家主からの退去通告4

家主が住んでいる一戸建ての一部屋を貸間として借りていたところ、
家主が、「建て替えることになったので、
できるだけ早く退去してほしい」と言ってきた。退去したくなかったので、
「借地借家法の正当事由に当たらないのでは」と言った。

そうすると、後日、家主の代理人の弁護士という人から、
「貸間には借地借家法が適用されないので、
民法の規定通りに退去してもらうことになる」と言ってきた。
本当に、貸間には借地借家法が適用されないのか?

(回答)

判例によれば、一軒家はもちろんながら、貸間であっても
他の部分と区画されており、構造や規模から
「独立的排他的支配が可能」ならば借地借家法における「建物」に
該当するとして、借地借家法の適用があるとしています。

「独立的排他的支配が可能」というのは、
端的に言えば、玄関は家主と一緒に使っていても、
廊下から、家主が利用する部屋を通らずに、
直接借りている部屋に入ることができ、
その部屋は、カギによって施錠することができ、
室内においては、一般のアパートと同様に、
借主が自由に使えるような状態をさすと思います。

逆に言えば、専用のカギもなく、独立性が保障されているとは
いえないようなものについては、
借地借家法の適用がないということになります。

したがって、「貸間」と言っても、すべてが借地借家法の適用がないとは言えず、
実際の状況を見ないことにははっきりしたことはいえないのです。

なお、家賃や契約書の内容などが、一般のアパートに近いような場合には、
借地借家法の適用があると解するべきだと思います。

家主からの退去通告3

分譲マンションの一室を賃貸で借りていましたが、
家主が「売却するから退去してほしい」と言ってきました。
契約期間はまだ残っているのですが、このような場合、
引越し代や立退き料はもらえるものでしょうか?
また、エアコンを取り付けましたのですが、
置いていくか、買取してもらうことはできるのでしょうか?

(回答)

本来、契約期間を定めた契約であれば、
契約期間中は契約解除することはできないのが原則です。

家主側としては、契約期間終了の6ヶ月前までに通告し、
かなり厳密な正当事由があれば、
契約更新を拒絶することができるに過ぎないのです。
その点からすれば、契約期間中に、家主から
一方的に退去を求めることは、法的には許されません。
いずれにしても、退去する義務は一切ありませんし、
法的に言っても、退去させられることはありません。

家主は、物件自体を売却することは自由にできますが、
借主としては、家主が交代するにすぎないのです。
したがって、家主は、入居者がいる状態で売却することが可能ですし、
そういうケースはよくあることです。

家主が、入居者がいる状態では売却しにくいと思うのであれば、
契約期間が終了するのを待って売却するか
(それでも退去には正当事由が必要です)、
通常の立退き料に慰謝料を大幅にプラスして、
入居者に対する立ち退き交渉を行うことになるでしょう。

エアコンについては、家主の承諾を得て設置した場合には、
造作買取請求権(借地借家法第33条)によって、
家主に「時価」で買い取ってもらうことを請求することができますが、
承諾を得ていなければ買い取り請求できず、
逆に、原状回復義務によって取り外さなければならないことにもなります。

更新手数料2

家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。

そこで、契約時の書類をよくみると、重要事項説明書にはその旨が書かれていた。

このような場合、更新手数料の支払いを拒否することはできないのか?

(回答)

契約更新に当たって、借主が更新手数料を支払う義務はないことは、

上で述べたとおりです。更新手数料の支払い義務に関して、

仲介業者で受けた重要事項説明書で記載されている場合にどうなるかということです。

重要事項説明書というのは、契約前に、借主が契約するかどうかの

重要な判断をするに当たって、必要となる重要な判断ポイントを

記載した文書であり、宅地建物取引業法で定められたものです。

この重要事項説明書に記載されている意味ですが、それは、法律上、

記載が求められた、「賃料以外に授受されるお金」として記載されている

という意味しかありません。それは、借主の利益のために記載されているだけであり、

借主のお金の支払い義務を定めたものではないのです。

逆に言えば、重要事項説明書に記載されていることを盾として、

更新手数料の支払いが義務づけられることはあり得ないのです。

更新手数料1

家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。

契約書のどこにも記載がないので拒否したいのだが、

業者は「更新手数料を支払わなければ更新しない」と言っている。

どうすればよいか?

