退去時の掃除は、どこまでやればいい?敷金返還と原状回復の関係

賃貸住宅の退去時には掃除をするのは当たり前ですが、いったいどの程度の掃除をすればいいのでしょうか。キッチンの油汚れや水回りの水垢などは、きちんと掃除しておくことで、敷金返還にプラスとなることもあるようです。

退去時の掃除と敷金返還の関係

退去時の掃除と敷金との関係を考えるにあたって、まずは、敷金について確認しておきましょう。敷金とは、家賃が滞納されたときや、原状回復に必要な費用が発生した場合に備えて、部屋の借主が貸主に対してあらかじめ「預けておく」お金のことです。預けたお金なのですから、退去時には返還されます。

ただし、必ずしも全額が返還されるとは限りません。多くの場合、退去時に原状回復にかかる費用が差し引かれ、その残額が借主の手に戻されるのです。注意が必要なのは、原状回復義務の定義があいまいなこと。国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という、借主の原状回復費用負担に関する指針を発表しているのですが、法的強制力はありません。

このため、「どの程度の掃除をすれば十分なのか」「掃除の有無が敷金返還に影響を及ぼすのか」を一口に言い切ることができないのが現状です。原状回復義務が発生する場所や損傷の度合い、借主の費用負担に関しては、賃貸契約書を確認するか、不動産管理会社、大家さんに問い合わせてみるといいでしょう。

畳やクロスの変色は原状回復しなくてもOK

とはいえ、退去時に必要な掃除についてある程度の知識を持っておくことも大切です。そこで、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に記載されている、原状回復費用の負担に関する内容を簡単にまとめてみました。

一般的に、「フローリングの色落ち」「畳やクロスの変色」「家具の設置による床、カーペットのへこみ」「電気ヤケ」などは、借主が部屋を通常に使用している中で発生する損耗とされ、原状回復にかかる費用は発生しないとされています。つまり、畳やクロスの変色などについては修復しなくても、敷金が減少することはないということ。

こういった損耗を汚れと勘違いして自己流で掃除をしてしまうと、逆に変色が悪化する可能性もあります。この場合、通常の生活で発生する損耗として扱われずに、原状回復義務が発生してしまう可能性があるので、注意してください。

台所の油汚れなどは掃除することで敷金返還のプラス材料に

一方、このガイドラインでは、「台所の油汚れ」や「ガスコンロ置き場、換気扇の油汚れ」「風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ」などについては、「通常使用による損耗」にあたる場合と、そうでない場合があるとしています。

例えば、台所の油汚れを掃除せずに放っておき、さらにひどい汚れとなった場合などには、原状回復にかかる費用を負担しなければならなくなる可能性があるということ。「台所の油汚れ」や「ガスコンロ置き場、換気扇の油汚れ」「風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ」については、退去時までにきちんと掃除をしておいたほうがよいでしょう。綺麗に掃除することで、敷金の返還額がプラスになることも考えられます。

毎月賃料を支払って住んでいるとはいえ、賃貸住宅は他人の財産でもあります。退去時にはできるだけ綺麗な状態でお返しするのがマナー。汚れを放置すると元通りにするのが難しくなるので、日頃からこまめな掃除を心掛けましょう。

(ズバッと「引越し比較」から)

貸主負担、借り主負担はどこが違う?

 

見た目に同じような損耗等でも、その原因によって貸主、借り主のいずれが負担するかは異なってきます。ここでは、具体的な事例に基づき、貸主負担、借り主負担の違いを見ていきましょう。

貸主負担、借り主負担はどこが違う?(一般的な例で、必ず当てはまるとは限らない)

※賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(東京都)、原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省)を元に作成

