入居申込書2

本人が高齢のため入居を拒否されたが、何とかならないか?

(回答)

平成13年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が制定され、
高齢者の入居を拒否しない賃貸住宅の登録・閲覧制度や
終身借家制度などが誕生し、高齢者に対する一定の保護が前進しましたが、
いまだに「高齢」を理由とした入居の拒否があとを絶ちません。

現状では、家主の「良心」に委ねるほかなく、
強制的に、入居を認めさせることはできません。
家主を説得したい場合には、行政の窓口で相談し、
家主への説得を行ってもらうという方法も考えられますが、
根本的には、上記の法律で登録された高齢者の入居を
拒否しない賃貸住宅を探すことだと思います。

入居申込書1

入居申込書に書いた内容で入居を拒否されたが、何とかならないか?

(回答)

契約するためには、借主からの「申し込み」に対して、
家主による「承諾」が必要ですが、
家主が承諾しない場合には、契約が成立しません。

日本以外の先進国では、性別・人種・国籍の差別や
その他の合理的な理由がないのに、
入居を断るような場合、民間の家主であっても法律で罰せられる
というケースが少なくありませんが、
日本では、「契約自由の原則」が幅を利かせすぎているのです。

家主が承諾しない理由にはいろいろと考えられますが、
家主には、入居拒否の理由を説明する義務もありませんし、
家主が入居を認めない以上、何ともすることもできないのが現実なのです。

重要事項説明2

近くに迷惑施設があったのに説明がなかったが、
不動産業者は、「重要事項として説明する項目ではない」と言うが納得できない

(回答)

宅建業法第35条1項によれば、重要事項として説明すべき事項として、
登記簿上の権利関係、法律に基づく制限、水道ガス電気などの整備状況、
賃料のほかかかる費用についてなど、さまざまな事項について、
法律で「必ず説明すべき事項」として定められています。

不動産業者は、法律上明記された項目の中に、
「迷惑施設うんぬんという言葉がない」ということで、
説明しなくてもよいと考えているのかもしれませんが、法律をよく見ると、
第47条1項に「重要な事項の告知義務」を定めているのです。

これは、35条の法律上、具体的に明記されている事項以外でも、
契約するかどうかを判断するときに大きな材料となる事項については、
「重要な事項」として、必ず説明しなければならないとされているのです。
たとえば、過去に、自殺や火災などがあった物件については、
35条の「重要事項」ではありませんが、47条の「重要な事項」にあたるため、
必ず説明する必要があるのです。

そこで、「迷惑施設」といってもいろいろなものが考えられますが、
その中身と距離がどの程度であったかによって、
「契約するかどうかの判断材料として重要なポイントになるかどうか」が問題となります。
この点で、業者の言い分が正しかったかどうかを見極める必要があるでしょう。

重要事項説明1

「重要事項説明書」という書類もなく、説明もなかった。

(回答)

宅地建物取引業法によれば、仲介業者は、借主予定者に対して、契約前に、
物件の重要な事項について、宅地建物取引主任者が、主任者証を提示の上で、
説明することが義務づけられています。

もし、重要事項説明がなく、書類も発行されなかったとすれば、重大な業法違反になります。
万一、そういう事態が発生したときは、業者に「業法違反である」と通告し、
善処を求めるべきです。

定期借家契約での途中退去1

定期借家契約で一戸建ての借家を借りていたが、
このたび、自宅を新築することになったので、家主に契約解除を申し出たが、
「定期借家契約なので途中解約はできない。
どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言ってきた。
家主の主張は横暴だと思うので、支払いに応じたくはないのだが‥。

(回答)

借地借家法第38条第5項では、
「居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、
当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、
転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、
建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、
建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

この場合においては、建物の賃貸借は、
解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。」と規定しています。
借家が床面積が200平方メートル未満の建物だとすれば、
検討すべきなのは、「自宅の新築」が、法に規定されている「その他のやむを得ない事情」に
相当するかどうかという点です。

