「原状回復費用はすべて借主が負担する」という特約について

契約書を見ると「原状回復費用はすべて借主が負担する」という特約があります。これは従わなければならないのでしょうか?

本来、家主は、家賃という対価を得て物件を貸している以上、民法上、借主に対して、使用収益させる義務、つまり、借主が安全・快適な生活を送れるようにする努力義務があります。従って、通常は、修繕義務は家主が負うものとされています。

しかし、一般に、民法の規定と特約が反する場合、契約自由の原則(私的自治の原則)により、特約が有効となりますので、このような修繕費用の借主全面負担特約が有効かどうかという点が問題となります。

判例では、このような特約は、家主の修繕義務を免除する効果があるに過ぎず、それを越えて、借主に全面負担させるというような積極的な効果までは認められないとされています。このような特約が認められるためには、よほど特別な事情(ほとんどただ同然で長期間貸していたとか)が必要です。

従って、契約書にこのような特約があっても認められず、通常の借主の責任(故意・過失・善良なる管理者の注意義務違反)がなければ、特約に従う必要はありません。