造作買取請求権

エアコン取付時100Wを200Wに変更、取付時は説明もなく変更に貸主合意。
退去前になって100Wに戻すように言われた。

取付時は説明なく合意したのに退去前になっての消費者負担請求は
消費者の義務を加重し、その利益を一方的に害するものに当たらないのでしょうか?

賃借人がもっぱら自分の都合で自己使用の都合上、有益な改良として
物件自体の増加した限度でその改良に応じた有益費の支払いとして請求できないでしょうか?

(回答)

これは造作買取請求権についての問題です。
賃貸借契約書に造作買取請求権を行使しないとの特約の有無の確認が必要です。
設備増強で、かえって利便性を高めており、それをわざわざ元に戻すことの合理性はないとの考えもあります。

例としてですが、UR都市機構では入居者が電気容量を増設した場合、原状回復は免除しています。
電気容量の増設は、造作としての概念で、有益費には該当しません。

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一般的な説明ですが。

1.造作

まず、問題となるのは、借地借家法にいう造作の意味・範囲です。
造作とは、「貸主の同意を得て(賃借人が)建物に付加した畳、建具その他の造作」のことをいいますが、
講学的には建物に付加され、建物の使用に客観的便益を与えるものと解されています。
したがって、家具は建物に付加されているわけではありませんので、造作には含まれません。

具体的には、畳、建具(障子、ふすま、雨戸)のほか、作りつけの戸棚、
エアコンなどの電気設備、ガス設備、水道設備、物干し台、商店の陳列棚などがあります。
ただし、トイレを水洗式にした(あるいは和式を様式にした)場合などのように建物に付加したものが
建物の一部となってしまった場合には、造作には含まれず、有益費の問題となります。
2.家主の同意があること

造作は家主の同意を得て造作を取り付けたことが必要です。
3.賃貸借契約が期間の満了、また解約の申し入れによって終了したこと

借家人に家賃の不払いその他の契約違反があるために、賃貸借契約が解除された場合には、
造作買取請求権は認められません。
造作買取請求権はあくまで「善良な借家人の保護」を目的としているからです。

4.賃貸借契約書に造作買取請求権排除の特約がないこと

造作買取請求権に関する規定は任意規定(当事者間の契約の方が優先される)です。
したがって、特約で排除(家主が造作を買い取らなくてもよい)されている場合には、
造作買取請求権を行使することはできません。
なお、市販の賃貸借契約書などでは、「造作買取請求権は行使しない」という
特約が入っていることが多いようです。

★UR都市機構の例
入居者が電気容量を増設した場合、原状回復は免除しています。
http://www.ur-net.go.jp/kyojyusha/report/moyougae-koumoku.html