居住以外での使用1

(質問)

居住用で借りている物件だが、今度独立することになり、
自宅兼事務所として使用したいので管理会社に申し出たが、
「事務所として使用するなら退去してもらう」と言われてしまった。
何とか解決する方法はないか?

(回答)

入居目的が「居住専用」となっている場合に、物件内に、
どの程度まで仕事を持ち込むことができるかという問題です。
一般に、「居住専用」となっている物件を、
「事務所」などとして使用することはできません。

しかし、「事務所」と言ってもピンからキリまであり、
すべての「事務所」が認められないかといえば、そんなことはないはずです。

「事務所」に限らず、営業用途として問題になるのは、
不特定多数が出入りすることで、他の入居者が
安全快適に生活することに支障が出たり、
入居者が駐車駐輪場を使用することに困難になったり、
物件自体の傷み具合が激しくなることです。

逆に言えば、「事務所」と言っても、「自宅兼事務所」程度であれば、
不特定多数の人が出入りする頻度や数もそれほど多くないでしょうし、
他の入居者が駐車駐輪場の使用に差し障るような問題がなければ、
「家主との信頼関係が破壊された」とまではいえません。

最近のように、いわゆるSOHOとして、自営業の登録場所として、
便宜上、「事務所」と呼んでいるような場合の多くも、
不特定多数が出入りするわけでもなく、
他の入居者に迷惑をかけるようなこともないはずですから、
居住専用であったとしても許されると考えられるでしょう。

そこで、「事務所」としての実態について、管理会社および家主に説明し、
「万が一、事務所としての使用によって、
家主や他の入居者に迷惑をかけるようなことがあれば、
事務所としての使用を中止する」などという念書を提出するなどして、
理解を求めるようにしなければならないでしょう。

それでも、管理会社や家主の理解が得られず、
一方で、「事務所」としての使用を行う場合には、
管理会社や家主との一悶着を覚悟しなければならず、
強行すれば、裁判などに発展することになるかもしれません。

共益費

(質問)

先日、管理会社より、急に共益費が値上げになると連絡がありました。
更新の際に値上げされたという話は聞いたことありますが、
契約期間内でも値上げに応じないといけないのでしょうか?

(回答)

「共益費」というのは、物件の共有部分(廊下・階段・ロビー・管理人室その他)の
維持に必要となる費用(管理人費用・電気代・水道代・清掃費など)を、
あらかじめ、入居者数(および専有面積)で按分して、家主が一方的に定めた費用です。

借主は、家主が一方的に定めた費用の支払いについて、
契約書で合意して入居しているわけです。

したがって、契約期間中は、家主が一方的に定めた費用を支払う義務はありますが、
逆に言えば、期間の途中での値上げは拒否することができます。

契約期間中でも、共益費の値上げに応じなければならないのは、
例えば、家主が関知することができない、電気代や水道代などの公共料金が
大幅な値上げが行われたような場合で、その値上げ分のアップをお願いされたときでしょう。

家賃と共益費の違いは、家賃は、合理的な根拠があろうがなかろうが、
家主が一方的に定めることができるのに対して、
共益費は、「共有部分にかかる実費を入居者数(専有面積割合)などで按分した金額」ですので、
合理的な根拠が必要不可欠だという点です。

今回のケースで言えば、家主側に対して、「共益費の算定根拠を明らかにし、
値上げ額が合理的なものかどうか、そして、従来の共益費が
不合理なものであったかどうかをきちんと確認させてほしい。
支払いたくないのではなく、納得できる説明がほしいのである。」というように主張してください。

そして、家主側から、共益費値上げに応じざるを得ないような特殊な事情
(従来の共益費そのものが実費負担額よりも非常に低い不合理なものであり、
今回の値上げで合理的なものになるということと、それに対する家主側の謝罪、
つまり、間違った請求をしていたために、結果的に、
契約期間中の値上げとなってしまった点についてのもの)があれば、
共益費の「値上げ」にも応じざるを得ないでしょう。

契約名義人の変更4

(質問)
賃借権のいわゆる「名義変更」については、
家主が快く承諾してくれたので問題ないと思われたが、
管理会社から、多額の「名義変更手数料」なるものを請求された。
支払いに応じなければならないか?

(回答)

管理会社が請求する根拠について、何か説明がありましたか?

