か月分に抑えてもらえないか」というような妥協案を出したほうがよいと思います。

契約期間中の途中解約2

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「来月退去する」と言ったところ、
「途中解約するには、退去予定月の3ヶ月前までに連絡することになっている。
どうしても来月退去するなら、2か月分の違約金を支払ってもらう」と言ってきた。
びっくりして契約内容を確認したところ、確かに、「3ヶ月前までに通知すること」となっていた。
次の物件への引越し代も必要なので違約金まで支払いたくないが、支払う義務はあるのか?

(回答)

契約期間を定めた契約で、かつ、契約期間中の途中解約権を特約として認めた契約ですが、
解約通知時期については、特約として自由に定めることができます。
そこで、解約通知時期を見ると、「3ヶ月前までに通知する」となっており、
この規定は、契約期間を定めない場合における通知時期と同じですので、
法的にも何ら問題ないものとみなされます。
したがって、この特約は有効となりますので、
家主の言うとおりの違約金を支払わなければならないのです。

造作買取請求権

エアコン取付時100Wを200Wに変更、取付時は説明もなく変更に貸主合意。
退去前になって100Wに戻すように言われた。

取付時は説明なく合意したのに退去前になっての消費者負担請求は
消費者の義務を加重し、その利益を一方的に害するものに当たらないのでしょうか?

賃借人がもっぱら自分の都合で自己使用の都合上、有益な改良として
物件自体の増加した限度でその改良に応じた有益費の支払いとして請求できないでしょうか?

(回答)

これは造作買取請求権についての問題です。
賃貸借契約書に造作買取請求権を行使しないとの特約の有無の確認が必要です。
設備増強で、かえって利便性を高めており、それをわざわざ元に戻すことの合理性はないとの考えもあります。

例としてですが、UR都市機構では入居者が電気容量を増設した場合、原状回復は免除しています。
電気容量の増設は、造作としての概念で、有益費には該当しません。

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一般的な説明ですが。

1.造作

まず、問題となるのは、借地借家法にいう造作の意味・範囲です。
造作とは、「貸主の同意を得て(賃借人が)建物に付加した畳、建具その他の造作」のことをいいますが、
講学的には建物に付加され、建物の使用に客観的便益を与えるものと解されています。
したがって、家具は建物に付加されているわけではありませんので、造作には含まれません。

具体的には、畳、建具(障子、ふすま、雨戸)のほか、作りつけの戸棚、
エアコンなどの電気設備、ガス設備、水道設備、物干し台、商店の陳列棚などがあります。
ただし、トイレを水洗式にした(あるいは和式を様式にした)場合などのように建物に付加したものが
建物の一部となってしまった場合には、造作には含まれず、有益費の問題となります。
2.家主の同意があること

造作は家主の同意を得て造作を取り付けたことが必要です。
3.賃貸借契約が期間の満了、また解約の申し入れによって終了したこと

借家人に家賃の不払いその他の契約違反があるために、賃貸借契約が解除された場合には、
造作買取請求権は認められません。
造作買取請求権はあくまで「善良な借家人の保護」を目的としているからです。

4.賃貸借契約書に造作買取請求権排除の特約がないこと

造作買取請求権に関する規定は任意規定(当事者間の契約の方が優先される)です。
したがって、特約で排除(家主が造作を買い取らなくてもよい)されている場合には、
造作買取請求権を行使することはできません。
なお、市販の賃貸借契約書などでは、「造作買取請求権は行使しない」という
特約が入っていることが多いようです。

★UR都市機構の例
入居者が電気容量を増設した場合、原状回復は免除しています。
http://www.ur-net.go.jp/kyojyusha/report/moyougae-koumoku.html

契約期間中の途中解約3

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「来月退去する」と言ったところ、
「契約期間の途中では解約できないという契約内容だ。
どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってほしい」と言ってきた。
びっくりして契約内容を確認したところ、確かに、途中解約に関する事項はなかった。
無茶苦茶な要求だと思うが、支払う義務はあるのか?