そうすると、「その他のやむを得ない事情」とは、
「転勤、療養、親族の介護」などと同等の内容でなければなりませんが、
「転勤等」は、借主が自分の都合で決めることができないものだという点が共通しています。
つまり、借主が自分の都合以外で借りている物件に住み続けることが不可能になった場合に、
借主の解約件を認めなければ、借主は非常に不利な状況に追い込まれてしまうのです。
そこで、法は、こういう場合に限って、定期借家契約といえども、
借主の解約を認めることにしたのです。

「自宅の新築」は、借主の都合で行うことにほかなりませんので、
「やむを得ない事情」に該当するはずはないということになります。
したがって、借主の解約は認められず、定期借家契約を終了させることはできません。

あとは、家主との交渉次第で、一定の違約金の支払いを持ちかけて、
特別に解約を認めてもらえるように交渉するという方法を検討してみてください。
なお、万一、床面積が200平方メートル以上である場合には、
「やむを得ない事情」があっても解約できないことになっています。

部屋の移動

契約時には、日当たりのよい上階の部屋が満室だったので、
仕方なく日当たりのよくない部屋に入居していたが、このたび、
上階の部屋が空いたので、家主に、部屋の移動を申し入れた。

家主は、「部屋の移動はかまわないが、
管理会社を通じて手続きをしてくれ」と言ってきた。
そこで、管理会社に、家主の承諾を得たので、
部屋移動の手続きをしたいと申し入れたところ、
「書類作成手数料として更新手数料と同じ金額を支払ってもらう」と言われた。
1万円以上の費用になるので、拒否したいのだが、だからといって、
部屋移動もできないのも困るし、どうすればよいか?

(回答)

家主が部屋移動を承諾しているわけですから、
あとは、「契約書の修正」、あるいは「契約書の作り直し」が必要ということになります。

契約期間そのものが、従来の契約のままであるのであれば、
家賃や部屋番号のみを修正すればよいだけだと思いますので、
その場合には、「契約書の修正」のみでよいでしょう。

しかし、家主が契約書の作り直しを求める場合には、それに従う必要があるでしょう。
問題は、管理会社を通すことによって、多額の手数料を請求されることですので、
家主に事情を説明して、家主との間で直接手続きを行ってもらうようにするか、
それとも、家主から、手数料の減額(書類作成手数料なら、2~3千円程度に抑えてもらう)
を働きかけてもらうように、うまく説得してみてください。

定期借家契約での途中退去2

定期借家契約で一戸建ての借家(延べ面積250平方メートル)を借りていたが、
このたび、老親が倒れて寝たきり状態になってしまった。その介護のため、
急きょ、実家に帰らざるを得なくなり、家主に契約解除を申し出たが、
「定期借家契約なので途中解約はできない。どうしてもというのなら、
契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言ってきた。
家主の主張は横暴だと思うので、支払いに応じたくはないのだが‥

(回答)

一般の定期借家契約(床面積が200平方メートル未満)なら、
「親族の介助」により、借りている物件に住めなくなった場合には
借主の途中解約を認めています。

ところが、200平方メートル以上の物件の場合には、
解約権が認められていないのです。一般的に考えても、
借家で200平方メートル以上というのは、非常にまれなケースであり、
そういう物件を借りる場合には、かなり高額な家賃が予想されますし、
また、大勢で住んでいる可能性もあります。

借地借家法で規定している「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情」と
いうような事情があったとしても、法律で規定しているところの
「自己の生活の本拠として使用することが困難」なのは、
住んでいる人の一部だけだと考えられます。

そこで、このように広い物件を定期借家契約で借りている場合には
借主の途中解約権を認める必要性は少ないということから、
床面積の制限が設けられたのではないかと考えられます。
いずれにしても、家主の主張は法的に正しいものですので、
その点を念頭において、妥協点を探るようにしなければならないでしょう。

定期借家契約での途中退去1

定期借家契約でワンルームマンションを借りていたが、
このたび、病気により、急きょ、長期入院することになったので、
家主に契約解除を申し出たが、「定期借家契約なので途中解約はできない。
どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言ってきた。
家主の主張は横暴だと思うので、支払いに応じたくはないのだが‥

(回答)

「病気療養」は、借主が解約する条件として認められています。
また、ワンルームマンションということですので、
「200平方メートル未満」のはずですので、問題なく解約することができます。
家主に、借地借家法の規定を説明し、了解を得るように説得してください。