(回答)

手数料は、本来、業務の依頼をした人が、依頼を受けた人に対して、

その業務量に応じて支払うべきものです。

もともと、契約の更新は、家主と借主との間で行うものですが、

家主が自ら更新手続きを行うことをわずらわしく思い、

家主の代理人として管理会社に業務を委託することがよくあります。

従って、家主は、管理会社に、契約更新の手数料を支払うことになります。

借主の立場から言えば、契約更新の手続きに関しては、誰にも委託したわけでなく、

本来、家主との間で行うべき作業を、家主の代理人である管理会社と

行っているわけですから、管理会社に、更新手数料を支払う理由は一切ないはずです。

管理会社は、更新手数料を家主から受け取ればよいのですが、

中には、家主から得る更新手数料以外に、借主からも何の合理的な理由もなく、

更新手数料を請求している業者もあるのです。

本来、支払うべき理由もないのに、手数料を徴収するというのは、

不当利得に当たりますので、

支払う必要もありませんし、支払った手数料の返還も請求できると思います。

なお、契約書に、更新手数料を支払う旨の記載がある場合はどうなるかということですが、

賃貸借契約書は、家主と借主との間の取り決めですから、そこに記載された

第三者への手数料の支払いは契約内容として有効かどうかという問題があります。

契約書に、更新手数料が明記されている場合についても、

ほとんどの場合、特約としては認められないでしょう。

契約金の支払い1

契約金の残金支払いを入居日直前まで待ってほしいと言ったが断られた。

(回答)

建物の売買契約などでは、当事者双方のリスクを軽減するために、

同時履行と言って、売買代金の支払いと不動産の移転登記手続きを

同時に行うことが多いのですが、賃貸借契約ではどうなのかということがポイントです。

つまり、賃貸借契約においても、「同時履行の抗弁権」を主張できるかどうかということです。

「同時履行の抗弁権」を主張するためには、次の3つの要件を満たす必要があるとされています。

一つ目は、ひとつの双務契約(どちらも何らかの義務を負っている契約)から生じた

双方の債務が存在すること、賃貸借契約は、家主には借主に物件を引き渡す義務があり、

借主には家主に契約金を支払う義務がありますので、これに該当します。

二つ目は、相手方の債務が履行期にあること、

賃貸借契約では、借主の立場からすると、家主の履行期

(=物件の引渡し日=カギ渡し日)はまだ来ていませんので、

この点は要件を満たしていません。

そして、三つ目が、相手方が自己の債務の履行又は履行の提供をせずに

履行を請求してきたこと、つまり、賃貸借契約においては、カギ渡し日を過ぎたのに、

カギ渡しをしないのに、契約金の支払いだけを要求してきたという場合ですが、

これもカギ渡し前ですから、用件には該当しません。

つまり、入居直前まで契約金の支払いを保留するということは、

法律上では認められないということになり、

家主との協議次第ということになるのです。

一般に、家主は、入居直前のキャンセルを恐れるために、

契約金の支払いを早めにしてもらおうとしますので、

どうしても、入居直前まで費用を用意できないのであれば、

その説明をきちんと行う一方で、「キャンセルは行わないし、

万が一契約金の支払い前にキャンセルする場合でも、

契約金は全額支払う」というような念書を家主に提出して

了解を得るというような方法を検討してみてはどうでしょうか?

仲介手数料

業界に詳しい人から、「仲介手数料は、本来、家賃の半額プラス消費税」だと聞いたが、

業者は、「家賃の1か月分プラス消費税だ」と言って譲らない。

業者の言うとおりに従わざるを得ないのか?

