契約期間中の途中解約5

(質問)

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「2ヵ月後に退去する」と言ったところ、「2ヶ月に1日足りないので、
実際には1ヶ月前の通知となるので、1か月分の違約金を支払ってもらう」と言ってきた。
たった1日だけ遅かったが、わずか1日の遅れで1か月分の違約金はおかしいと思うが、
支払う義務はあるのか?

(回答)

契約期間を定めた契約で、特約として、契約期間中の途中解約権を認めた場合には、
その条件に縛られます。したがって、たった1日といえども、条件に満たない場合には、
違約金の支払いが生じるのは仕方ありません。支払うべきでしょう。

契約期間中の途中解約4

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「2ヵ月後に退去する」と言ったところ、「契約書には確かに2ヶ月前までと
なっているが、これは、特別な事情がある場合であって、
借主の勝手な都合での解約を認めるものではない。それでも、
どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってほしい」と言ってきた。
支払う義務はあるのか?

(回答)

契約期間を定めた契約で、契約期間中の途中解約を特約として認めた場合には、
その認めるための条件がどうなっているかがポイントです。
通常は、解約の通知時期のみ条件として定めていることが多く、
今回のように2ヶ月前としているだけであれば、
家主の「特別な事情がある場合」という主張は認められません。
したがって、家主の支払い要求に応じる義務はありません。

契約期間中の途中解約3

(質問)

2年契約の物件だが、事情により、契約期間の途中で退去することになり、
家主に「来月退去する」と言ったところ、
「契約期間の途中では解約できないという契約内容だ。
どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってほしい」と言ってきた。
びっくりして契約内容を確認したところ、確かに、途中解約に関する事項はなかった。
無茶苦茶な要求だと思うが、支払う義務はあるのか?

(回答)

「契約」とは、契約を交わした双方が、お互いにその内容を守ることです。
契約期間を決めて、その間は、借主は家賃を支払い、
家主は物件を引き渡すという約束をした以上、どちらも、
自分の勝手な都合で約束を反故にすることはできないというのが原則です。

ところが、民法第618条では、契約期間を定めた契約の場合には、
「その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは」、
つまり、解約するという特約を交わした場合には、
契約期間中の途中解約を認めるようにしています。
逆に言えば、契約期間中の途中解約という特約のない契約である場合には、
原則に戻って、途中解約することができないということになるのです。

一般的には、途中解約特約のある契約が多いのですが、
だからといって、すべての契約に特約があるというわけではなく、
特約のない契約においては、原則通りの対応となるのです。
したがって、家主の主張が、「無茶苦茶」というわけではありません。
交渉がうまくいかない場合には、契約期間終了まで住み続けるか、
契約期間終了までの家賃を支払うかの選択をすることになるでしょう。

なお、消費者契約法が施行された2001年4月以降に契約したものであれば、
契約期間がまだ始まったばかりという時期で違約金があまりにも多額になり、
借主の退去理由の正当性が認められる可能性が高いという場合には、
少額訴訟において、「消費者の利益を一方的に害する」と主張すれば、
借主の主張がある程度認められるかもしれません。

契約期間中の途中解約2

(質問)
賃貸借契約に明記されている通りに退去を申し出たところ、
「学生の入居時期からはずれているので、
今すぐ退去するか損失となる半年分の家賃を支払え」と言われた。
このような場合、家主の主張に従わざるを得ないのか?

(回答)
賃貸契約書に、契約期間中の途中解約条項があり、その時期が1ヶ月前であれば、
その時期までに通告すれば、何のペナルティーもなく契約解除できます。
もともと、契約期間を定めた賃貸借契約では、
「途中解約条項」を定めるかどうかは任意なのです。
もし、「途中解約条項」がなければ、契約期間が終わるまで家賃を支払う義務があります。

一方、家主が任意規定である「途中解約条項」を契約書の中に入れれば、
借主が承諾して契約が成立しているわけですし、もともと、契約書の内容を定めた家主は、
自ら約束した事項を守るのは当然のことです。
確かに、「学生の入居時期からズレている」という家主の主張には同情できる余地はありますが、
だからといって、自ら決めた約束を反故にすることはできるわけがありません。

契約期間中の途中解約1

(質問)

「学生専用マンション」に住んでいるが、契約途中で解約を申し入れたところ、
家主から、「途中解約はできないので契約期間終了までの家賃を支払え」と言われた。
確かに、契約書には、そのように記載されているが、
これは消費者契約法に反する条項なので無効ではないか?

(回答)

「途中解約条項」のない契約そのものは有効ですので、
家主の主張そのものが間違っているわけではありません。
特に、「学生専用マンション」などの場合、契約期間の途中で解約されてしまうと、
翌年の4月まで空室のままで置いておかなければならないケースが多いからです。
したがって、その物件の所在地が、学校等の近隣にあり、学生専用マンションであるなら、
家主の主張が不当ということは言えないのです。

これが、一般社会人向きの物件であったとすれば、学生専用物件のような問題は少ないため、
消費者契約法に違反する可能性が強いと言えるでしょう。
そこで、途中解約する理由を明確にし、その理由が、入居者のわがままに起因するものではなく、
「親が失業し、学校そのものを退学せざるを得なくなった」というような
やむを得ない事情であるのであれば、家主に対して、
やむを得ない事情を理解してもらうように交渉しなければならないでしょう。

入居者が転落死した賃貸住宅の家主に賠償命令

福岡高等裁判所は、入居者が窓から転落死した賃貸住宅の家主に、
約350万円の損害賠償を命じる判決を下した。窓に手すりがないのは瑕疵であり、
家主が窓に手すりを設置しなかったのは安全配慮義務違反だと訴える
入居者の遺族の主張を認めた。遺族も家主も上告せず、4月4日に判決は確定した。

事故が起こった賃貸住宅は、1973年に完成した木造2階建ての建物だ。
入居者は50歳の女性で、2002年11月、2階で窓の外に洗濯物を干していたとき転落死した。
洗濯物を干すには物干し竿まで身を乗り出す必要があったが、窓に手すりはなかった。
福岡高裁は判決で、窓には民法上の瑕疵があったと認定した。
さらに、家主が入居者の洗濯物の干し方を知りながら手すりを設置しなかったことは、
入居者に対する安全配慮義務に違反すると判断した。

その一方で福岡高裁は、入居者にも過失があったことを理由に、
家主が支払う損害賠償の金額を請求額の1割に抑えた。
身を乗り出さないと洗濯物を干せなかったそもそもの原因は、
竿を受ける金具の不具合だ。にもかかわらず、入居者が金具を修理したり、
不具合を家主に訴えたりしなかったことは、転落死事故の発生に大きく影響したと判断した。
家主側は、窓の腰壁の高さが床から約73cmあることを理由に、
手すりはなくても窓は安全だと主張していた。

福岡高裁は判決で、建築基準法は窓の腰壁の高さを規定していないものの、
建設業界には一般に65~85cmの高さならば安全と見なす考えがあると指摘した。
この考えに基づいて約73cmという高さ自体の危険性は否定したが、
窓から日常的に身を乗り出す入居者のためには手すりが必要だったと結論付けた。
05年に福岡地方裁判所小倉支部が下した一審判決は、
住宅の完成から30年近く転落事故がなかったことなどを理由に、
入居者の遺族の訴えを棄却した。そのため遺族側が控訴していた。