外国人との敷金トラブルを防ぐには、まず「誤解を生まない契約設計」が重要です。
多くの外国人入居者は母国で“敷金=全額返還”が常識のため、日本特有の
「原状回復」「敷金償却」「クリーニング費用」などの慣習を理解できずに
トラブルとなります。防止策としては、契約書・重要事項説明書を多言語化し、
差引き項目・返還時期・清算手順を明記すること。入居時に写真・動画で現況を
記録し、退去時比較を可能にすること。退去立会いの際は、費用の内訳と根拠を
書面で示し、同意を得ること。さらに、外国人向け保証会社や通訳支援サービスを
活用することで、トラブルの未然防止と信頼構築が期待できます。透明で丁寧な説明
こそが、国際化する賃貸市場での健全な管理運営の基盤となります。
敷金の外国人問題
外国人入居者との敷金トラブルは、制度や文化の違いから生じることが
多くなっています。多くの国では敷金は全額返還が一般的であり、日本
独自の「原状回復」や「敷金償却」などの慣習が理解されにくい点が原
因です。契約書や重要事項説明が日本語のみの場合、内容を十分に把握
できず、退去時に「説明を受けていない」と主張されるケースもありま
す。さらに、清掃費や修繕費の差引き基準が不明確だと、不信感を招く
結果となります。対策としては、多言語対応資料や現状記録の共有、契
約前説明の可視化が重要です。国際化が進む中、透明で公平な契約運用
が、信頼される賃貸経営の鍵となっています。
契約書2
契約書の内容を見ていたら、「家主が物件を必要とする場合には、
即刻退去するものとする」となっていた。そういう契約内容は不当だと思うのだが、
削除を求めるべきか、それとも、法的に認められないと思うので
無視して契約したほうがよいのか?
(回答)
家主からの退去が認められるケースは、非常に限定されています。
家主が、単に、「物件を必要とする」だけで、退去が認められることはありませんので、
このような規定は、借地借家法の強行規定に違反するものであり、無効となります。
契約時に削除を求めてもよいですが、あまりに強く要求すると、
家主から契約そのものを拒否されてしまう可能性もあります。
そこで、あまり神経質にならずに、そのまま契約してもよいと思います。
そして、万が一、家主から退去を求められた場合に、
「契約内容の無効」を主張すればよいでしょう。
契約書1
契約書の内容を見ていたら、「家賃の支払いを1日でも遅延した場合には、
即刻退去するものとする」となっていた。そういう契約内容は不当だと思うのだが、
削除を求めるべきか、それとも、法的に認められないと思うので
無視して契約したほうがよいのか?
(回答)
このような規定は、単なる脅しに過ぎません。
法的にも認められていません。家主としては、家賃の滞納を恐れるあまり、
このような規定を設けているのでしょうが、認められません。
家主として契約を解除するには、借主との間で信頼関係が
なくなるような事態が前提となります。
家賃の滞納で言えば、判例では、6ヶ月程度以上の滞納があれば、
「信頼関係がなくなった」とみなされているようです。
契約書の 内容が異なる
仲介業者で受け取った契約書内容と管理会社から送られてきた契約書の
内容が異なるのだが、どちらが正しいのか?
(回答)
仲介業者が、本来、管理会社が指定する契約書を使用すべきところを、
自社で使用している契約書を間違って使用したことが原因だと思います。
そうだとすれば、正しい契約書は、管理会社が用意したものとなります。
そこで、万一、管理会社が用意した契約書の内容と
仲介業者で受け取った契約書の内容が大幅に異なり、
仲介業者で受け取った契約内容だったから契約したという場合には、
仲介業者に対して、損害賠償を行うことが可能となるでしょう。
家賃の滞納1
家賃を1ヶ月でも滞納すれば即刻退去 !?
契約書には「家賃を1ヶ月でも滞納すれば即刻退去させる」と書いていたが、うっかりして家賃を1か月分
滞納してしまったところ、家主から、「契約違反なので、違約金を支払って退去してもらう」という通告を
受けてしまった。契約書に明記されているのであれば、泣く泣く退去するしかないのか?