(回答)

「契約」とは、契約を交わした双方が、お互いにその内容を守ることです。
契約期間を決めて、その間は、借主は家賃を支払い、
家主は物件を引き渡すという約束をした以上、どちらも、
自分の勝手な都合で約束を反故にすることはできないというのが原則です。

ところが、民法第618条では、契約期間を定めた契約の場合には、
「その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは」、
つまり、解約するという特約を交わした場合には、
契約期間中の途中解約を認めるようにしています。
逆に言えば、契約期間中の途中解約という特約のない契約である場合には、
原則に戻って、途中解約することができないということになるのです。

一般的には、途中解約特約のある契約が多いのですが、
だからといって、すべての契約に特約があるというわけではなく、
特約のない契約においては、原則通りの対応となるのです。
したがって、家主の主張が、「無茶苦茶」というわけではありません。
交渉がうまくいかない場合には、契約期間終了まで住み続けるか、
契約期間終了までの家賃を支払うかの選択をすることになるでしょう。

なお、消費者契約法が施行された2001年4月以降に契約したものであれば、
契約期間がまだ始まったばかりという時期で違約金があまりにも多額になり、
借主の退去理由の正当性が認められる可能性が高いという場合には、
少額訴訟において、「消費者の利益を一方的に害する」と主張すれば、
借主の主張がある程度認められるかもしれません。

契約期間中の途中解約2

賃貸借契約に明記されている通りに退去を申し出たところ、
「学生の入居時期からはずれているので、
今すぐ退去するか損失となる半年分の家賃を支払え」と言われた。
このような場合、家主の主張に従わざるを得ないのか?

(回答)
賃貸契約書に、契約期間中の途中解約条項があり、その時期が1ヶ月前であれば、
その時期までに通告すれば、何のペナルティーもなく契約解除できます。
もともと、契約期間を定めた賃貸借契約では、
「途中解約条項」を定めるかどうかは任意なのです。
もし、「途中解約条項」がなければ、契約期間が終わるまで家賃を支払う義務があります。

一方、家主が任意規定である「途中解約条項」を契約書の中に入れれば、
借主が承諾して契約が成立しているわけですし、もともと、契約書の内容を定めた家主は、
自ら約束した事項を守るのは当然のことです。
確かに、「学生の入居時期からズレている」という家主の主張には同情できる余地はありますが、
だからといって、自ら決めた約束を反故にすることはできるわけがありません。

契約期間中の途中解約1

「学生専用マンション」に住んでいるが、契約途中で解約を申し入れたところ、
家主から、「途中解約はできないので契約期間終了までの家賃を支払え」と言われた。
確かに、契約書には、そのように記載されているが、
これは消費者契約法に反する条項なので無効ではないか?

(回答)

「途中解約条項」のない契約そのものは有効ですので、
家主の主張そのものが間違っているわけではありません。
特に、「学生専用マンション」などの場合、契約期間の途中で解約されてしまうと、
翌年の4月まで空室のままで置いておかなければならないケースが多いからです。
したがって、その物件の所在地が、学校等の近隣にあり、学生専用マンションであるなら、
家主の主張が不当ということは言えないのです。

これが、一般社会人向きの物件であったとすれば、学生専用物件のような問題は少ないため、
消費者契約法に違反する可能性が強いと言えるでしょう。
そこで、途中解約する理由を明確にし、その理由が、入居者のわがままに起因するものではなく、
「親が失業し、学校そのものを退学せざるを得なくなった」というような
やむを得ない事情であるのであれば、家主に対して、
やむを得ない事情を理解してもらうように交渉しなければならないでしょう。

入居者が転落死した賃貸住宅の家主に賠償命令

<入居者が転落死した賃貸住宅の家主に賠償命令>

福岡高等裁判所は、入居者が窓から転落死した賃貸住宅の家主に、
約350万円の損害賠償を命じる判決を下した。窓に手すりがないのは瑕疵であり、
家主が窓に手すりを設置しなかったのは安全配慮義務違反だと訴え
入居者の遺族の主張を認めた。遺族も家主も上告せず、4月4日に判決は確定した。

事故が起こった賃貸住宅は、1973年に完成した木造2階建ての建物だ。
入居者は50歳の女性で、2002年11月、2階で窓の外に洗濯物を干していたとき転落死した。
洗濯物を干すには物干し竿まで身を乗り出す必要があったが、窓に手すりはなかった。
福岡高裁は判決で、窓には民法上の瑕疵があったと認定した。
さらに、家主が入居者の洗濯物の干し方を知りながら手すりを設置しなかったことは、
入居者に対する安全配慮義務に違反すると判断した。

その一方で福岡高裁は、入居者にも過失があったことを理由に、
家主が支払う損害賠償の金額を請求額の1割に抑えた。
身を乗り出さないと洗濯物を干せなかったそもそもの原因は、
竿を受ける金具の不具合だ。にもかかわらず、入居者が金具を修理したり、
不具合を家主に訴えたりしなかったことは、転落死事故の発生に大きく影響したと判断した。
家主側は、窓の腰壁の高さが床から約73cmあることを理由に、
手すりはなくても窓は安全だと主張していた。