貸主負担 借り主負担
冷蔵庫跡の壁の黒ずみなど
冷蔵庫の後部壁面にできる黒ずみ、いわゆる電気ヤケは通常の使用をしていても発生するものなので、貸主が負担します。同様にテレビの後部壁面の黒ずみも通常損耗と見なされ、貸主の負担となります。
冷蔵庫下のサビ跡など
サビを放置したために跡が残ってしまった場合には、借り主が適切に対処しなかったことも原因と考えられるので、借り主が負担します。
カーペットの家具跡など
家具を設置したことで床、カーペットがへこんだり、跡が付いたりした場合、室内に家具を置くのは通常の生活に必要なので、通常損耗とされ、貸主の負担になります。
フローリングの傷など
引っ越し作業やキャスター付きの椅子などを引きずって付いた傷やへこみなど、借り主が注意していれば防げたであろう損耗等については、借り主の負担となり ます。同じように、飲み物などをこぼしたことで発生したシミ、カビについても、借り主が適切に対処しなかったことが原因と考えられるので、借り主の負担と なります。
画びょう、ピン等の穴など
下地ボードの張り替えが不要な程度のものであれば、通常損耗と見なされ、貸主負担となります。
くぎ穴、ねじ穴など
下地ボードの張り替えが必要な程度の穴になると、通常の使用を超えたものと見なされ、借り主負担となります。
タバコのヤニ
清掃で除去できる程度であれば通常損耗とされ、貸主の負担となります。ガスコンロ置場や換気扇の油汚れなども同様に、清掃で除去できる程度であれば通常損耗と見なされます。
タバコのヤニ
清掃で除去できないほど汚れている場合には、通常損耗とは言えず、借り主の負担となります。ガスコンロ置場や換気扇の油汚れなども同様で、手入れが悪く油汚れが付着したと判断される場合には借り主の負担になります。
畳、クロスの変色など
日照など自然現象によって起こる畳の変色、壁や天井のクロスの変色については通常損耗と考えられ、貸主の負担となります。
結露によるカビ、シミなど
結露の発生自体は借り主の責任によるものではないものの、結露を放置したことによってカビ、シミが拡大したと考えられる場合は、通常の使用を超えるものとして借り主の負担となります。
そのほか、貸主の負担とされるのは、
・専門業者によるハウスクリーニング(借り主が通常の生活、清掃を行っていた場合)
・トイレの消毒
・エアコン設置による壁のビス穴、跡など
・フローリングのワックス掛け
・破損等はしていないが、次の入居者確保のために行う網戸の張り替え
・機器の耐用年数到来、経年劣化による自然損耗の結果としての設備機器の破損、使用不能
・特に破損等はしていないが、次の入居者確保のために行う畳の裏返し、表替え
などが挙げられます。ただし、いずれも契約内容や使用状況によって異なるので、個別に貸主・借り主との間での協議が必要です。
そのほか、借り主の負担とされるのは、
・風呂やトイレ、洗面台の水垢やカビなど、使用期間中に清掃や手入れを怠った結果、汚損が生じたもの
・他に傷をつけない手段があったにもかかわらず、天井に直接つけた照明器具の跡
・子どもやペットがつけた柱の傷や落書き
などが挙げられます。

借り主の負担する範囲は?

畳に焼け焦げを作ってしまった場合には、借り主に責任がありますから、畳を交換する費用を負担することになります。しかし、和室で1枚だけ畳を変え ると、色が違ってしまって見た目が悪いという問題が生じます。その場合、借り主はどこまでを負担すればよいのかは判断に悩むところです。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(改訂版)では、このような場合を想定し、原状回復は、毀損等の補修工事が可能な最小単位を基本 にするとしており、畳であれば原則は1枚単位、壁のクロスは1㎡単位、ふすまは1枚単位、柱は1本単位などとしています。その他、負担の単位を表示できな いものもありますから、詳細についてはガイドラインを参照してください。

国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」はこちら外部サイトへ

※掲載情報は【不動産ジャパン】外部サイトへサイトより転記しています。

原状回復の範囲とは?

問題となるのが「原状回復」です。通常、賃貸借契約書の中には、賃貸借契約が終了して物件を明け渡す場合において、賃借人が当該物件を原状回復しなければならない旨の条項が盛り込まれています。つまり、建物の賃貸借契約が終了する場合、「当該建物を原状に復して引き渡す」というのが基本的な考え方であり、この費用については賃借人の負担となることから、それが適正な金額である限りにおいて、上記のように敷金から差し引くことが可能となるわけです。

 しかし、原状回復がどのような状態をいうのかについては必ずしも明らかではなく、賃借人が負担すべき原状回復費用の範囲も不明確な点があります。

 前述のように、最初に借りた時と同じ状態にすることまで、原状回復の内容となり、賃借人の義務とされるとすれば、その金額は非常に高額となり、敷金だけでは到底まかないきれなくなる可能性がでてきます。いつの間にか敷金は没収され、さらに費用を請求されるという事態にまでなるわけです。

