賃借権の相続2

民間アパートに住んでいた父(借主・別居中)がなくなった。
条件のよい物件であり、遺産相続として引き継ぎたいが、
名義変更を家主から拒否された。
賃借権を相続することはできないか?

(回答)

前項で述べたように、賃借権は相続することができますが、
相続人が同居していたか別居していたかは問いません。
したがって、家主の意向に拘わらず、
相続人は賃借権を相続することができ、住む権利を持つのです。

賃借権の相続1

民間アパートに住んでいた父(借主・同居中)がなくなったので、
家主に、名義変更してそのまま住みたいと申し出たが拒否された。
退去せざるを得ないのか?

(回答)

民法では、6親等以内の血族と配偶者、3親等以内の姻族を
法律上の親族としていますので、
子供として、お父さんの財産の相続権があります。
お父さんが借主となって、民間アパートを借りていたわけですので、
子供は、住む権利(賃借権)を相続することができます。

相続権については、家主の承諾を得る必要はまったくありませんので、
家主は、相続人(子供)の住む権利を拒否することはできないことになっています。
名義変更そのものについては、してもしなくても住み続けることができますが、
契約更新の時点で名義変更を行ったほうがよいでしょう。

原状回復特約に対する最高裁判決(2005年12月16日)

最高裁判決

判例 平成17年12月16日 第二小法廷判決 平成16年(受)第1573号 敷金返還請求事件

要旨:
賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の
特約が成立していないとされた事例
内容:
件名   敷金返還請求事件

(最高裁判所 平成16年(受)第1573号 平成17年12月16日 第二小法廷判決 破棄差戻し)
原審   大阪高等裁判所 (平成15年(ネ)第2559号)

主    文
原判決を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理    由

上告代理人岡本英子ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

(1) 被上告人は,地方住宅供給公社法に基づき設立された法人である。

(2) 第1審判決別紙物件目録記載の物件(以下「本件住宅」という。)が
属する共同住宅旭エルフ団地1棟(以下「本件共同住宅」という。)は,
特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(以下「法」という。)2条の認定を受けた
供給計画に基づき建設された特定優良賃貸住宅であり,
被上告人がこれを一括して借り上げ,各住宅部分を賃貸している。

(3) 被上告人は,平成9年12月8日,本件共同住宅の入居説明会を開催した。
同説明会においては,参加者に対し,本件共同住宅の各住宅部分についての賃貸借契約書,
補修費用の負担基準等についての説明が記載された「すまいのしおり」と題する書面等が配布され,
約1時間半の時間をかけて,被上告人の担当者から,
特定優良賃貸住宅や賃貸借契約書の条項のうち重要なものについての説明等がされたほか,
退去時の補修費用について,賃貸借契約書の別紙
「大阪府特定優良賃貸住宅and・youシステム住宅修繕費負担区分表(一)」の
「5.退去跡補修費等負担基準」(以下「本件負担区分表」という。)に基づいて負担することになる旨の
説明がされたが,本件負担区分表の個々の項目についての説明はされなかった。
上告人は,自分の代わりに妻の母親を上記説明会に出席させた。
同人は,被上告人の担当者の説明等を最後まで聞き,配布された書類を全部持ち帰り,上告人に交付した。

(4) 上告人は,平成10年2月1日,被上告人との間で,
本件住宅を賃料月額11万7900円で賃借する旨の賃貸借契約を締結し
(以下,この契約を「本件契約」,これに係る契約書を「本件契約書」という。),
その引渡しを受ける一方,同日,被上告人に対し,本件契約における敷金約定に基づき,
敷金35万3700円(以下「本件敷金」という。)を交付した。
なお,上告人は,本件契約を締結した際,
本件負担区分表の内容を理解している旨を記載した書面を提出している。

(5) 本件契約書22条2項は,賃借人が住宅を明け渡すときは,
住宅内外に存する賃借人又は同居者の所有するすべての物件を撤去してこれを原状に復するものとし,
本件負担区分表に基づき補修費用を被上告人の指示により負担しなければならない旨を定めている
(以下,この約定を「本件補修約定」という。)。

(6) 本件負担区分表は,補修の対象物を記載する「項目」欄,
当該対象物についての補修を要する状況等(以下「要補修状況」という。)を記載する
「基準になる状況」欄,補修方法等を記載する「施工方法」欄及び補修費用の負担者を記載する
「負担基準」欄から成る一覧表によって補修費用の負担基準を定めている。
このうち,「襖紙・障子紙」の項目についての要補修状況は
「汚損(手垢の汚れ,タバコの煤けなど生活することによる変色を含む)・汚れ」,
「各種床仕上材」の項目についての要補修状況は「生活することによる変色・汚損・破損と認められるもの」,
「各種壁・天井等仕上材」の項目についての要補修状況は「生活することによる変色・汚損・破損」というものであり,
いずれも退去者が補修費用を負担するものとしている。
また,本件負担区分表には,「破損」とは「こわれていたむこと。また,こわしていためること。」,
「汚損」とは「よごれていること。または,よごして傷つけること。」であるとの説明がされている。

