入居後、給湯器が故障しているので、家主に修繕を求めたが、
「契約書に『‥給湯器などの故障の修繕費用は借主負担とする』と
書いている通り、自分で修繕してください」と言われた。
契約書に署名している以上、従うしかないのでしょうか?
(回答)
民法上、家主には、家賃という対価を得ている以上、
借主に使用収益させる義務がありますので、
そのための修繕義務を負っています。
しかし、本来、家主が負担すべき修繕義務であっても、
特約で借主負担とすること自体は、契約自由の原則の一環として、
認められていることです。
もともと、家主と借主の立場が対等平等ではなく、
家主が一方的に定めた契約事項を、
借主が受け入れるかどうかだけの選択肢しかありません。
そこに、契約自由の原則を無限定に適用していると、
借主が一方的に不利な特約ばかりが横行してしまい、
社会としての公正・公平・平等という価値観が守られなくなります。
そこで、特約としての「借主の修繕負担義務」の解釈としては、
家主の修繕費用負担義務を免除するに過ぎず、
借主の費用負担を求めるためには、
「特段の事情」が必要とされているのです。
「特段の事情」とは、たとえば、ほとんどただ同然で貸していたなど、
家主負担とするのがかえって酷になり、
一方で借主負担としてもやむをえないというような事情です。
逆に言えば、「特段の事情」がなければ、給湯器のような設備機器に
修繕が必要になったような場合には、
家主負担で修繕すべきであると考えられています。
なお、2001年4月以降は、消費者契約法が施行されていますので、
それ以降の契約である場合には、
このような「修繕費用の借主全額負担特約」は、
消費者契約法第10条に違反しており無効であるとされています。