定期借家契約での途中退去2

(質問)

定期借家契約でワンルームマンションを借りていたが、
このたび、病気により、急きょ、長期入院することになったので、
家主に契約解除を申し出たが、「定期借家契約なので途中解約はできない。
どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言ってきた。
家主の主張は横暴だと思うので、支払いに応じたくはないのだが‥。

(回答)

「病気療養」は、借主が解約する条件として認められています。
また、ワンルームマンションということですので、
「200平方メートル未満」のはずですので、問題なく解約することができます。
家主に、借地借家法の規定を説明し、了解を得るように説得してください。

入居者の死亡1

(質問)

先日借家で一人暮らしをしていた祖母が亡くなると大家さんの態度は急変し、
敷金の返還はもちろん拒否し、遺族が1~2年家賃を払い続けてほしい・・・と言うのだが、
そこまでしないといけないのか?

(回答)

借家人が死亡した場合、
一般の賃貸借契約(「高齢者の居住の安定確保に関する法律」による特別な契約は別)では、
遺族が、借家人の権利義務関係をそのまま引き継ぐのが原則です。
したがって、解約の手続きを行わなければ、いつまでも家賃を支払い続ける義務がある一方、
敷金の返還請求権があります。

住む必要がないと思いますので、相続権を持っている人全員の意思を代表して、
相続人の一人が家主と交渉し、契約解除の手続きを行ったほうがよいでしょう。
なお、当然ながら、無駄な家賃を支払い続ける義務はありません。

家賃の違い4

(質問)

家賃そのものではないが、後から入居した人が、
礼金を一切支払わずに入居していることを知った。
そこで、家主に、「礼金を支払わずに入居した人もいるので、
自分が支払った礼金を返却してほしい」と言ったが、拒否された。
何とかならないか?

(回答)

礼金というのは、法律上、何の決まりもないお金であり、
地域の慣行によって徴収しているに過ぎませんし、
契約後は、返却されないのがふつうです。

そして、契約時に、礼金の支払いを条件として契約しているわけですので、
あとから、返却を求めても、それが認められるわけはありません。

それに、礼金自体、他の物件との競争上、あるいは、時期によっては、
徴収しないケースもよくありますので、
他の人が礼金を支払わずに入居していたとしても、それを根拠に、
礼金の返却を求めることはできません。

他の入居者との家賃の違い3

(質問)

同じ条件で入居していた人が、家主との交渉で、家賃の値下げをしてもらったという。
そこで、同じように、家主に交渉したところ、
「家賃の値下げをした人がいるからといって、事情も違うし、
同じように家賃の値下げに応じるつもりはない。」と一蹴されてしまった。

「では、その事情を教えてほしい」と言ったが、
それも、「個人のプライバシーに関わることなので話すことはできない」と言われた。
自分だけ、家賃の値下げをしてもらえないのは、不公平だと思うのだが、何とかならないか?

(回答)

借主には、家賃の値下げを要求する権利はあります。
しかし、どんな場合にも、家賃の値下げを要求できるわけではなく、
あくまで、不合理な家賃となった場合には、それを是正する権利があるに過ぎません。
家賃の値下げを勝ち取った人がいるからといって、
誰も彼もが同じように家賃の値下げをする権利があるわけではありません。
そして、家主が主張しているように、ほかの人の家賃を下げた理由について、
第三者(ご相談者)に説明しなければならない義務があるとはいえません。

家賃の値下げを要求したいのであれば、他の人の家賃値下げに関係なく、
ご相談者自身の部屋の家賃が不当に高くなっているということをきちんと説明し、
家主に家賃の値下げを受け入れてもらえるように交渉しなければなりません。

他の入居者との家賃の違い2

(質問)

入居中、同じ間取りなのに、他の人よりも家賃が高いことがわかった。
そこで、家主に、「同じ間取りで安い家賃の人もいるので、
それに合わせて値下げしてほしい」と言ったが拒否された。

(回答)

借地借家法第32条では、
「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、
当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」としています。
つまり、法律上、家主にも、借主にも、家賃を増減する権利が認められているわけです。