(回答)

宅建業法および建設省告示では、居住用の建物の賃貸借契約の媒介を依頼した場合は、

本来、借主の事前の承諾がなければ家賃の半額プラス消費税ですが、

不動産業界の慣習では、事前の承諾の有無に関係なく、

家賃の1か月分プラス消費税というのが実態です。

そこで、業界の慣習に従うか、それとも、法律上の規定どおりの主張をして、

業者とやりあうかは、本人次第ということになります。

法律上は、0.5か月分を上回る分は支払う必要はありませんが、

業者から、「それでは契約できない」と言われれば、行政に訴えるなどして、

一定の手間と時間をかけることになってしまうでしょう。

業者が素直に、「半月分でよい」と言えばよいですが、

「絶対1か月分は必要」と言ってきたときにどうするのかは、

本人の考え方次第でしょう。

契約書1

契約書の内容が借主に一方的に不利なので拒否したいのだが‥

 

(回答)

 

契約というのは、本来、対等平等な2者の間において、

一方からの「申し込み」と他方の「承諾」によって成立します。

これは、「諾成契約」と呼ばれており、口頭だけで成立します。

 

たとえば、何かを買いにお店に行った場合を想定して考えればよくわかると思います。

「これをください(申し込み)」、お店「ありがとうございます(承諾)」。

 

日本の社会自体も、対等平等を前提としていますから、契約に関しても、

「契約自由の原則」(私的自治の原則)というものがあり、人身売買や殺人依頼など、

公序良俗に反するような契約は無効ですが、

それ以外は、原則として、自由に契約することができるのです。

 

(なお、建物の賃貸借契約では借地借家法の強行規定に反する契約は無効であり、

例文解釈と言って、契約書、契約約款中の定型的文言の解釈で、

文言通りに適用すると不当な結果となる場合に、その不当性を回避するために、

その文言を「単なる例文である」として、その有効性を否定する契約解釈の手法などが

適用されるときも無効となります)。

 

「自由に契約する」というのは、契約内容も自由ですし、誰と契約しようが、

逆に契約を拒否すること自体も自由なのです。

さらに、契約の形式も自由なので、文書でも口頭でもかまわないのです。

民法自体も、「契約自由の原則」を前提としつつ、

契約内容を取り決めなかった場合のルールを規定しているのです。

賃貸借契約も、本来は、対等平等な私人間で契約すべきです。

 

しかし、実際には、対等平等どころではなく、

立場の強い家主が一方的に定めた契約内容を、

立場の弱い借主が承諾するかどうかにかかっているわけです。

 

ということは、単純に考えれば、借主に一方的に不利な規定を拒否したくても、

家主が認めてくれなければ、結局は契約そのものが成立しないのです。

つまり、家主には、「あなたとは契約しない」という権利があるわけで、

家主に「契約せよ」と請求すること自体できないわけです。

 

そういう状況を背景として、民法だけでは立場の弱い借主が一方的に不利であるとして、

借地借家法(旧借地法、旧借家法)が誕生しました。

そのため、借地借家法では、「強行規定」というものを設け、

一部の規定については、「契約書にどのような記載があっても、

借地借家法の強行規定に反するもので、

借主に一方的に不利な条項は無効である」としているのです。

 

また、2001年4月には、消費者契約法というものもできました。

この法律では、「消費者の利益を一方的に奪う契約条項は無効である」としており、

賃貸借契約書にどのように記載されていても、

消費者契約法に違反するとされた場合には、借主は従う必要がなく、

裁判しても勝訴する可能性が非常に高くなってきています。

 

相談内容を見ると、「借主に一方的に不利‥」ということですが、

具体的な記載条項を確認する必要があります。

 

その条項が、借地借家法の強行規定や消費者契約法に違反すると

認められる場合には、そのまま契約しても、条項としては認められませんが、

できれば、トラブル予防のために、家主に「法律上認められないと思うので、

削除してもらえないか?」申し出ることもできます。

ただし、言い方には気をつけないと、

家主が契約そのものを拒否してくる可能性があります。

 

一方、上記の規定・法律に違反していない条項については、借主としては、

認めなければ、契約できない可能性が強くなります。

 

一般的な傾向として、空室が出てもすぐに借主が見つかるような

条件のよい物件の家主は強気ですので、

借主から「不利な条項を削除してくれ」と申し出ても、

「無理に契約してもらわなくて結構。他にいくらでも借りたいという人がいるから」

という答えが帰ってくるのがオチでしょう。

 

従って、「借主に一方的に不利な条項がある」場合、

「不利を承知でも契約したい」のか、

「納得できなければ契約しない」のかをはっきりさせた上で、

家主(仲介業者)との交渉に臨まなければなりません。

原状回復のための承諾書

入居時に、「原状回復のための承諾書」というものにサインを求められ、

仕方なくサインしたが、退去時に、借主に不利なことがたくさん書いてあったので

撤回しようと思うのだが、撤回は可能か?