(回答)
日本には、「契約自由の原則」(私的自治の原則)というものがあります。つまり、誰と契約しようがしま
いが自由であり、契約内容も原則として自由、契約の方式も自由であるというものです。その前提には、
独立・対等・平等な市民間においての契約については、できるだけ当事者の自由に任せようという国の判断が
あります。
従って、原則としては、どのような契約も自由であり、契約する際に、署名捺印しているということは、契約
事項を承認しているということになりますから、従わざるを得ないということになります。
ところが、居住用の建物の賃貸借契約においては、家主が一方的に定めた契約事項を、借主が承諾するかどうか
だけの権利しかないため、もともと、対等・平等ではないのです。
そのような違いを放置して、当事者の自由に任せておくことは、家主が好き放題の契約を定めることを容認する
ことになり、良好な社会秩序にも悪影響を及ぼすことになります。そこで、いくつかの制限を設けて、好き勝手
な契約ができないようにしているのです。
まず、第一は、借地借家法上の「強行規定」に違反していないことです。
契約内容が、借地借家法上の「強行規定」に反している規定は無効であるとされていますので、それに違反して
いないかどうかが問題となりますが、家賃の滞納については触れられていませんので、この点からは、契約は有
効です。
二つ目に、契約内容が公序良俗に反していないかどうかです。
「公序良俗」の法律用語としての意味は、「現代社会の一般的秩序を維持するために要請される倫理的規範」と
されています。
殺人依頼の契約、愛人契約などの誰が考えても公序良俗に反している契約以外でも、男女によって定年年齢が異
なるようなケースでも、性別による不合理な差別として、公序良俗違反とされた場合もあります。
そこで、「1ヶ月の滞納による契約解除」が、社会の秩序を壊すほどの不合理な契約内容かどうかが問題となり
ますが、人によって判断が分かれるでしょう。
逆に言えば、誰が考えても、「公序良俗違反である」とも言えないレベルですので、「公序良俗違反により契約
は無効」とは言えないでしょう。
三つ目は、法律用語で言うところの「例文解釈」による契約内容の無効とはならないかという点です。
これは、少しややこしいのですが、不動産の賃貸借契約などで、文言どおりに解釈することで、結果があまりに
も不当なことになってしまう場合、契約内容そのものを「単なる例文である」として、その効力を否定するもの
です。
しかし、これまでのところ、短期間の家賃の滞納による契約解除を、
「例文解釈」によって無効であると判断されたケースはないようです。
四つ目は、2001年4月に施行された消費者契約法による「消費者の利益を一方的に害する規定は無効である」
という規定に違反していないかどうかという点です。
この点については、長期的な契約関係を前提とした建物の賃貸借契約において、わずか1ヶ月分だけの滞納によっ
て契約解除を行うことは、
「消費者の利益を一方的に害する」規定だという判断を行うことが可能かもしれません。
最終的には、これまでの判例で蓄積されてきた考え方によって、
契約内容を判断することになるでしょう。
判例での考え方は、「信頼関係破壊の理論」と呼ばれているものです。
つまり、居住を目的とした長期間にわたる賃貸借契約においては、
単に契約違反にあたる事実があるだけでは契約を解除して退去させることができず、「家主と借主との間の信頼
関係がなくなってしまった」というような状況になって初めて、家主からの契約解除を認めるようにして、借主
の居住権を守ろうとしているのです。
従って、「家賃を1ヶ月でも滞納すれば即刻退去させる」という契約条項は、「明らかに無効である」とまでは
言えませんが、かといって、それだけで適用されるわけではなく、借主に家賃の支払いの資力があるにもかかわ
らず家賃を滞納し、家主が納めるように何度も督促したのに、数ヶ月以上も滞納を続け、もはや、借主は、「家
賃を支払うという約束を守るつもりがない」と判断された場合、信頼関係破壊となり、契約解除の可能性があり
ます。
契約書5
契約書の内容を見ていたら、「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」となっていた。
そういう契約内容は不当だと思うのだが、削除を求めるべきか、
それとも、法的に認められないと思うので無視して契約したほうがよいのか?
(回答)
「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」という合理的な根拠はあるのでしょうか?
万が一、そういう根拠があれば、「不当な契約」とは言えません。
しかし、ふつうは、「更新ごとの自動値上げ」を行うような合理的な根拠はないと思います。
そういう場合には、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」
に該当しますので、契約内容そのものが無効となります。
できれば、最初から削除してもらうほうがよいと思いますが、あまり強い交渉を行うと、
契約そのものができなくなる(家主が契約を拒否する)可能性もあります。
入居を優先したいのであれば、あまりに強い要求は避けたほうがよいでしょうが、
その代わり、契約更新時には交渉を行う必要があります。
どちらがよいとは一概に言えませんが、最終的には、借主の判断次第となります。
契約書4
仲介業者で受け取った契約書内容と管理会社から送られてきた契約書の
内容が異なるのだが、どちらが正しいのか?
(回答)
仲介業者が、本来、管理会社が指定する契約書を使用すべきところを、
自社で使用している契約書を間違って使用したことが原因だと思います。
そうだとすれば、正しい契約書は、管理会社が用意したものとなります。
そこで、万一、管理会社が用意した契約書の内容と
仲介業者で受け取った契約書の内容が大幅に異なり、
仲介業者で受け取った契約内容だったから契約したという場合には、
仲介業者に対して、損害賠償を行うことが可能となるでしょう。
家賃の違い4
入居者の死亡1
先日借家で一人暮らしをしていた祖母が亡くなると大家さんの態度は急変し、
敷金の返還はもちろん拒否し、遺族が1~2年家賃を払い続けてほしい・・・と言うのだが、
そこまでしないといけないのか?
(回答)
借家人が死亡した場合、
一般の賃貸借契約(「高齢者の居住の安定確保に関する法律」による特別な契約は別)では、
遺族が、借家人の権利義務関係をそのまま引き継ぐのが原則です。
したがって、解約の手続きを行わなければ、いつまでも家賃を支払い続ける義務がある一方、
敷金の返還請求権があります。
住む必要がないと思いますので、相続権を持っている人全員の意思を代表して、
相続人の一人が家主と交渉し、契約解除の手続きを行ったほうがよいでしょう。
なお、当然ながら、無駄な家賃を支払い続ける義務はありません。