 そこで、国土交通省は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表し、原状回復に関する紛争予防を図っています。同ガイドラインは、平成23年8月に改訂されて、より充実した内容となっており、このガイドラインの考え方を前提としてご説明したいと思います。

 まず、ガイドラインは、冒頭において次のように説明しています。
「建物の価値は、居住の有無にかかわらず、時間の経過により減少するものであること、また、物件が、契約により定められた使用方法に従い、かつ、社会通念上通常の使用方法により使用していればそうなったであろう状態であれば、使用開始当時の状態よりも悪くなっていたとしてもそのまま賃貸人に返還すれば良いとすることが学説・判例等の考え方であることから、原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、原状回復を『賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること』と定義して、その考え方に沿って基準を策定した。」

 つまり、大原則として、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとし、家主は賃借人にそれを請求できないし、敷金から差し引くこともできないということです。

 家主側は、賃借人の使用に伴って発生した汚れの完全な除去を求めて、その費用を請求してくることがあります。しかし、賃借人側としては上記のように、「原状回復は賃借人が借りた当時の状態に戻すことではない」ことを前提に交渉すべきということです。

経年変化・通常損耗=家主負担、それ以外=賃借人負担が原則

建物価値の減少に関わる損耗の種別

<1> 建物・設備等の自然な劣化・損耗等(経年変化)
<2> 賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)
<3> 賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等

まず、発生した建物価値の減少が、<1>や<2>に該当する場合に、その減少分を復旧する費用は、賃貸人が賃料の中に組み込んで受領していると考え、賃借人が負担するものではないとされます。つまり、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化または価値の減少を意味する通常損耗にかかわる投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませて、その支払いを受けることにより行われていると考えられるわけです。

 それに対し、<3>については、賃借人の行為等によって特に損耗してしまった箇所を、居住年数も加味したうえで、通常損耗する程度に復旧する費用は賃借人が負担するということになります。ここで注意すべきは、<3>に該当する損耗であっても、原状回復費用として賃借人が負担するのは、経年変化や通常損耗分の復旧費用分は除くということです。

 ちょっと分かりにくいですが、100の価値のある建物に3年住んだ場合に、経年変化や通常損耗の結果、建物価値が70になるとします。そして、賃借人の行為が付加されて、この価値が50に減少したとすると<3>に区分され、50から70に復旧する費用は賃借人が負担するということです。決して、50から100まで復旧する費用全部を賃借人が負担するわけではありません。

 なお、賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生するものであっても、その後の手入れなど賃借人の管理が悪く、損耗が発生・拡大したと考えられるものは、損耗の拡大について、賃借人に善管注意義務違反等があると考えられます。その増加分の原状回復費用については賃借人が負担するとされていますので注意が必要です。例えば、クーラーから水漏れしたが、賃借人が放置したため、壁が腐食した場合、腐食した壁を補修する費用は賃借人が負担するといった場合がこれに該当します。

民法の大改正がいよいよ実現

民法の大改正がいよいよ年内に実現しそうです。1896年の現行民法制定以来、120年ぶりの改正とあって、様々なメディアで特集が組まれるなど、話題となっています。その内容は、相談者も指摘するように、極めて多岐にわたっており、「飲み屋のツケから逃げられない」「損害保険の保険金受取額が増加」「保証人の原則禁止」「敷金は原則返還」「認知症の高齢者が交わした契約は無効」など、一般のサラリーマンにも大きな影響がありそうです。

 この改正の発端は2009年10月の法務大臣からの諮問にあります。当時の千葉景子法務大臣(弁護士出身)が、「民事基本法典である民法のうち債権関係の規定について、同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする等の観点から、国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい」と、民法改正を法制審議会に諮問し、同年11月から法制審議会民法(債権関係)部会において、民法のうち債権関係の規定について、契約に関する規定を中心として見直しが開始されたわけです。13年2月26日開催の同部会第71回会議では「民法(債権関係)改正に関する中間試案」が決定され、パブリック・コメントの手続きを経てさらなる審議が行われ、14年8月26日に開催された同部会第96回会議において、「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」が決定されて、同年9月8日に法務省から発表されるにいたりました。法務省は、今年2月ごろに予定される法制審議会の答申を受け、今年の通常国会への法案提出を目指しているということです。