「手数料」は、依頼主が要望したことに対して、具体的な作業を行ったことの
労務報酬と考えられますので、まず、借主として、管理会社に、何か、
手間をかけるようなことを依頼したのかどうか?まったく何も依頼していなければ、
おそらく契約書の書き換えの手間賃ということになりますが、
手間賃といっても、専門知識を要する作業ではなく、
時間的にもそれほどかかる作業ではありませんので、
せいぜい2~3千円程度までなら、支払いに応じても仕方ないかもしれません。

契約名義人の変更3

(質問)

友人が退去する物件の条件がよかったので、「代わりに自分が住みたい」ので、
名義変更をしたいが、可能か?

(回答)

賃貸借契約は、借主と家主との間で結ばれるものであり、
個人と個人の信頼関係(借主は家主に対して家賃を支払うという約束を行い、
家主は借主に対して物件を使用させるという約束を行う)を前提にしています。

ここでいうところの「名義変更」というのは、借主が一方的に、
借主を変更してしまうということですが、それが認められれば、いつの間にか、
借主が勝手に代わっていたということになりかねず、
家主が不利益を被る可能性もあります。
したがって、借主が一方的に、「名義変更」を行うというようなことはできません。

いったん、借主と家主との間に結ばれた契約を合意解除し、
あらためて、家主との間で契約しなおすことになりますが、
家主が認めてくれなければ、契約しなおすことはできません。

契約名義人の変更2

(質問)
このたび、結婚することになったので、
婚約者が会社に住宅手当を申請する関係から、
婚約者名義に変更したいと申し出たが、
家主から拒否された。何とかならないか?

(回答)

まず、物件自体の種類は、家族向けの物件でしょうか?
それとも一人用のタイプでしょうか?
もし、一人用のタイプの物件の場合には、
結婚後は退去しなければならないでしょう。
したがって、その場合には、名義変更以前の問題となります。

家族向けの物件の場合は、まず、家主に拒否する理由を聞いてみましょう。
家主がきちんと理解せずに拒否している可能性もあるからです。
家主が、事情をきちんと確認したうえで、
それでも家主が拒否するようであれば、いくつかの対策が考えられます。

一つは、会社の住宅手当の申請上、婚約者の方が「借主」となっていればよい
というのであれば、家主との関係では、あなたが借主ですが、
(できる限り家主の承諾を得て)あなたが「転貸人」=「家主」となり、
婚約者の方が、「転借人」=「借主」となる方法です。
家主が書類上の転貸借契約であっても認めないと思われる場合には、
家主の承諾を求めないほうがよいだろうということです。

二つ目は、家主に対して、「一定金額の名義変更料を支払う」
という条件を持ち出して、家主の承諾を得やすくするという方法です。

三つ目は、家主の承諾を得るための条件を家主自身から聞き出して、
何とか、家主の理解を求めるという方法です。

それらの対策を講じても、うまくいかないという場合には、
退去を検討しなければならないかもしれません

契約名義人の変更1

(質問)

家賃補助の関係で、会社名義で賃貸マンションに入居していたが、
家賃補助制度の廃止により、個人名義に変更しなければならなくなった。
これに対し、不動産会社は、契約者変更になるため、
敷金・礼金、契約時手数料(1ヶ月分)を要求されました。
不動産業者の言うとおりに支払う義務はあるか?

(回答)

もともと、賃貸借契約に、「名義変更」というものは存在しません。
賃貸借契約は、家主と借主との間で結ばれるものであり、
「名義変更」と呼ばれているものは、実際には、当初の借主と家主との
契約を解除し、新たに別の借主と家主が契約を結ぶことを指しています。

別の借主との間で契約を結ぶかどうかは、家主の意思次第ですが、
入居者が変わらず、家主が契約変更を同意しているのであれば、
敷金精算も不要でしょう。
最初の契約時点で、礼金・敷金を誰が負担したかが一つのポイントとなります。
企業名義で契約していたとしても、実際に、礼金・敷金を負担したのが、
入居者自身であった場合、あらためて、礼金・敷金を支払うのは不合理です。

もともと、「礼金」は、家賃の前払いや入居の権利を保障する権利金などの
性格をもつとされていますが、家主に、書類の作成以外に、
何ら実質的な負担が増えるわけではないので、一度支払った礼金を
再度徴収するというのは、二重払いということになります。

一方、最初の契約時点で、企業が、礼金・敷金を負担していた場合には、
少し事情が異なります。企業としては、敷金の精算が必要となりますので、
あらためて、敷金を差し入れなければなりません。
礼金については、家主との交渉次第ということになります。

いずれにしても、契約相手は、家主さんですので、家主と直接交渉し、
書類書き換えを行ってもらうようにしてください。
家主は、「すべて管理会社に任せているので…」という場合にも、
家賃1か月分も請求される理不尽さを告げて、
直接手続きできるように交渉したほうがよいでしょう。