福岡高裁は判決で、建築基準法は窓の腰壁の高さを規定していないものの、
建設業界には一般に65~85cmの高さならば安全と見なす考えがあると指摘した。
この考えに基づいて約73cmという高さ自体の危険性は否定したが、
窓から日常的に身を乗り出す入居者のためには手すりが必要だったと結論付けた。
05年に福岡地方裁判所小倉支部が下した一審判決は、
住宅の完成から30年近く転落事故がなかったことなどを理由に、
入居者の遺族の訴えを棄却した。そのため遺族側が控訴していた。

賃借権の相続4

賃借権の相続>(4)

(質問)

民間アパートに住んでいた父(借主・別居中)がなくなった。条件のよい物件であり、
遺産相続として引き継ぐことになったが、家主から、名義変更料を請求された。
支払いに応じなければならないか?

(回答)

賃借権は相続することができます。
相続権を行使することによって賃借人になることができるのですから、
家主の承諾も不要です。
つまり、名義変更料や他の名目であっても、
家主からの費用請求に応じる義務はないと考えます。

賃借権の相続3

公営住宅に住んでいた父(借主・別居中)がなくなった。
条件のよい物件であり、遺産相続として引き継ぎたいが、
名義変更を家主から拒否された。賃借権を相続することはできないか?

(回答)

前回で述べたように、賃借権は相続財産です。
したがって、相続人として、賃借権を引き継いで住むことができるのがふつうです。
ところが、公営住宅の場合は、ちょっと事情が異なります。

つまり、公営住宅は、経済的に困難な人たちに住む権利を保障するために
用意されているものですが、公営住宅にも相続権を認めた場合には、
例えば、高額所得者の相続人にも公営住宅に住むことができるようになってしまい、
本来の入居資格に合致しない人も入居できてしまうという不都合が発生してしまいます。

そこで、公営住宅においては、一般の賃借権の相続とは異なり、
相続権を認めないという解釈がされているのです。

テナント入居時のトラブル

「保証金」と「敷金」は法的に同じものか、違いはあるか?

保証金をめぐってのトラブルも数多い。
なぜなら、保証金の法的な性質がななり曖昧であるためです。

「敷金」というのは、借主の家賃やその他の借主側の債務を担保するために
支払われる金銭です。敷金は契約が終了して明渡をした時点で、
賃料の滞納分や借主が支払わなければならない何らかの金銭のすべてを差し引いて、
残金があれば借主に返還されなければなりません。

オーナーは家賃の滞納などがあった場合、当然敷金から差し引くことができます。
賃借人の債務を敷金から差し引いて残高があれば、
賃借人に返却すればそれで良いのです。

その敷金を第三者から差し押さえられたり、
債権譲渡されたりしても、もともと敷金というのは
貸主の債権を担保するために預かっているお金であるため、
最優先で貸主の債権を敷金から差し引くことができます。
このように敷金についてはその定義が明確になっています。
敷金に対して、第三者が債権譲渡などを主張してきても
何も恐れる必要はありません。

問題は保証金です。保証金も預り金と考えるのが一般的です。
ところが、保証金は敷金と同じ性質のものではありません。
ビルの大小、契約の形態などで、それぞれ保証金の扱いが
異なってくるからです。 また、地域によっても違いがあります。

保証金の性質は敷金のように明確でないために、
保証金をめぐってのトラブルは非常に発生しやすい。
確かに保証金も敷金と同じように、貸主の債権担保のために
預かるお金という意味合いも持ちます。
ところが、それと当時に、借主が貸主に対してお金を貸し付けるという
金銭の消費貸借の性格もあります。
つまり、借主が貸主に金銭を貸しているとも考えられるのです。

敷金はせいぜい賃料の数ヶ月分である。
多額の敷金でも、20ヶ月分でしょう。
敷金を預かっても建築費用の捻出はできません。
そこで建設協力金という言葉が使われて、
建設協力金として保証金を差し入れるようになったのです。

保証金を賃貸借契約書の中に含むケースもあるし、
金銭消費貸借という全く別個の契約として
借手のテナントが家主にお金を渡すこともあります。

保証金は権利金と異なり、将来的に返還義務が伴うのが常識です。
ただし、各情況によって保証金の取り扱いは異なります。