(7) 上告人は,平成13年4月30日,本件契約を解約し,被上告人に対し,
本件住宅を明け渡した。被上告人は,上告人に対し,本件敷金から本件住宅の補修費用として
通常の使用に伴う損耗(以下「通常損耗」という。)についての補修費用を含む
30万2547円を差し引いた残額5万1153円を返還した。
2 本件は,上告人が,被上告人に対し,被上告人に差し入れていた本件敷金のうち
未返還分30万2547円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案であり,
争点となったのは,
1 本件契約における本件補修約定は,上告人が本件住宅の通常損耗に係る
補修費用を負担する内容のものか,
2 1が肯定される場合,本件補修約定のうち通常損耗に係る補修費用を
上告人が負担することを定める部分は,法3条6号,特定優良賃貸住宅の供給の促進に
関する法律施行規則13条等の趣旨に反して賃借人に不当な負担となる賃貸条件を
定めるものとして公序良俗に反する無効なものか,
3 本件補修約定に基づき上告人が負担すべき本件住宅の補修箇所及び
その補修費用の額の諸点である。
3 原審は,前記事実関係の下において,上記2の1の点については,これを肯定し,
同2の点については,これを否定し,同2の点については,上告人が負担すべきものとして
本件敷金から控除された補修費用に係る補修箇所は本件負担区分表に定める基準に合致し,
その補修費用の額も相当であるとして,上告人の請求を棄却すべきものとした。
以上の原審の判断のうち,同1の点に関する判断の概要は,次のとおりである。

(1) 賃借人が賃貸借契約終了により負担する賃借物件の原状回復義務には,
特約のない限り,通常損耗に係るものは含まれず,その補修費用は,賃貸人が負担すべきであるが,
これと異なる特約を設けることは,契約自由の原則から認められる。

(2) 本件負担区分表は,本件契約書の一部を成すものであり,その内容は明確であること,
本件負担区分表は,上記1(6)記載の補修の対象物について,
通常損耗ということができる損耗に係る補修費用も退去者が負担するものとしていること,
上告人は,本件負担区分表の内容を理解した旨の書面を提出して
本件契約を締結していることなどからすると,本件補修約定は,
本件住宅の通常損耗に係る補修費用の一部について,本件負担区分表に従って
上告人が負担することを定めたものであり,
上告人と被上告人との間には,これを内容とする本件契約が成立している。
4 しかしながら,上記2の1の点に関する原審の上記判断のうち(2)は是認することができない。

その理由は,次のとおりである。

(1) 賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,
賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,
賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,
賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。
それゆえ,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に
生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,
通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませて
その支払を受けることにより行われている。

そうすると,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての
原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,
賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる
通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,
仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,
賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,
その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要である
と解するのが相当である。

(2) これを本件についてみると,本件契約における原状回復に関する約定を定めているのは
本件契約書22条2項であるが,その内容は上記1(5)に記載のとおりであるというのであり,
同項自体において通常損耗補修特約の内容が具体的に明記されているということはできない。
また,同項において引用されている本件負担区分表についても,その内容は上記1(6)に
記載のとおりであるというのであり,要補修状況を記載した「基準になる状況」欄の文言自体からは,
通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえない。
したがって,本件契約書には,通常損耗補修特約の成立が認められるために
必要なその内容を具体的に明記した条項はないといわざるを得ない。
被上告人は,本件契約を締結する前に,本件共同住宅の入居説明会を行っているが,
その際の原状回復に関する説明内容は上記1(3)に記載のとおりであったというのであるから,
上記説明会においても,通常損耗補修特約の内容を明らかにする説明はなかったといわざるを得ない。
そうすると,上告人は,本件契約を締結するに当たり,通常損耗補修特約を認識し,
これを合意の内容としたものということはできないから,
本件契約において通常損耗補修特約の合意が成立しているということはできないというべきである。

(3) 以上によれば,原審の上記3(2)の判断には,
判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。
そして,通常損耗に係るものを除く本件補修約定に基づく補修費用の額について更に
審理をさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中川了滋 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 今井 功 裁判官 古田佑紀)

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<資料>

判例紹介

店舗等を目的とする建物賃貸借契約の際に保証金として支払われた賃料の約22.5ヶ月分に
相当する金員が敷金としての性質を有しないとされた事例
(大阪高裁平成14年4月17日判決、判例タイムズ1104号)