それでも、どうしても、「管理会社を通せ」という場合にも、
書類作成費用として、判例などでも、実質的に認められるのは、
1万円程度。仮に、それらの交渉がすべてうまくいかない場合でも、
入居者が同一である以上、そのまま居住し続けていれば、
家主側に退去させられるほどの「正当事由」は認められず、
したがって、借主の居住権が認められると思いますので、
退去させられることはないでしょう。

契約期間中の途中解約6

(質問)

家主との間で、契約期間を特に定めずに、口頭だけで契約していたのだが、
事情により、途中で退去することになり、家主に「2ヵ月後に退去する」と言ったところ、
「解約する場合には家主の承諾が必要と言っていたはずだ。
勝手な解約は承知できない。」と言ってきた。
「勝手な解約」と言われても困るのだが、文書で契約書を交わしていないため、
解約することはできないのか?

(回答)

契約期間を定めていない契約です(口頭かどうかは無関係です)ので、
民法第617条の規定が適用されます。
617条では、「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、
いつでも解約の申入れをすることができる。」として、
建物の賃貸借の場合には3ヶ月前の予告期間が必要とされています。

したがって、「2ヵ月後に退去する」というのでは、1か月分が満たないので、
1か月分は違約金として支払う義務がありますが、解約すること自体は可能です。

家主には、民法の規定を説明し、できるだけ納得してもらうようにしてください。
それでも、家主が承諾しない場合には、家主の意向に関係なく、
1か月分の違約金を支払って退去することができます。

契約期間中の途中解約5

(質問)

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「2ヵ月後に退去する」と言ったところ、「2ヶ月に1日足りないので、
実際には1ヶ月前の通知となるので、1か月分の違約金を支払ってもらう」と言ってきた。
たった1日だけ遅かったが、わずか1日の遅れで1か月分の違約金はおかしいと思うが、
支払う義務はあるのか?

(回答)

契約期間を定めた契約で、特約として、契約期間中の途中解約権を認めた場合には、
その条件に縛られます。したがって、たった1日といえども、条件に満たない場合には、
違約金の支払いが生じるのは仕方ありません。支払うべきでしょう。

契約期間中の途中解約4

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「2ヵ月後に退去する」と言ったところ、「契約書には確かに2ヶ月前までと
なっているが、これは、特別な事情がある場合であって、
借主の勝手な都合での解約を認めるものではない。それでも、
どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってほしい」と言ってきた。
支払う義務はあるのか?

(回答)

契約期間を定めた契約で、契約期間中の途中解約を特約として認めた場合には、
その認めるための条件がどうなっているかがポイントです。
通常は、解約の通知時期のみ条件として定めていることが多く、
今回のように2ヶ月前としているだけであれば、
家主の「特別な事情がある場合」という主張は認められません。
したがって、家主の支払い要求に応じる義務はありません。

契約期間中の途中解約3

(質問)

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「来月退去する」と言ったところ、
「契約期間の途中では解約できないという契約内容だ。
どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってほしい」と言ってきた。
びっくりして契約内容を確認したところ、確かに、途中解約に関する事項はなかった。
無茶苦茶な要求だと思うが、支払う義務はあるのか?

(回答)

「契約」とは、契約を交わした双方が、お互いにその内容を守ることです。
契約期間を決めて、その間は、借主は家賃を支払い、
家主は物件を引き渡すという約束をした以上、どちらも、
自分の勝手な都合で約束を反故にすることはできないというのが原則です。

ところが、民法第618条では、契約期間を定めた契約の場合には、
「その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは」、
つまり、解約するという特約を交わした場合には、
契約期間中の途中解約を認めるようにしています。
逆に言えば、契約期間中の途中解約という特約のない契約である場合には、
原則に戻って、途中解約することができないということになるのです。

一般的には、途中解約特約のある契約が多いのですが、
だからといって、すべての契約に特約があるというわけではなく、
特約のない契約においては、原則通りの対応となるのです。
したがって、家主の主張が、「無茶苦茶」というわけではありません。
交渉がうまくいかない場合には、契約期間終了まで住み続けるか、
契約期間終了までの家賃を支払うかの選択をすることになるでしょう。

なお、消費者契約法が施行された2001年4月以降に契約したものであれば、
契約期間がまだ始まったばかりという時期で違約金があまりにも多額になり、
借主の退去理由の正当性が認められる可能性が高いという場合には、
少額訴訟において、「消費者の利益を一方的に害する」と主張すれば、
借主の主張がある程度認められるかもしれません。