 

(回答)

 

承諾書そのものを一方的に撤回することはできません。

しかし、承諾書には、通常の原状回復義務を越えた特約事項が書かれていると

思いますので、このような承諾書の有効性が問題となります。

 

判例によれば、このような承諾書(特約)が有効となるのは、

「特約の必要性があること」、

「借主が特約の意味を理解していること」、

「契約段階で特約を結ぶことについて承諾していること」

などの事情がある場合に限られています。

 

まず、通常の原状回復義務を越えるような特約事項を結ぶための合理的な理由がなければ、

「特約の必要性がある」とは言えませんので、例えば、家賃や礼金などの費用が、

通常よりもはるかに安いような場合とか、通常の原状回復義務以上の責任がある代わりに、

借主に特別に有利な規定が他にあるとかの事情がなければ、特約の必要性があるとはいえません。

 

その上、借主が入居時、「法律上の考え方からすれば、本当は家主が負担すべき費用だけど、

借主に負担してもらうことになっているんです」というような説明を受けているようなケースも

ほとんどないでしょうし、「特約の意味を理解している」とは言えないでしょう。

結局、「署名捺印した」というだけの消極的な承諾のみ残っているわけです。

 

従って、入居時に、無理やり提出させられた「承諾書」そのものの有効性は

認めがたいということになるのです。その上、2001年4月以降に

交わした契約(承諾書)であれば、消費者契約法により、

「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定に反する可能性が高いので、

消費者契約法に違反する可能性があります。

 

そこで、承諾書の撤回は無理ですが、承諾書の効力については、

「認められない」として争うことが可能ですし、

争えば、承諾書の効力が否定される判断が行われる可能性が高いでしょう。

原状回復期間

契約が終了し、家主立会いの上、原状回復のための修繕負担については同意した。

しかし、家主から、「修繕を行う期間については、他の人に貸し出せないので、

家賃の支払いが必要と言われた。」家主に従う必要があるのか?

 

(回答)

 

家賃の支払いが必要なのは、契約期間中に限られています。

契約が終了すれば、当然のことながら、家賃の支払いは不要です。

 

「修繕を行う期間については、他の人に貸し出せない」のは確かに事実でしょうが、

法律上の考え方として、 家主としても、内装の修繕を行わなければならないという

負担割合がありますので、 借主だけが100%修繕義務を負うということはあり得ません。

 

従って、家主としても、修繕する義務を負っているわけですから、

修繕期間中は、第三者に貸し出しできないというのは、

前の借主の責任とはいえないのです。

 

つまり、家主の主張には合理性がありませんので、

「家賃を支払え」という家主の主張は認められませんし、

敷金からその分を差し引くことも許されないのです。

原状回復期間2

「原状回復義務」というものが、いつ発生するのかを考えれば、

家主の主張が間違っていることは明らかです。

 

時系列から言えば、

「契約期間終了」→「物件明け渡し義務発生」=「原状回復義務発生」

となるのです。

つまり、原状回復義務は、契約期間が終了しなければ、

そもそも発生しない義務なのです。

 

また、借主は、契約期間中、使用収益する権利を持っています。

(家主から見れば、使用収益させる義務)が、

契約期間中に原状回復期間を含めるとすれば、

契約期間中にもかかわらず、使用収益することができなくなりますので、

使用収益することができない期間については、

家賃を支払う義務が免除されます。

 

いずれの見方からしても、契約期間に、

原状回復期間を含めるのは不当だということがお分かりでしょう。

 

従って、「契約期間に原状回復期間を含める」こと自体が不当ですので、

このような契約内容自体、不当な契約内容であり、公序良俗に反する規定

(使用できないのに家賃を支払うことになるため)であり、

無効といえるでしょう。

 

2001年4月以降に契約した場合には、消費者契約法によって、

「消費者の利益を一方的に害する条項」としても無効となります。

そこで、契約期間中は退去する義務がありませんし、

家主の主張に従って退去したとしても、

その期間中の家賃は支払う必要はありません。