「同じ間取りで」ということは、
「近傍同種の建物の借賃」ということと同じようにみなすことができますので、
同じ間取りにもかかわらず、ご相談者の部屋の家賃があまりにも高すぎる
というような場合には、「家賃を下げてほしい」という要求をすることができます。

しかし、「たまたま同じ間取りなのに家賃が安い人がいる」のか、
それとも、ご相談者の部屋のみが高すぎるのかによっても、
家主の対応は異なってくるでしょう。

また、たとえ、同じ間取りであっても、所在階や窓向きなどによっても、
家賃が異なるケースはよくありますので、誰が考えても、
不合理なほどの家賃の開きがあるかどうかがポイントになるでしょう。
もし、誰が考えても、不当なほどの家賃の開きがあるのなら、
家主に率直に家賃の値下げをお願いしてみてはどうでしょうか

他の入居者との家賃の違い1

(質問)

住んでいる物件の他の部屋の入居者募集がが数千円安くなっていた。
そこで、管理会社に、家賃減額をお願いしたら、
「いやなら退去してもよい」と言われてしまった。
何とか、家賃減額を勝ち取る方法はないのでしょうか?

(回答)

借地借家法上、近傍同種の物件と比較して、家賃が不相当となった場合には、
家主・借主のどちら側にも、賃料の増減請求権が認められています。
したがって、法的には、家賃の値下げ交渉を行う権利がありますが、
だからといって、素直に家賃値下げに応じてくれるかどうかは別問題です。

管理会社が、「退去していい」と言っているとのことですが、
本気でそのように言うはずはありません。
退去者が出ても、「満室保証」などを行っていない、通常の管理委託契約であれば、
管理会社自体の収入はダウンしませんが、家主の収入は明らかにダウンします。

万一、家主の収入ダウンを促進するようなことを、管理会社が行えば、
家主に対する背信行為となります。
家賃値下げ交渉は、管理会社を相手にしても、あまり意味がありません。
家主に対して行ったほうがよいでしょう。
管理会社との交渉がうまくいかなくなったときには、
家主と直接交渉するほうがよいかもしれません。

家賃滞納2

(質問)

契約書には「家賃を3ヶ月分以上滞納すれば即刻退去させる」と書かれていたが、
うっかりして家賃を3か月分滞納してしまったところ、
家主から、「契約違反なので、違約金を支払って退去してもらう」という通告を受けてしまった。
契約書に明記されているのであれば、泣く泣く退去するしかないのでしょうか?

(回答)

前項で解説しているように、家賃の滞納による契約解除は、
契約書に記載されている通りに行うことはできず、家主と借主との間に、
「信頼関係がなくなってしまった」というような状況になって初めて、
契約解除が可能であると解釈されています。

その観点から相談内容を見ると、確かに、借主は3ヶ月間家賃を滞納していたわけですが、
「うっかりして」いたということが、ひとつのポイントになります。
つまり、借主が家賃を滞納している間、家主は、借主に対して、
一度も家賃の督促を行わなかったようなのです。

借主からすれば、わざと滞納を続けていたというよりも、うっかりミスにより、
家賃の滞納が続いてしまったということですが、こういうケースはけっこうあるものです。

例えば、学生などの場合、家賃の支払いが、契約者本人が支払うのではなく、
実家から振込をすることになっているようなケースがありますが、
実家からの振込がうっかりミスで滞納されていても、
本人はまったく気づかなかったというような場合です。

そうすると、形式的には、契約条項をそのまま適用すれば
退去させられることになってしまいますが、
借主と家主との間の「信頼関係が破壊されてしまった」というような事情は
認められませんので、家主側からの契約解除は不可能なのです

家賃の滞納1

(質問)

契約書には「家賃を1ヶ月でも滞納すれば即刻退去させる」と書いていたが、
うっかりして家賃を1か月分滞納してしまったところ、家主から、
「契約違反なので、違約金を支払って退去してもらう」という通告を受けてしまった。
契約書に明記されているのであれば、泣く泣く退去するしかないのか?