敷金は原則返還

 マンションなどを賃貸する場合、家賃の1~3か月分程度の敷金が必要となることが多いですが、退去時に敷金が全く返ってこなかったり、ハウスクリーニング、クロス張り替え、畳表替えなどの原状回復費用として敷金以上の金額を請求されたりするトラブルが多く発生しています。独立行政法人国民生活センターには、敷金や原状回復に関するトラブルに関する相談が、2012年には1万4212件、13年も1万3916件寄せられているということです。

 敷金に関しては、民法には規定がなく、国土交通省が制定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」があるものの、遵守じゅんしゅしなくとも罰則が科せられるわけではありませんでした。

 そこで、要綱仮案では、敷金を「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と明確に定義付けた上で、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」は、「賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならない」として、敷金の返還義務を規定しています。

 また、最高裁判所・平成17年12月16日判決が、「賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払いを内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払いを受けることにより行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる」と判示しているように、判例では、通常の使用をした場合に生ずる劣化や通常損耗は原状回復義務には含まれないとされています。

 要綱仮案は、「賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に回復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」として、原状回復義務について、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と判例で示されていた内容を明確に規定することとなっています。

[国民生活センター] 賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブル

PIO-NETに寄せられた相談件数の推移

年度 2009 2010 2011 2012 2013 2014
相談件数 16,783 16,293 15,513 14,212 13,920 10,346(前年同期 10,361)

相談件数は2015年1月31日現在
※ここでは「借家」「賃貸アパート」「賃貸マンション」「間借り」などを「賃貸住宅」としています。

最近の事例

  • 娘が賃貸マンションの退去に際し、「備え付けのストーブの分解整備料金を請求する」と管理会社から言われた。娘と同様に寒冷地に住んでいるが、そのような話は聞いたことがない。支払い義務はあるだろうか。
  • 先日、10年以上住んだ築30年の賃貸アパートを退去した。立ち合い時に家主から、「支払い済みの敷金3カ月分を超える部分の修繕費を請求する」と言われた。納得がいかない。
  • 入居した賃貸アパートは、大雨の際に雨が排気口から吹き込むようで、その下に置いた荷物が濡れてしまう。にもかかわらず、大家がなかなか対応しない。
  • 1年7カ月住んだ賃貸マンションを退去した。大家から修繕費の請求書が届いたが、契約書の記載と異なるので、払いたくない。
  • 賃貸アパートを管理業者立ち合いで退去し、「補修費5万円」と言われたが、後日倍額の請求書が家主から届いた。当初の金額で支払いたい。
  • 5年間住んだ賃貸アパートを退去することになった。立会時に不動産業者から、「43万円の修理費を用意できなければ退去できない」と言われた。どうしたらよいか。
  • 賃貸マンションの契約をした。契約後に、前借主の残置物のエアコンと照明器具の撤去をしたが、撤去後の補修費用まで負担する義務があるだろうか。
  • 8年半居住した賃貸アパートを退去した。タバコを吸っていたということでクロスの張替え費用を請求されているが、契約書には書かれていないので払いたくない。
  • ペット禁止の賃貸アパートでフェレットを飼っていることがわかってしまい、退去することになった。敷金は家賃1カ月分を納めていたが、原状回復費として「規約違反をしたのだから」とさらに1カ月分を請求された。請求の根拠がわからず納得できない。
  • 賃貸アパートを退去したら、高額な修理代を請求された。「納得出来ない」と不動産屋に伝えたが連絡がない。どうしたらよいか。
  • ※「最近の事例」は、相談者の申し出内容をもとにまとめたものです。

国民生活センター 賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブル

[TBS]-民法改正で変わる生活、「敷金」返還スムーズに

民法改正で変わる生活、「敷金」返還スムーズに

私たちの生活に密着したルールが、まもなく変わろうとしています。例えばマンションの契約、DVDのレンタル、また飲食店のツケ払いに至るまで、生活の基本的なルールを定めている「民法」が120年ぶりに大改正。どのように変わるのでしょうか。

