契約書には、「家主が必要になったときは物件を明け渡すこととする」
と記載されていたが、実際に、家主から「自分の息子夫婦が住むこととなったので、
契約どおり退去してほしい」と言ってきた。
契約書に記載されている以上、従わざるを得ないのでしょうか?
(回答)
まず、契約内容が、「契約期間の定めがある通常の賃貸借契約」
であるかどうかを確認してください。
以下は、そういう場合の対処策です。そうでない場合には、前項を参照してください。
契約書の中に、「家主が必要になったときは物件を明け渡すこととする」
というような規定があったとしても、このような規定は、
借地借家法上の強行規定に反するため、一切無効です。
借地借家法では、家主から退去を求めるためには、
契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に通告することと、
家主の「正当事由」が必要とされています。
この「正当事由」は、借主保護のために、家主が物件を必要とする事情と
借主のそれとを比較して、家主が必要とする事情のほうに正当性がある場合のみ
認められることになっており、通常は、借主の事情のほうが優先されます。
しかも、家主自身ではなく、家主の家族が住むということになれば、
「息子夫婦がその物件に住まざるを得ない」というような特殊な事情がなければ、
家主としての正当性は認められないでしょう。
このような場合には、家主は、通常、財産上の給付、
すなわち、立退き料を支払うことで、「正当事由の補完」を行うことが必要です。
そこで、家主は、相当額の立退き料、近隣の同等物件に引越するための諸費用
(礼金、仲介手数料、保険料などの契約に必要な諸費用、引越代、
それまで住んでいた物件との間に家賃の差額があれば、
最初の契約更新までの家賃の差額分など)を支払うべきでしょう。
入居者としては、「家主としての正当事由がないため、立退きを拒否する。
どうしても、退去せよというのであれば、
相当額の立退き料を支払え」という要求を行うことができます。