(回答)

日本には、「契約自由の原則」(私的自治の原則)というものがあります。
つまり、誰と契約しようがしまいが自由であり、契約内容も原則として自由、
契約の方式も自由であるというものです。

その前提には、独立・対等・平等な市民間においての契約については、
できるだけ当事者の自由に任せようという国の判断があります。

従って、原則としては、どのような契約も自由であり、契約する際に、
署名捺印しているということは、契約事項を承認しているということになりますから、
従わざるを得ないということになります。

ところが、居住用の建物の賃貸借契約においては、
家主が一方的に定めた契約事項を、借主が承諾するかどうかだけの
権利しかないため、もともと、対等・平等ではないのです。

そのような違いを放置して、当事者の自由に任せておくことは、
家主が好き放題の契約を定めることを容認することになり、
良好な社会秩序にも悪影響を及ぼすことになります。
そこで、いくつかの制限を設けて、好き勝手な契約ができないようにしているのです。

まず、第一は、借地借家法上の「強行規定」に違反していないことです。
契約内容が、借地借家法上の「強行規定」に反している規定は
無効であるとされていますので、それに違反していないかどうかが問題となりますが、
家賃の滞納については触れられていませんので、この点からは、契約は有効です。

二つ目に、契約内容が公序良俗に反していないかどうかです。
「公序良俗」の法律用語としての意味は、
「現代社会の一般的秩序を維持するために要請される倫理的規範」とされています。

殺人依頼の契約、愛人契約などの誰が考えても公序良俗に反している契約以外でも、
男女によって定年年齢が異なるようなケースでも、性別による不合理な差別として、
公序良俗違反とされた場合もあります。

そこで、「1ヶ月の滞納による契約解除」が、
社会の秩序を壊すほどの不合理な契約内容かどうかが問題となりますが、
人によって判断が分かれるでしょう。
逆に言えば、誰が考えても、「公序良俗違反である」とも言えないレベルですので、
「公序良俗違反により契約は無効」とは言えないでしょう。

三つ目は、法律用語で言うところの「例文解釈」による
契約内容の無効とはならないかという点です。

これは、少しややこしいのですが、不動産の賃貸借契約などで、
文言どおりに解釈することで、結果があまりにも不当なことになってしまう場合、
契約内容そのものを「単なる例文である」として、その効力を否定するものです。

しかし、これまでのところ、短期間の家賃の滞納による契約解除を、
「例文解釈」によって無効であると判断されたケースはないようです。

四つ目は、2001年4月に施行された消費者契約法による
「消費者の利益を一方的に害する規定は無効である」という規定に
違反していないかどうかという点です。

この点については、長期的な契約関係を前提とした建物の賃貸借契約において、
わずか1ヶ月分だけの滞納によって契約解除を行うことは、
「消費者の利益を一方的に害する」規定だという判断を行うことが可能かもしれません。

ただし、まだ、消費者契約法の規定を取り上げた判例がないため、
必ず、そのような解釈になるかどうかははっきりしていません。
そこで、最終的には、これまでの判例で蓄積されてきた考え方によって、
契約内容を判断することになるでしょう。
判例での考え方は、「信頼関係破壊の理論」と呼ばれているものです。

つまり、居住を目的とした長期間にわたる賃貸借契約においては、
単に契約違反にあたる事実があるだけでは契約を解除して退去させることができず、
「家主と借主との間の信頼関係がなくなってしまった」というような状況になって初めて、
家主からの契約解除を認めるようにして、借主の居住権を守ろうとしているのです。

従って、「家賃を1ヶ月でも滞納すれば即刻退去させる」という契約条項は、
「明らかに無効である」とまでは言えませんが、かといって、それだけで適用されるわけではなく、
借主に家賃の支払いの資力があるにもかかわらず家賃を滞納し、
家主が納めるように何度も督促したのに、数ヶ月以上も滞納を続け、
もはや、借主は、「家賃を支払うという約束を守るつもりがない」と
判断されるような状況になった場合に契約解除することができるとされているのです。

居住以外での使用1

(質問)

居住用で借りている物件だが、今度独立することになり、
自宅兼事務所として使用したいので管理会社に申し出たが、
「事務所として使用するなら退去してもらう」と言われてしまった。
何とか解決する方法はないか?