 おりしも引越しシーズン。男性が不動産業者と下見に訪れたのは都内にある築36年の物件です。

 「結構きれい、古いけど」(男性)
 「しっかりメンテナンスしてます」(業者)

 家賃は8万5000円。敷金・礼金は、それぞれ家賃の1か月分です。

 「退去の際にはクリーニングを行うので、敷金から通常であれば引かれるケースがほとんど」(業者)
 「どのくらい引かれる?」(男性)
 「こちらの広さだと半分以上は引かれる」(業者)

 「敷金」はアパートやマンションを借りるときに、貸主に預けるお金です。これは退去時に返還されるべきものですが、実際には住宅の「原状回復」の費用にあてられることが多い。「原状回復」の対象は、例えば「壁の落書き」のほか、経年変化による「長年置いていた家具のへこみ」や「日焼けによる壁紙の変色」も含まれます。

 この「敷金」をめぐっては、トラブルが後を絶ちません。国民生活センターによりますと、退去時「お金が戻ってこない」などの相談が年間およそ1万件以上寄せられています。

 都内在住の男性。1年ほど前、借りていた住宅を退出する際、貸主側から20万円以上請求されたといいます。

 「通常に(普通に使って)3年住んでいたという認識だった。数万円だと思っていたが、予想の2倍、3倍の請求額だったので驚いた」(敷金トラブルに遭った男性)

 その後、貸主側と交渉を重ね、男性が10万円を支払うことで和解したといいます。

 なぜ、こうしたトラブルが起こるのでしょうか。生活の基本的なルールを定めているこれまでの民法には、「原状回復」についてルールがないためです。そこで、今回の民法改正案では、「敷金」は契約の終了時、つまり引っ越す際に原則として「返還する」と明記されました。「経年変化」は貸主側の負担で直すことになりました。

 一方、「壁の落書き」などは、通常の使用による汚れを超えていると判断され、借主側の負担となりそうです。

 物件を探す人たちは・・・
 「借りる側も貸す側も、スムーズに物事が運ぶと思うのでルールはあった方が良い」
 「『こういうルールがあるから、してはダメ』とか自分の中で(判断)できるので、ルールはあった方が良い」

 不動産賃貸における「敷金」のトラブルについて、弁護士と協力し、解決にあたっている男性は・・・

 「『ハウスクリーニングはこの単価が妥当だ』と (民法に)書いているわけではないので、契約の時点でしっかり借りる人も、よくよく理解して契約しないと」(日本敷金診断士協会 土川保常務理事)

 不動産業者は今回の民法改正について・・・

 「消費者の意識が、今回の民法改正によって大きく変わることが予想される。民法改正後、敷金についてより一層細かく消費者に説明していく義務がある」(ietty 小川泰平社長)

 未払い金の「時効」に関するルールも変わります。これまで「飲食店のツケ払い」や滞納している「レンタルDVD代」などは1年で「時効」を迎えるなど、業種によってバラバラだった時効を原則5年に統一します。

 「1年で時効になるのが5年に。それなら賛成。時効は本当にありえない。借りた物は最後まで返さなくちゃ。お金ないなら飲まない方が良い 」(飲食店経営)
 「1年間で取れなかったツケを5年間追いかけ続けて取れるかと言ったら、相手の会社が潰れたりとかそうなるとあまり(改正も)意味がないかも」(飲食店経営)

 民法の改正案は、いまの国会での成立を目指すといいます。そして、2018年ごろまでに施行される見込みです。(05日23:13)

消毒料を支払えと言われたが、支払う必要があるのか?

(質問)

消毒料を支払えと言われたが、支払う必要があるのか?

(回答)

家主が請求するにしろ、仲介業者が請求するにしろ、
どちらにしても支払う必要はありません。
家主には、家賃という対価を取って他人に物件を貸す以上、
借主に「使用収益させる義務」があります。

つまり、借りる人が、安全快適に生活できるようにするのが家主の務めなのです。

従って、万一、「消毒しないと住めない」状態であるなら、
家主の費用と責任で消毒すべきなのです.