(事案の概要)

賃借人は、昭和59年3月、ショールームの使用目的で、契約期間10年、賃料443万円、
敷金1283万円、保証金9977万円の約定で賃借した。
保証金については、10年間据置のうえ翌年から5年の年賦で返還するが賃貸借契約日から
5年内に解約したときは20パーセントの解約金が控除されるという特約が付いていた。
賃借人は、昭和60年8月、賃料を支払えなかったので、賃貸借契約を解約して建物を明渡し、
敷金の返還を受けた。
しかし、保証金は据置期間未到来のためにそのままになっていたところ、
国税が保証金返還債権を差し押さえ、家主に対して、保証金9977万円の取立を請求した。
家主は、賃借人に対する未払い賃料、期間内解約による違約金、共益費、電気料金、
原状回復費等の清算が済んでないので、保証金返還額は1066万円分しか残っていないと争った。
そこで本件保証金は、敷金のように賃貸契約上の債務を清算すべき性質のものなのかどうかが問題となった。

(判決要旨)

「本件保証金が差し入れられたのは、本件建物の建築資金が必要な時期であって、
本件保証金は多額であるほか無利息で返還する約定があることからすれば、
銀行からの借入金に比して金利分の節約ができることから賃貸人にとって有利であることが明らかであるから、
通常であればこれを建設資金などに充当すると考えられるし、
賃貸人がこの保証金を他に使ったことを客観的に説明しない以上、
本件保証金は本件建物の建設資金に充当することを主目的として差し入れられたものと推認すべきである。

本件保証金の敷金としての担保機能の有無について検討する。
本件契約では、敷金と保証金を別個に規定し、敷金については、
賃借物件明け渡し後債務完済を確認したときに返還する旨規定しているのに、
本件保証金については本件据置規定が存在するだけで、
賃貸借終了時の返還義務の有無については何ら触れていないので、
敷金と同様の担保的機能を有し賃借物件の明け渡し時に契約上の債務と清算した上で
賃借人に返還すべきものであるとはいえない。」

(説明)

保証金の性質については、建設協力金、敷金、即時解約金、権利金のいずれか、
又はこれらを併せ持ったものなど、さまざまであり、契約文言、金額、差し入れの趣旨などから、
賃貸借当事者間の意思を解釈して結論される。本件では、金額が多額あること、
返還時期が契約終了と無関係であること、使途が建築資金であること等から、敷金ではないとされた。

消費者契約法1

(1)消費者契約法の消費者とは借家人で建物を住居として利用する個人

2001年4月1日から消費者契約法が施行されています。「消費者」と「事業者」
この法律で最も特徴がある点は、「事業者」と「消費者」の定義です。

「事業者」とは、1「法人その他の団体」、
2「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」です。
それ以外の個人はすべて「消費者」です。

「事業」とは、一定の目的をもった同種の行為がくり返し行われるものであり、
営利目的の有無は問いません。この定義は非常に広いもので、国も「事業者」に
なりえます。
消費者と事業者の間でなされる契約を「消費者契約」といいます。
この「消費者契約」というのは、個別の売買契約、工事請負契約とは別の次元に
なり、個別の契約の上に消費者契約という網をかぶせるものです。

借地借家人は「消費者」

借地借家契約と消費者契約の関係は次ぎのようになります。

(例1)
個人の家主と個人の借家人が住居目的で借家契約をした場合、
家主は事業として貸家契約をするので「事業者」になります。
借家人は、個人で、しかも事業のための借家契約ではないので、
「消費者」になります。この借家契約は「消費者契約」です。

(例2)
個人の家主と個人の借家人が店舗目的で借家契約をした場合、
借家人は、個人ですが店舗営業という事業のために借家契約をするので
「消費者」には該当せず、この借家契約は「消費者契約」ではありません。

(例3)
個人の家主と会社名義で住居として借家契約をした借家人は、
たとえ住居目的であっても、契約の当事者が個人でなく会社名義なので、
「消費者」には該当せず、この借家契約は「消費者契約」ではありません。

では、借地借家契約が「消費者契約」である場合、借地借家人はどんな権利行使
ができるのか?
(2)事実と異なることを告げられた賃料
値上げや更新料の支払約束は取消せる

消費者の取消権

消費者契約をする場合、事業者は、1重要事項について事実と異なることを告
げたり(不実告知)、
2将来の価額、金額、価値の変動が不確実な事項について、
断定的な言い方をして(断定的判断の提供)契約をすることができません。