(回答)

入居目的が「居住専用」となっている場合に、物件内に、
どの程度まで仕事を持ち込むことができるかという問題です。
一般に、「居住専用」となっている物件を、
「事務所」などとして使用することはできません。

しかし、「事務所」と言ってもピンからキリまであり、
すべての「事務所」が認められないかといえば、そんなことはないはずです。

「事務所」に限らず、営業用途として問題になるのは、
不特定多数が出入りすることで、他の入居者が
安全快適に生活することに支障が出たり、
入居者が駐車駐輪場を使用することに困難になったり、
物件自体の傷み具合が激しくなることです。

逆に言えば、「事務所」と言っても、「自宅兼事務所」程度であれば、
不特定多数の人が出入りする頻度や数もそれほど多くないでしょうし、
他の入居者が駐車駐輪場の使用に差し障るような問題がなければ、
「家主との信頼関係が破壊された」とまではいえません。

最近のように、いわゆるSOHOとして、自営業の登録場所として、
便宜上、「事務所」と呼んでいるような場合の多くも、
不特定多数が出入りするわけでもなく、
他の入居者に迷惑をかけるようなこともないはずですから、
居住専用であったとしても許されると考えられるでしょう。

そこで、「事務所」としての実態について、管理会社および家主に説明し、
「万が一、事務所としての使用によって、
家主や他の入居者に迷惑をかけるようなことがあれば、
事務所としての使用を中止する」などという念書を提出するなどして、
理解を求めるようにしなければならないでしょう。

それでも、管理会社や家主の理解が得られず、
一方で、「事務所」としての使用を行う場合には、
管理会社や家主との一悶着を覚悟しなければならず、
強行すれば、裁判などに発展することになるかもしれません。

共益費

(質問)

先日、管理会社より、急に共益費が値上げになると連絡がありました。
更新の際に値上げされたという話は聞いたことありますが、
契約期間内でも値上げに応じないといけないのでしょうか?

(回答)

「共益費」というのは、物件の共有部分(廊下・階段・ロビー・管理人室その他)の
維持に必要となる費用(管理人費用・電気代・水道代・清掃費など)を、
あらかじめ、入居者数(および専有面積)で按分して、家主が一方的に定めた費用です。

借主は、家主が一方的に定めた費用の支払いについて、
契約書で合意して入居しているわけです。

したがって、契約期間中は、家主が一方的に定めた費用を支払う義務はありますが、
逆に言えば、期間の途中での値上げは拒否することができます。

契約期間中でも、共益費の値上げに応じなければならないのは、
例えば、家主が関知することができない、電気代や水道代などの公共料金が
大幅な値上げが行われたような場合で、その値上げ分のアップをお願いされたときでしょう。

家賃と共益費の違いは、家賃は、合理的な根拠があろうがなかろうが、
家主が一方的に定めることができるのに対して、
共益費は、「共有部分にかかる実費を入居者数(専有面積割合)などで按分した金額」ですので、
合理的な根拠が必要不可欠だという点です。

今回のケースで言えば、家主側に対して、「共益費の算定根拠を明らかにし、
値上げ額が合理的なものかどうか、そして、従来の共益費が
不合理なものであったかどうかをきちんと確認させてほしい。
支払いたくないのではなく、納得できる説明がほしいのである。」というように主張してください。

そして、家主側から、共益費値上げに応じざるを得ないような特殊な事情
(従来の共益費そのものが実費負担額よりも非常に低い不合理なものであり、
今回の値上げで合理的なものになるということと、それに対する家主側の謝罪、
つまり、間違った請求をしていたために、結果的に、
契約期間中の値上げとなってしまった点についてのもの)があれば、
共益費の「値上げ」にも応じざるを得ないでしょう。