ハウスクリーニング費用と原状回復義務の特約(全国賃貸住宅新聞10/9号掲載)

入居者が退去することになり、退去時の状況を確認し、原状回復及びハウスクリーニングを実施することになりました。
賃貸借契約書には、「賃借人は、退去に伴うハウスクリーニング費用として3万円を支払う。」旨が定められていたので、敷金から3万円及びその他の原状回復費用を控除して返金したところ、原状回復の金額に納得がいかないとして、敷金の返還を求められています。
ハウスクリーニング費用は明記されているのですが、控除することができないのでしょうか。

回答

原状回復費用については、最高裁判例での見解やそれを踏まえた国土交通省によるガイドラインが発表されていますが、いまだに、紛争が多く見られる状況にあります。その原因は、原状回復義務に関する根本的な誤解が原因にあると思われます。
物件を貸す側から賃貸借契約の終了時の原状回復についてみると、貸した時の状態に戻して返却してもらうことを望んでいます。賃借人が利用して汚した部分や傷つけた部分を直すことはもちろん、次の入居者へ貸すためには綺麗な状態でなければ意味がないため、貸した時の状態に戻すことを当然のことと思っているかもしれません。

しかしながら、最高裁の判例や原状回復のガイドラインではそのような理解はされておらず、原状回復義務については、故意又は過失により傷つけたりした部分を直して、賃貸借終了時点の物件を返還することが前提となっています。ここで貸す側の思惑と大きく相違しているのが、原状回復すべき時点の捉え方であり、貸した時点の状況に戻すのではなく、借り終わった時点のものを返すことが前提にされています。

したがって、原則として、どちらの責任でもないような汚れや、通常使っていれば損耗又は消耗するような価値(「通常損耗」などと呼ばれます。)については、賃借人の負担ではなく、賃貸人が負担することになります。そのため、通常損耗に入るような内容については、賃貸人の負担であり、これを賃借人に負担させることは例外的、特殊な契約であるということになります。

原状回復の負担範囲に関して、紛争が耐えない中、最高裁の判例は、本来、賃貸人が負担すべき原状回復の範囲を賃借人へ転嫁するためには、賃借人において補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が具体的に明記されていることを求めており、それをうけて、通常損耗の範囲に該当するハウスクリーニングについて、金額を明記する契約書も増えています。

それでは、金額さえ明記していれば裁判所がハウスクリーニング費用の請求を認めてくれるかというと、必ずしもそうではありません。裁判例では、本来通常損耗であり賃借人へ転嫁していることを理解させた上で、金額を明記しているような事例で、かつハウスクリーニングが専門業者により実施されることも認識していた場合に、はじめて費用を負担させることを認めています。

金額を明記することも重要ですが、最高裁判例が示す明確性にとってより重要なポイントは、「本来、賃貸人の負担である費用を、特約により賃借人へ転嫁している」といるということが、賃借人に理解されているか否かという点です。ご相談のような、金額の明記のみがなされている場合は、賃借人が本来負担しなくてもよい金額を負担しなければならないと理解できる説明がなされていない限りは、原状回復費用を賃借人に負担させるものとしては有効にならないおそれがありますので、注意が必要です。

なお、改正民法においては、原状回復費用について、これまでの最高裁判例や国土交通省のガイドラインと同様の見解を前提として、賃借人が負担する原状回復の範囲から通常損耗を除くことが明記されます。改正民法では、法律上も明記されることからも、負担を転嫁する旨の合意や説明は改正後も求められることになるでしょう。

家主の交代2

住んでいる物件が売買により、家主が別の人になった。
新たな家主より、「契約書を変更し、家賃も値上げするので、
同意できなければ退去してくれ」と言ってきた。
こういう場合、新たな家主の主張に従わざるを得ないのか?

(回答)

売買による家主の交代の場合、新しい家主は、
前の家主の権利・義務関係をそのまま引き継ぐことになります。

従って、契約書の内容や家賃は、入居者と前の家主が交わした約束であり、
権利でもあり、義務でもあるわけですから、一方的な変更はできないはずです。