また、事業者は、3ある重要事項やそれに関連する事項について、
消費者の利益となることだけを強調し不利益になることを隠して
(不利益事実の不告知)契約することができません。
事業者は、消費者に比べれば、売りつける物品、サービスあるいは契約内容に
ついて、圧倒的な情報を握っています。情報量の格差をこれ幸いに消費者をだま
すような契約は不公正です。消費者契約法は、前記の3点のようなことがあった
場合、消費者にあとから契約を取り消す権利を与えました。
借地借家契約の場合

消費者契約法は、平成13年4月1日からの施行ですから、
この法律が適用されるのは、4月1日以降の契約に限られます。
しかし、それ以前からの借地人、借家人は、この法律を使えないのかといえば、
そうではありません。

当初の借地借家契約が平成13年4月1日以前であっても、その借地借家契約に付
随して、例えば、地代家賃の値上に関する契約、更新料支払に関する契約、一時
立退再入居に関する契約、
立退に関する契約、借地建物増改築に関する契約、更新に関する契約など、当事
者間で取り交わす合意事項があります。
これらの付随的合意は、その一つ一つが消費者契約となり得る別個の契約であり、
既存の借地借家であっても、平成13年4月1日以降になされるこれらの契約(合意
)には適用されます。
(例1)賃料値上問題

地主・家主が今年は税金が上がったので賃料を上げてくれといってきた。
借地借家人は止むを得ないと思って値上に応じたが、実は税金は上がっていなかった。

賃料増額契約について公租公課額の増減は重要事項なので、
この点で事実と異なることを告げられて増額を承諾した借地借家人は、
増額合意を取消すことができる。
(例2)借地更新料支払問題

更新料支払約束のない借地契約なのに地主は更新料を要求した。
その理由として、法律でも支払うことになっているし、
自分の貸地の借地人は全員が払っていると説明した。
借地人は、しぶしぶ更新料を払うと約束してしまったが、
地主の借地人の中には払っていない人も数人いたことがわかった。

この場合、支払約束のない更新料について支払義務があるという法律はないし、他の
借地人全員が支払っているということも事実と異なっており、
いずれも重要事項と言えるので、この借地人は、更新料支払約束を取消すことができる。

借地借家人が取り消せる契約のあり方は、もう一つあります。
(3)解約後賃料の5倍の損害金を払うなど
借家人に不利益になる約定は無効

不退去・監禁
消費者契約法は、自宅を訪れた事業者に対し退去を求めたのに
退去しないで契約をさせられた場合(不退去型契約)や事業者の事務所などに呼ばれた
消費者が帰りたがっているのに帰してもらえないまま契約をさせられた場合(監禁型契
約)、その契約を取消すことができると定めています。借地借家のケースを想定すると、

(例3)明渡し約束

借家契約の更新期に家主が自宅にやってきて、今回は更新するが次回には更新しない
ので
そのことを契約書に書き入れてくれ、書かないのであれば更新しないと要求。
借家人は、よく考えて返事するから帰ってくれと答えるが、
家主は、今了解しないのなら更新はしないと迫り、
困り果てて家主の言とおりに契約書に印を押してしまった。

これは、不退去型の困惑契約になるので、借家人は取消すことができる。

以上ですが、消費者契約で取消せる契約をまとめると、
不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知により消費者が誤認した場合、不退
去、監禁により消費者が困惑した場合ということになります。

事業者の代理人

消費者に誤認をさせる、困惑させることは事業者本人でなくともできます。
事業者から契約の委託を受けた者あるいは代理人となった者が同じことをすれば、消費
者は、事業者が行ったのと同様に契約を取消すことができます。
借地借家の場合は、不動産仲介業者が地主、家主の代理人となることが多いですが、事
業者と同じと扱われることになります。

取消権行使の期限

消費者に契約の取消権がある場合、権利行使には時間の制限があります。
不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知の場合は
消費者が誤認したことに気付いたときから、不退去、監禁の場合は不退去、
監禁が終わったときから、6か月以内に取消さなければなりません。
また、契約してから五年経つと無条件に取消すことができなくなります。

契約条項無効

消費者契約法は、消費者に不当な不利益を与える契約条項は
無効である旨定めています。たとえば、借家契約書に、
賃貸借契約解除後立ち退くまでの間、契約家賃の5倍の損害金を支払うことが明記されて
いたとします。このような損害金条項については、
「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものは、
超える部分については無効」とされます。

何が平均的な損害の額かは明白ではありませんが、
新規に賃貸すれば得られるであろう賃料額と考えればいいと思います。
また、賃料滞納した場合、滞納賃料に年20%の遅延利息を付すという条項があったとす
ると、消費者契約法では上限を14.6%としていますので、これを超える部分は無効と
なります。