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<契約金の支払い>(1)

(質問)

契約金の残金支払いを入居日直前まで待ってほしいと言ったが断られた。

(回答)

建物の売買契約などでは、当事者双方のリスクを軽減するために、
同時履行と言って、売買代金の支払いと
不動産の移転登記手続きを同時に行うことが多いのですが、
賃貸借契約ではどうなのかということがポイントです。

つまり、賃貸借契約においても、「同時履行の抗弁権」を主張できるかどうかということです。

「同時履行の抗弁権」を主張するためには、
次の3つの要件を満たす必要があるとされています。

ひとつは、ひとつの双務契約(どちらも何らかの義務を負っている契約)から
生じた双方の債務が存在すること、
賃貸借契約は、家主には借主に物件を引き渡す義務があり、
借主には家主に契約金を支払う義務がありますので、
これに該当します。

二つ目は、相手方の債務が履行期にあること、
賃貸借契約では、借主の立場からすると、
家主の履行期(=物件の引渡し日=カギ渡し日)はまだ来ていませんので、
この点は要件を満たしていません。

そして、三つ目が、相手方が自己の債務の履行又は
履行の提供をせずに履行を請求してきたこと、
つまり、賃貸借契約においては、カギ渡し日を過ぎたのに、
カギ渡しをしないで、契約金の支払いだけを要求してきたという場合ですが、
これもカギ渡し前ですから、用件には該当しません。

つまり、入居直前まで契約金の支払いを保留するということは、
法律上では認められないということになり、
家主との協議次第ということになるのです。

一般に、家主は、入居直前のキャンセルを恐れるために、
契約金の支払いを早めにしてもらおうとしますので、
どうしても、入居直前まで費用を用意できないのであれば、
その説明をきちんと行う一方で、「キャンセルは行わないし、
万が一契約金の支払い前にキャンセルする場合でも、
契約金は全額支払う」というような念書を家主に提出して、
了解を得るというような方法が必要です。

礼金が高額なので支払いたくないのですが。

(質問)

礼金が高額なので支払いたくないのですが。

(回答)

礼金というのは、法律上、特に規定のないお金です。
礼金のやり取りは、単なる慣習に過ぎません。
問題は、家主が礼金の支払いを求め、借主がそれを拒否した場合に、
家主が契約を拒否するだろうということです。
借主にも、物件を選ぶ自由があるのに対して、
家主は、誰と契約するかの自由があるのです。

従って、「礼金が高額なので支払いたくない」と言っても、
家主が認めてくれなければ、契約できないだけなのです。
契約そのものを強制することはできないからです。

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(質問)

保証金と敷金は、どのような違いがあるのか?

(回答)

保証金と敷金の違いとしては、実態としては、
ほとんど同じような意味で使われていることが多いのですが、
厳密に言えば、次のような違いがあるとされています。

1  保証金は、事務所、店舗やテナントなどの主に法人契約によく使われ、
敷金は、個人の住居の契約によく使われています。

2  保証金は、約定によって、
退去時に敷引き(解約引き、償却などと呼ぶ場合もあります)があることが多いのに対し、
敷金は、通常、敷引きがなく、実費精算です。

3  保証金は、法律上規定のないお金ですが、
敷金は、民法第316条,第619条などに規定のあるお金です。
ただし、判例では、敷引きのない保証金は「敷金」と同じ扱いとなっているようです。

4  保証金は、約定がないと権利の承継がありません(次の家主に引き継がれない)が、
敷金は原則として新しい家主にも引き継がれます。

5  保証金=敷金+礼金という解釈もあります。
つまり、保証金方式をとっている場合には、同時に、敷引きなどがある代わりに、
礼金を取ることがなく、敷金方式をとっている場合には、敷引きがない代わりに、
礼金を取る地域が多いということです。

手付金5

(質問)

手付金を持参していなかったが、業者が「立て替えておくから」と便宜を図ってくれた。
しかし、事情があってキャンセルすることになったが、
「キャンセルするなら貸している手付金を支払え」と言われた。
やはり支払わざるを得ないのか?
(回答)

宅建業法の第47条第1項の3では、いわゆる「手付貸与の禁止」を制定しています。
つまり、仲介業者は、契約の誘引のために、手付金を立て替えるというような申し出を行えば、
実際にそれが実行されていない場合でも重大な業法違反となるのです。

従って、このような場合にキャンセルが発生したときには、一切お金を支払う必要がありません。